
醜い利口になるよりも綺麗なバカと呼ばれたい。
【写真】バカの尊さを熱く語る河崎実監督。66歳には見えません
元アイドルのひかる一平が43年ぶりに主演した映画『還暦高校生』(6月27日公開)。監督・脚本を手掛けた河崎実(66)は、『いかレスラー』『地球防衛未亡人』など数々の低予算コメディ映画を手掛けていることから“バカ映画の巨匠”と呼ばれている。
「自分から言い出したものではなく『いかレスラー』以降、周りが自然とそう呼んだ」と異名の経緯を説明する河崎監督だが、今では「バカ映画は俺の専売特許。俺こそがオンリー・ワン、バカ映画の巨匠です」と胸を張る。その矜持を聞いた。
バカ正直こそ尊い
「バカ映画の巨匠と呼ばれることは本望です。良識ある退屈な人たちは“おバカ映画”なんて揶揄して斜に構えて観るけれど、こっちは真剣にバカをやっている。“ボクおバカなことしちゃってるね、エヘヘ”なんて気持ちは毛頭ない。『天才バカボン』『空手バカ一代』のバカと同じ。誰が『天才おバカボン』と言いますか。『空手おバカ一代』はどうですか。違うでしょう?こっちのバカは真剣なバカであり、突き詰めた狂気。バカ正直こそ尊いのです」
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「バカ正直こそ尊い」とは『巨人の星』の名セリフの一つ。同じ原作者・梶原一騎が作詞した『空手バカ一代』の主題歌は河崎監督のアンセムでもある。
「醜い利口になるよりも綺麗なバカと呼ばれたい。こんなにカッコいい歌詞がありますか?大谷翔平もイチローも野球バカです。野球のことしか考えていない。だからこそあそこまで突き抜けた。俺自身もそのような信念で映画を作っています。決して“おバカ”ではない」
『還暦高校生』を含めて、2025年は3本の監督作品が公開。新作映画の撮影も始まっている。河崎監督作品には、石坂浩二、森次晃嗣、松島トモ子、ビートたけしらレジェンドから重鎮まで、まさかの人たちが嬉々として参加する。話題に事欠かない監督だ。
「ここまでコンスタントに映画を撮り続けられているのは奇跡に近い。それはすべて人と人との御縁のたまもの。『還暦高校生』も日本橋三越伊勢丹の福袋企画のお陰です。ひかるさん、直江喜一さん、森井信好さん、古谷敏さんにしても俺の愛と情熱が伝わったから出てくれた。昭和のスターたちにご自身の代表作を彷彿とさせるシーンや演技をしてもらって、過去の業績を再評価し、リスペクトし、思い切り遊んでもらう。映画が完成するのには、それなりのワケがあるのです」
目指すはカンヌ
“バカ映画の巨匠”も60代後半を迎えたが、モチベーションは常に上昇気流。
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「バッティングセンターに行ったらかなりいい球を打てたし、ド近眼なので逆に老眼にはならない。一日三食決まった時間に健康的な食事をとり、ジャンクフードは一切口にしない。年齢的には還暦をとっくに超えていますが、実は衰えていない。人間何事も気力です」
継続は力なり。映画バカ一代、河崎実はこれからもバカを更新していく構えだ。
「人生には“そんなバカな!?”という事が起こるもの。『ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発』ではヴェネツィア国際映画祭のレッドカーペットを歩いたし、去年はスペインのローカルな映画祭で長年のバカが評価されて栄誉賞をいただきました。これだからバカはやめられない。バカを更新して次はカンヌ国際映画祭のレッドカーペットを目指します」
(まいどなニュース特約・石井 隼人)
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