面接で優秀人材を見抜く方法について、人事コンサルタントとして活躍している株式会社人材研究所の曽和利光社長に聞いた。
――面接で「この人は優秀だ」と見抜くのは難しいと感じる面接官も多いかと思います。候補者の見極めで特に気をつけている点を教えてください
まず大前提として、面接官は候補者の話を「話半分」で聞くべきだと思っています。というのも、人は完全なうそはつかなくても、成果を“盛る”ことは珍しくありません。例えば、「売り上げを1.5倍にした」と言っても、それが本当に本人の実績かどうかは分からない。本当は周囲の成果であることを“自分がやった”と言う、いわば「オレオレ詐欺」的な話は面接では日常茶飯事です。
だからこそ、面接で見抜くには「成果に至った過程をどれだけ具体的に話せるか?」が最大のカギになります。
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――「具体的に話す」とはどういったことでしょうか?
例えば、「お客さまのニーズに寄り添いました」と言われても、それは抽象的すぎて実態が見えません。そこで、「寄り添うとは具体的に何をしたのか?」「その時どんな困難があったのか? そしてそれをどう乗り越えたのか?」といった形で徹底的に具体化していくことが重要です。
私はよく、「都心のカフェで働いていました」ではなく「渋谷・道玄坂の300席あるスターバックスで働いていました」くらいのレベルまで固有名詞を引き出すようにしています。これによって、候補者がどこまでリアルな経験を持っているのかを見極められます。
――優秀な候補者を見抜くための面接手法として、有効なものはありますか?
私が推奨しているのは、いわゆる「STAR面接法(Situation/Task/Action/Result)」に、あえて「思考(Thinking)」と「苦労(Trouble)」という視点を加えたフレームです。つまり
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環境(Situation):どんな場面だったのか?
課題(Task):どんな問題があったのか?
思考(Thinking):どんな考えを持ったのか?
行動(Action):どう動いたのか?
苦労(Trouble):どんな困難があり、どう乗り越えたか?
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結果(Result):その結果どうなったのか?
多くの候補者は「課題→行動→結果」の3点だけを話しますが、これは表層的な話にすぎません。思考や苦労まで語れるかどうかで、どれだけ本当に主体的に取り組んだのかが見えてきます。
――逆に、面接で避けた方が良い質問や注意点はありますか?
まず「短期の成功体験」や「自己完結型の努力」は見極めが難しい。人は短期間なら力を振り絞れるものですが、それが再現性のある力かどうかは分かりません。ですので、長期的な取り組みやチームでの行動をベースに質問するようにしています。
また、「好きなこと」だけを語らせるのも要注意です。優秀な人は、好きじゃないことにも意味づけをして前向きに取り組める力を持っています。そこで、「義務だったが頑張れたこと」「嫌だったけどやりきったこと」などを必ず聞くようにしています。
――最後に、面接官自身がスキルを高めるために意識すべきことはありますか?
面接は知識ではなくスキルです。ですから、「具体的に聞くとは何か」を理解しただけでは不十分で、繰り返し実践し、他の面接官と意見をすり合わせながら自分のバイアスや傾向を自覚していくことが不可欠です。
さらに、人を評価するための語彙(ごい)力を増やすことも大切です。例えば、「コミュニケーション能力」という言葉ひとつ取っても、論理的思考、共感力、表現力、人懐っこさなどさまざまな側面があります。評価の精度を高めるためにも、人を見る言葉の“解像度”を上げていく努力が求められます。
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