推し活は、推す側がお金を払っているだけの一方的な関係ではなく、推される側も推す側にかけがえのないものを与えている。5月下旬にXに投稿された『推してる彼女』は、そんな推し活に関わる人たちの気持ちが描かれた作品だ。
男性アイドル・境望を推している引っ込み思案の女子学生・不破。望が配信中に、以前は引っ込み思案だったことを語っており、その言葉に共感して以降、望を推すようになった。そしてある日、望が所属するアイドルグループのライブに足を運び、さらにはチェキ会にも参加するのだが――。
誰かを推して、そして自分で自分を推したくさせる本作がどのようにして描かれたのか、作者のdamolさん(@damo22_7O)に話を聞いた。(望月悠木)
■制作しながら骨組みができあがった
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――「自分の“好き”を否定された女子学生が、推しから元気をもらう」という本作の骨組みは、どのように作り上げたのですか?
damol: まず「“推し”というテーマで作品を作ろう」と考えました。また、本作に登場するアイドル・望の人物像のテーマは“変身”です。「自分の目指す像に変身して生き生きとしているアイドルに勇気をもらう人も、また自分の目指す姿がある人なのではないか」と考え、“好きなものはあるけど臆病”というファン像ができあがりました。
――徐々に不破というキャラの輪郭を鮮明にしていったのですね。
damol: はい。そんな人物が勇気をもらうために必要になる“臆病になる理由”として、“自分の“好き”を否定された過去”という設定が生まれた次第です。
――また、「ただ主人公が前向きになる」だけではなく、推しが実は男装をしていて、しかもクラスメイトだったという展開が面白かったです。
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damol: “推し”をテーマとしたストーリーを制作するにあたり、推される側の人物像を考える中で、「推される側がワケありだとストーリーに癖が出て面白いな」と思いました。そこから「変装しているなら近くにいても気づかない」「アイドルがクラスメイトだったら驚くかも」と連想していきました。
――制作する中で思いついた設定だったのですね。
damol: それで「アイドルがクラスメイトだったら驚くかも」をオチにすると決め、「いかにしてオチを映えさせるか」という方向性でストーリー展開を決めました。そのためには、ファンである不破がアイドルである望に対して偶像性を見出せば見出すほど、うまく落ちると考えました。
――だからこそ「教室内で望がモブキャラとして登場していた」という“仕掛け”も爽快感がありました。
damol: とにかく背景に徹してもらうこと、だけど存在に気づけることの2点を意識して教室内の望を描きました。また、「できれば2周目に気づいてほしい」という気持ちもありました。
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■参加レポートを参考資料に
――不破と望の2人は、どのように作り上げていきましたか?
damol: まず望は、“女性でも男性でも違和感が生まれない髪の長さ”が最初に定まり、それに合わせて性格や顔の造形を考えました。一方、不破はとにかく「可愛いを頑張る」ということをテーマに、ビジュアルや性格などを決めました。
――ライブシーンなど、“生の望”のキラキラ感も印象的で、不破の高揚感が伝わってきました。
damol: アイドルを推す行為が“偶像崇拝”と比喩されるように、ファンにとってのアイドルは崇高で、綺麗で、素晴らしい存在なのだと思います。そういった要素を意識した作画や演出にしました。
――また、望をどれだけ“崇拝”しているのかがうかがえる不破の表情も、見どころだったように思います。不破の表情を描くうえで意識したことは?
damol: 資料として、アイドルグループのチェキ会やサイン会、握手会などの参加レポートをたくさん見ました。そこで「永遠にニヤニヤしてた」「記憶ない」「笑顔でやられた」といった記述が見られ、そういった強い感情が表情でわかるような作画を意識しています。
――最後に、今後はどのような作品を制作していく予定ですか?
damol: 自分の好きな世界や人、関係をさまざまな人に伝えられる作品を制作することを目標としています。また、本作に登場した望が所属するアイドルグループですが、「実はワケありアイドルが集まったグループで…」という作品を、いつか発表予定です。楽しみに待ってもらえればと思います。
(文・取材=望月悠木)
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