「朝なのに血糖値が高い」人は危険? 空腹時血糖値から分かる糖尿病リスクと対策法【医師が解説】

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2025年07月06日 20:50  All About

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【医師が解説】「朝食前なのに血糖値が高い」ことはありませんか? 血糖値の上昇には様々な要因が関係しており、見過ごすと、将来の糖尿病リスクにつながる可能性もあるのです。理由と対策法を、分かりやすく解説します。
「朝ごはんを食べる前なのに、なぜか血糖値が高い……」 しかも、HbA1c(ヘモグロビンA1c)は正常範囲。これはいったいどういうことなのでしょうか? 分かりやすく解説します。

空腹なのに血糖値が高い?HbA1cが正常でも見逃せないサインとは

一般に、血糖値の異常の最初の変化は、「食後血糖値の上昇」から始まると言われています。これは、食後のインスリン分泌のタイミングが遅れることで起こるものです。

それにもかかわらず、空腹時血糖値が高めでHbA1cが正常な場合、むしろ食後血糖値はそれほど高くないと推測されます。実は、このように「空腹時血糖値だけが高い」状態には、いくつかの背景があるのです。

特にHbA1cが高くないにもかかわらず空腹時血糖だけが高いケースでは、「一見健康に見えても、将来の糖尿病リスクが潜んでいる」可能性があります。

糖尿病患者とHbA1cが正常な人との違いとは?

糖尿病の方では、インスリンの分泌量や作用が低下しており、夜間のあいだに肝臓から放出される糖を抑えきれず、起床時に血糖値が高くなることがあります。

さらに、深夜から朝方に増える「成長ホルモン」や「コルチゾール」といった血糖を上げるホルモンの影響(いわゆる「暁現象」)や、まれにソモジー効果と呼ばれる夜間低血糖の反動が関係することもあります。

一方で、糖尿病ではない人やHbA1cが正常な人でも、空腹時血糖値が高くなるケースがあります。これは体質や生活習慣、あるいは一過性のホルモンの影響などが関与していると考えられます。

HbA1cが正常でも空腹時血糖が高い理由

HbA1cは過去1〜2か月間の平均的な血糖値を反映する指標です。

そのため、朝の空腹時血糖だけが高く、日中や食後の血糖値が正常であれば、HbA1cには現れにくいことがあります。

このような「空腹時だけの高血糖」には、いくつかの要因が考えられます。

・睡眠中のストレス反応(交感神経優位)→ 血糖を上げるホルモン(例:グルカゴン)が多く分泌されやすい
・深夜から朝方の血糖上昇ホルモンの影響(暁現象)→ 成長ホルモンやコルチゾールの分泌がピークになりやすい時間帯
・空腹時インスリン分泌の軽度な低下(体質によるもの)→ 食後は問題ないが、空腹時の血糖調整がやや苦手な体質

空腹時血糖が高い人が注意すべき将来のリスク

HbA1cが正常だからと言って、必ずしも安心とは言いきれません。

空腹時の高血糖が繰り返し見られる人の中には、将来的に耐糖能異常(糖尿病予備群)から2型糖尿病へ進行するリスクが高い方もいます。

特に、次のような方は注意が必要です。

・朝の血糖値が何度も高く記録されている
・家族に糖尿病の方がいる(遺伝的リスク)
・BMIや腹囲が基準値を超えている(内臓脂肪型肥満)
・運動不足や睡眠の質が低下している(生活習慣要因)

こうした条件が複数あてはまる場合は、糖代謝に乱れが生じはじめている可能性があるため、早めの対策が大切です。

空腹時血糖が高いときの対策と生活習慣の見直し

まずは、ご自身の血糖変動の傾向を把握することが第一歩です。就寝前・深夜(3時ごろ)・起床時の血糖値を数日間記録することで、「暁現象の影響か」「一時的な変動か」など、ある程度の見当がつきやすくなります。

そのうえで、以下のような生活習慣の見直しを行うと効果的です。

・夜遅い食事や飲酒を控える
・睡眠の質を整える(就寝前のスマホ・カフェインを避けるなど)
・起床後に軽い運動を取り入れる(ストレッチや短い散歩など)

どれもすぐに実践できる内容ばかりですが、継続することがポイントです。生活リズムを少し整えるだけでも、血糖コントロールによい影響が期待できます。

まとめ:HbA1cが正常でも油断しないで

「空腹時血糖が高いけれど、HbA1cは正常」──それは、体からの小さなアラートかもしれません。

このサインを見逃して放っておくと、やがてHbA1cにも反映され、糖尿病へと進行してしまう可能性もあります。気になる方は、ぜひ一度、医療機関で検査を受け、専門医のアドバイスを聞いてみてください。

早めの気付きと対策が、将来の健康を守る第一歩になります。

荒牧 昌信プロフィール

日本内科学会総合内科専門医。「やさしい言葉とわかりやすい説明」をモットーに、クリニック院長として外来診療に従事。糖尿病・生活習慣病に関するセミナー・講演会も多数。ひとりでも多くの人が健康的な生活を送れるよう、役立つ医療情報を発信中。
(文:荒牧 昌信(医師))

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