
【写真】シャネルのカスタムドレスをまとった岡本多緒の美しい姿
本作は、『ドライブ・マイ・カー』でアカデミー賞国際長編映画賞およびカンヌ国際映画祭脚本賞、『悪は存在しない』でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞、『偶然と想像』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞するなど、世界的に高い評価を受ける映画監督・濱口竜介監督の最新作。
原作はがんの転移を経験しながら生き抜く哲学者と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者が交わした20通の往復書簡『急に具合が悪くなる』(宮野真生子・磯野真穂著/晶文社)。
パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長であるマリー=ルー・フォンテーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)は入居者を人間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされている。そんな中、マリー=ルーは森崎真理(岡本多緒)という日本人の演出家に出会う。
がん闘病中の真理が演出するのは、自閉スペクトラム症の孫・窪寺智樹(黒崎煌代)と行動を共にする俳優・清宮吾朗(長塚京三)の一人芝居。真理の描く演劇に勇気をもらったマリー=ルー。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、二人の交流が始まる。しかし、あるとき真理は「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、二人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる…。
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前日に公式上映されたアスガー・ファルハディ監督作『PARALLEL TALES(英題)』でもレッドカーペットを歩き、多くの観衆の注目を浴びたエフィラは、この日は打って変わってサン・ローランの黒のパンツスーツとカルティエのジュエリーをまとったシックな姿で、熱烈な呼び声に応えながらフランスのスターの貫録を見せつけた。
この日のために、シャネルのアーティスティック・ディレクター、マチュー・ブレイジーが特別に製作したドレスに身を包んだ岡本多緒は、長い手足が際立つ美しさを放ち、注目を浴びる。さらにタキシード姿の長塚京三がやさしく微笑みながら手を振り、黒崎煌代は昨年の『見はらし世代』に続き2年連続の参加となるカンヌの舞台、そして初となるカンヌのメイン会場であるリュミエールのレッドカーペットに、満面の笑みで参戦。クリシェ、ビュネルも笑顔でレッドカーペットを進んでいく。
濱口監督も3作目の登場ながら、緊張した面持ちで、これまでにない大勢のキャスト達とレッドカーペットを闊歩。会場に詰めかけたマスコミからも、世界三大映画祭を席捲する濱口監督とその出演者の登場に歓声が上がった。
そしてワールドプレミア会場に入ると、満席の客席から大きな拍手が巻き起こり、「ブラボー!」「ハマグチ!」の声援が。3作品目のコンペティション部門出品となった本作への注目度の高さがうかがえる熱気あふれる雰囲気の中、上映がスタートした。
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この熱い歓迎に、濱口監督は「素晴らしいキャストとクルーのおかげで完成しました。そして、この映画には原作があります。磯野真穂さん、そして、宮野真生子さんに感謝を申し上げたい」とコメント。公式上映にも同席した原作者のひとりである磯野氏は、真っ赤な瞳で会場へ手を振った。エフィラ、多緒も涙をぬぐい、互いに熱いハグを交わしながら観客の声援に応える。感動的なワールドプレミアとなった。
上映後に行われた囲み取材で、ワールドプレミアの感想を求められると、濱口監督は「ようやく観客に届けることができた」と感無量の様子。エフィラは「人と人とが繋がることの大切を伝えてくれる作品」と丁寧に言葉を紡ぎ、多緒は「画面の向こう側で見ていたカンヌに自分がいるなんて、現実味がまだありません」と興奮をあらわに。
長塚は「観れば観るほどに感動が深くなる作品」と鑑賞後の余韻を噛み締め、黒崎は「新しい気持ちで映画を観ることができた」と振り返り、それぞれ、この映画が世界で初めて上映された感激をにじませた。
授賞式はフランス現地時間5月23日(時間未発表)に行われる。
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※監督&キャストの公式上映直後のコメント全文は以下の通り。
<コメント全文>
■濱口竜介(監督)
ようやく観客に届けることができました。カンヌだと、こういう反応になるのか、と感慨深いものがありました。たくさん笑いが起きて、こんな映画だったんだ、と再認識しました。最後には、非常に温かい拍手をいただけて良かったです。
自分がこの映画の素晴らしい原作「急に具合が悪くなる」を読んで心震えたこと、自分に起きたことが、映画をみた観客にも起きてほしいと思っていました。それを身体化して表現してくれた俳優の皆さんの力が大きいと感じています。
■ヴィルジニー・エフィラ(マリー=ルー・フォンテーヌ役)
この映画は、人と人とが繋がることの大切を伝えてくれる作品だと思っています。リュミエールで鑑賞して、作品と観客が繋がっていることを体感しました。本当に素晴らしい上映でした。
この原作がどのように映画になるのか分かりませんでした。濱口監督がくださった言葉が2,3あるんです。「脚本を使って演じるのではなく、テキストのなかに入り込んでほしい」と言われました。はじめは「どういうことだろう」と思ったけれど最終的には分かったような気がします。
■岡本多緒(森崎真理役)
観ていて、気付いたら口角が上がっていました。あたたかい拍手を長い時間いただいたことにも感動しました。今まで画面の向こう側で見ていたカンヌに自分がいるなんて、現実味がまだありませんが、気持ちはとても興奮しています。
私自身としては、脚本が素晴らしかったので、原作の魂が滲み出る様に表現できたらいいなと臨んでいました。
■長塚京三(清宮吾郎役)
観れば観るほどに感動が深くなる作品です。皆さん素晴らしい。これは2回以上観てほしいですね。一言一句、忠実にやっていった結果、哲学的な、そして非常にユニークな話になったと思います。
■黒崎煌代(窪寺智樹役)
あっという間の3時間16分でした。フランスだからなのか、国が違うと笑うところが違うのも面白かったです。僕たちも気付かされました。今日は新しい気持ちで映画を観ることができて感動しました。
智樹役は元気はつらつに演じました。智樹は、内部と外部を行き来する、どこにも属さない唯一のキャラクターだったので、ひたすら自分の感じるままに演技していました。

