
R19作品ながら、韓国で観客動員100万人超のヒット。6月20日に日本公開を迎える『秘顔-ひがん-』に主演しているソン・スンホン。
「破格なストーリー展開だけでなく、ソンジンという人物が、これまで演じたことのなかった“欲望の塊”のようなキャラクターで、とても心が惹かれました」
出演作の中で、いちばんお腹がすく作品でした
指揮者のソンジン(ソン・スンホン)は、有名楽団の理事長の娘でチェリストのスヨン(チョ・ヨジョン)と婚約するも、“あなたと過ごせて幸せだった”という動画を残して彼女は失踪。代理チェリストのミジュ(パク・ジヒョン)と出会ったソンジンは、悲哀に満ちた魅力に惹かれ、溺れていく。
スンホンの美しい身体&日本映画ではなかなかお目にかかれない激しいラブシーンにドキドキが止まらない。
「あははは。キム・デウ監督からは指揮者の役だからそこまでの身体づくりはしなくていいと言われたんですが、役者として作品は一生残る。アスリート並みの身体づくりはできなくても、ダイエットくらいはしなきゃと思いました。
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約3週間、食事を減らし、ナッツとサラダを多めにとって、露出の多いシーンに挑みました。これまでの出演作の中で、いちばんお腹がすく作品でしたね(笑)」
演じたソンジンへの共感については、
「ソンジンには憐れみというか、ちょっと同情してしまう部分もあります。恵まれない環境をへて、自分にふさわしくない黄金の服を着ているような感じ。黄金だから華やかに見えるかもしれないけど、実は重たくて、大変すぎる。だからといって簡単に脱ぐことも、捨てることもできない。
もし、僕が実際にソンジンに出会ったとしたら、好きにはなれないだろうな(笑)。僕だったら、あれだけのストレスを感じながら、成功のためだけに婿入りするような選択はしないと思いますね」
そんな事情はありつつも、婚約者がいながら他の女性と一線を越えてしまうソンジンを、同じ男性としてどう思う?
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「ひと言で言うなら“そんなことはしちゃダメ!”です(笑)。これは、あくまでも映画ですので。ただ、現実世界において、そういう人はいなくもない。多分、人間だからこそ、そういうことが起きてしまうんだと思います。
本作の中で監督が表現したいと思っていたのが、人間は誰しもが仮面をかぶって生きているということ。表向きの自分と実際の自分には違いがあって、それを知っているのは自分だけ。人間の内面にある秘密や欲望、本能をこの3人を通して見せたかったとおっしゃっています。
最初は“ラブストーリーかな?”と思っていたら、途中からスリラーに変わり、エンディングでは予想外のどんでん返し。韓国公開時、意外性に満ちた衝撃的展開に、大変好評をいただきました」
少しずつ剥がされていく、それぞれの秘密の顔。一体、3人は何をひた隠しにしているのか?
『秋の童話』('00年)、『夏の香り』('03年)で第一次韓流ブームを牽引。浮き沈みの激しい韓国芸能界において、ずっと第一線を走り続けている。
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'95年に芸能界入りしてから、今年で30年。年齢とキャリアを重ねる中での変化について尋ねると、
「20代、30代など若いころも、今のようなマインドで演技に挑めていたらよかったなと、少し後悔する気持ちもあるんです」
と、意外な言葉。
演技の面白さに今、ハマっています
若かりし時代は正義感あふれるカッコいいキャラクターに憧れ、そういう役を選んでいたと振り返る。
「今は現実離れしていない、地に足のついたキャラクターに目が向きますね。30代くらいまでは、演技をそこまで面白いと感じていなかったかもしれません。仕事だから、という感覚のほうが強かった。
でも『情愛中毒』('14年)や本作、そして今、撮影している作品もそうなんですけど、少し心に余裕を持って演技ができるようになってきました。40代の今、本当に演じることが楽しい。演技の面白さに今、ハマっています」
大人のエロティシズム、そしてスンホンの演技のすごみをぜひ、劇場で─。
スンホンの幸せな時間
演じたソンジンほどの強い欲望ではなくても、今、やりたいなと思っていることは?
「うーん。僕はやりたいことはほとんどできているので。24時間、ファンに押し寄せられるような若いアイドルでもないですし(笑)、友達にも会いたいときに会えていますし」
では、何をしているときが幸せ?
「家でゲームをしたり、ビールを飲んだり、映画を見たり……。やっぱり、学生時代の友達に会う時間ですね! 彼らは、俳優としての僕と接するわけではないので本当にリラックスできるし、居心地がいい。昔ながらの友達に会うときがとても幸せです」
取材・文/池谷百合子