
【写真】『イカゲーム』ヒョンジュ、シーズン3では青のゼッケンを身に着けているのが気になる
■役を引き受ける上で心配も
シーズン1から3年後。数多の犠牲者を出してきた“イカれたゲーム”に終止符を打つべく、再びゲームに戻ってきたギフンだったが、参加者に中止を説得できず、第1ゲーム「だるまさんがころんだ」、第2ゲーム「五人六脚 近代五種」、第3ゲーム「マッチゲーム」とゲームは進み、プレイヤーたちは一人また一人と悲惨な死を迎えていった。前回から大きく状況を変えることができずにいたギフンは、かりそめの仲間を集めて運営側への反乱を決意。ところが数々のアクシデントに見舞われ、計画は失敗。その上、目の前で大切な親友チョンべ(イ・ソファン)の命を奪われてしまった―。しかしギフンの意に反し、シーズン3でもゲームは続き…。
パク・ソンフン演じるヒョンジュは、性別適合手術の費用を工面するためゲームに参加。「女性として生きたい」と決意して以降、家族から縁を絶たれ、仕事も失い、借金まみれになった。心優しい人物な一方、元特殊部隊員という意外な経歴を持ち、ギフンとともに反乱に参加。銃撃戦の最中に弾薬を取りに向かったデホ(カン・ハヌル)を追って宿舎に戻るが、ピンクガードに追い詰められてしまう。
――まずはシーズン2を振り返らせてください。ヒョンジュ役のオファーが来た際はどんな心境でしたか?
パク・ソンフン(以下、ソンフン):実は最近悪役ばかりだったので、今回ヒョンジュのような心温かい素晴らしいキャラクターを演じられることが、すごくうれしかったです。ただ同時に僕はトランスジェンダー当事者ではないので、この役を引き受けることで、トランスジェンダーの皆さまに失礼がないか心配もしました。お話をいただいた時は、そういった感情が入り混じっていました。
――役作りはどうやって行ったのでしょう? 参考にした作品などはありますか?
ソンフン:役作りにおける勉強や研究は自分では行ったのですが、特定の人物や作品を参考にするようなことは基本的にありませんでした。
――ファン・ドンヒョク監督とも話し合って役を作っていったのでしょうか。
ソンフン:はい。監督とは毎回毎回いろいろなことを話しました。衣装スタッフさんとも「こういう衣装がいいのではないか」「こんなメイクがいいんじゃないか」という話もしました。個人的にはトランスジェンダーの方がいらっしゃるバーに行ったり、トランスジェンダーの方のYouTubeを見たり、実際にトランスジェンダーの方にお会いしてインタビューを行って、意見交換をしたりして役作りを行いました。
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ソンフン:撮影中のビハインドストーリーを1つ挙げるとすると、現場に行くたびに視線を感じるような気がしました。撮影現場のセットには500人くらい人がいるのですが、初めての撮影でメイクをしたヒョンジュの格好でセットに入った時に、そこにいる全員の視線が一気に自分に向いているような雰囲気を感じてビックリしました。
――シーズン3ではギフンとヒョンジュが言葉を交わさず、表情で見せ合うシーンが見受けられますが、イ・ジョンジェさんとも話し合いを?
■「ごはんの時間が楽しみ」ほっこり撮影裏
ソンフン:2人で話し合ったというよりかは、監督から事前にいただいたディレクション通りに撮影をしました。今回は他の映画やドラマと違って、シーズン2とシーズン3を連続して撮影したので、特段キャラクターの表現方法に変化をもたらす必要がなく、感情ラインを生かしたまま撮影を続けることができました。ブレずに撮影できたことが、こうした表現方法につながったんだと思います。
――ファン監督は、早撮りされるタイプですか? それとも一つひとつのシーンをじっくり作り上げていく方ですか?
ソンフン:2つあるとしたら後者で、ディテールを1個1個、時間をかけて撮影するタイプだったと思います。布に糸を1本1本丁寧に差していく刺しゅうのように、一つひとつの作業を細かく丁寧に仕上げていく方でした。例えば、キャラクターが怒るシーンや泣くシーンは、監督も一緒に怒るし泣いてくださるんです。俳優と感情を共有しながら撮影するような、本当に細かい作業をされる方です。
――韓国では撮影中にケータリングが出て、温かいごはんを食べられると聞きますが、『イカゲーム』の場合はどうなのでしょうか? 極限状態を作るために、キャストの皆さんはごはんを抜いたりするのでしょうか?
ソンフン:本当はこういった役柄なので自制しなければいけないのですが、韓国で避けられないのがパプチャ(ケータリングカー)で、今回は本当に最高のものを用意していただきました。クオリティーが本当に高くて、毎回毎回ごはんの時間が楽しみで、みんなで「今日なんだろうね」って期待をする雰囲気ができていました。実際に食事をする時間になったら、「これからケータリングが始まります」といったアナウンスが流れるのですが、その後はみんなが休憩時間の高校生みたいに、わーっと押し寄せていくんです(笑)。
――個人的にはヒョンジュとジュニとクムジャの絆が好きなのですが、演じたチョ・ユリさんとカン・エシムさんとの印象的な思い出はありますか?
ソンフン:3人でパプチャ(ケータリングカー)に行ったこともありますし、撮影が終わって外で軽くご飯を食べたり、一緒にお酒を飲んだこともあります。その時は撮影の思い出が次々と湧き上がってきました。やっぱり撮影を通して、自然と関係が深くなっていったんでしょうね。戦友と言いますか、仲が深まったのは自然な流れだったと思います。
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ソンフン:シーズン3は、命の貴重さや高貴さについて、もう一度考えられる作品に仕上がったと思います。世界中の視聴者の方々へ影響力があるKコンテンツの『イカゲーム』は、たくさんの方々の記憶に残る作品です。そして、僕がこの作品に参加できたということは、光栄の一言に尽きます。パク・ソンフンという俳優が『イカゲーム』に参加し、全世界にいる視聴者の方に届けられる作品の一員になれたのは、本当にありがたいことですし、素晴らしいことだと思っています。
――本当に楽しみです。最後にシーズン3のヒョンジュの見どころを改めて教えてください。
ソンフン:ヒョンジュを通して、世界中にいらっしゃるLGBTQ(性的少数者)の皆さまへの偏見をなくす手助けができるのではないかと思います。僕の表現が皆さまの手助けの一部になったらうれしいです。
(取材・文:阿部桜子)
Netflixシリーズ『イカゲーム』シーズン1〜2は独占配信中、シーズン3は6月27日世界独占配信。