ネイティブアプリとLINEミニアプリの最新事情、人手も含めた選択と集中がカギ

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2025年06月20日 16:01  BCN+R

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ネイティブアプリとLINEミニアプリの最新事情を解説
【外食業界のリアル・21】外食業界では数年前にLINEミニアプリが登場し、飲食店のLINE導入が加速した。一方、チェーン店を中心にネイティブアプリの利用も根強くあり、両者がうまく共存しているのが実情だ。今回はネイティブアプリとLINEミニアプリの最新事情について語りたいと思う。

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●ネイティブアプリとLINEミニアプリの違い

 まずネイティブアプリとLINEミニアプリの違いについて簡単に紹介したいと思う。まずネイティブアプリはアプリならではの直感的な操作性に長けており、機能や他サービスとの連携など自由度が高いが、お客様にダウンロードしてもらう必要があるというのが最大のデメリットとなる。また、OSのバージョンアップに伴ってアプリ自体の改修が必要となることも少なくなく、運用負荷が低くない。

 一方、LINEミニアプリはLINE上で動作する疑似アプリということで、LINEを使っているユーザーはダウンロードをせずにすぐに利用できるのが特徴だ。ユーザーが使い慣れているLINE上で動き、LINE公式アカウントのお友達を増やすことに直結したアプローチが可能となるわけである。だが、インバウンド客の場合はLINEがインストールされていないことも多く、LINE単独では顧客情報が簡単な属性しか保有おらず、アンケートや別システムなどを活用して構築していかなくてはならない。

 店舗視点では配信に関するコストの考え方が大きく異なる。ネイティブアプリではアプリに対してのプッシュ通知や情報配信はシステムさえ構築できてしまえば、コストはリーズナブルなものとなるが、LINEミニアプリの場合はLINEの配信プランに依存してしまう。

 プランによって無料で送付できるメッセージ通数が異なり、そして一定条件を満たすことで利用できる飲食店向けに大量配信が可能となるプランもあるため、店舗単位で考えれば十分な量となる。だが大規模チェーン店の場合、店舗単位ではなくブランド単位でのアカウントで利用していることが多く、お友達数が数十万以上となってしまう。そのため配信回数は減らしてもすぐに無料枠を超えてしまうことになり、その配信コストは拡大し続ける形になってしまうのである。

●大規模チェーン店と中小チェーン・個店の違いとは

 LINEはライトな会員組織をリーズナブルに構築できるシステムとして、圧倒的なサービスであることは間違いない。中小企業が独自で会員システムを構築しようとするとそのコストは膨大となってしまい、採算が合わなくなってしまう。また日本で圧倒的な普及率を誇るLINE上で動くというアドバンテージは強く、LINEにあるスタンプカードやアンケート機能などをそのまま使えるというのは非常にリーズナブルである。

 だが大手チェーン店となると、事情が少し変わってくる。圧倒的な店舗数を誇るファーストフードでは、独自アプリを提供する傾向が強い。その理由はブランドの知名度が高く店舗数が膨大であり、同じ顧客が複数店舗を利用することが多く、店舗ではなくブランド単位での管理が前提となるためである。店舗単位でLINE公式アカウントを作成してしまうと同じユーザーが店舗ごとでお友達となってしまい、各アカウントで同じようなメッセージが配信されてしまうことで無駄なコストが発生してしまう恐れがある。

 またファーストフード同士の競争も激化しており、ブランドでの抱え込みが重要になっている。そのため、利用数/金額に応じた特典やランクアップなどのリワード機能を設けることで抱え込みやリピーター促進を促している。

 そのほか、一部のチェーン店では店舗での混雑抑制を目的として、事前注文を促すためにアプリを活用することも増えている。もちろんLINEミニアプリでは注文ステータスに応じたメッセージ配信を無料で使える機能もあるため、商業施設内の店舗で活用しているケースも多い。各社が自身のブランド力や店舗数およびコストを鑑みながら、うまく使い分けているわけである。

●外食業界で迫られる選択

 以前はコアなファンをネイティブアプリで抱え込み、ライト層をLINEミニアプリでフォローする、といったように両者を生かしながら併用することが多かった。だが、今後はどちらかに絞り込まれていくケースが増えていくと思われる。チャネルが多ければ多いほど、ユーザーが分散し、運用負荷は高まるし、配信コストも増加してしまう。深刻な人手不足の状況下では何に注力をするのかは人手も含めた選択と集中が求められている。

 中長期的に見ればユーザーが増えてもコストを抑えた配信を自由にできるネイティブアプリが増えていきそうではあるが、インストールしてもらって安定的に利用してもらえるような軌道に乗るまでは決して楽な道ではなく、脱LINEに踏み切れるブランドも限られているのは事実である。外食業界ではその選択が迫られ始めているのではないだろうか。(イデア・レコード・左川裕規)

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