日本式算数アプリを海外展開 米国やインドネシアで実績 スタートアップのマスマジ

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2026年05月21日 17:10  OVO [オーヴォ]

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インドネシア・ジャカルタの私立小学校で開かれたマスマジの宣伝イベント=2026年3月11日、マスマジ提供

 小学生が学ぶ“算数”を「数学」に名称変更する案が文科省審議会で議論されている。報道では、教科名を中高と同じ数学に統一することで学習内容に一貫性・連続性をもたせたいという。日本の小学生の数学的な学力は、国際学力調査(PISA、TIMSS)で上位にあり“日本式算数”の国際的評価は高い。

 その日本式算数の特長を取り入れた海外の小学生向け算数学習アプリ「Mathmaji(マスマジ)」を開発したのが2021年創業のスタートアップ企業マスマジ(東京都渋谷区)。代表取締役の廣瀬康令さん(61)は「日本の算数は子どもたちが段階を一つ一つ踏んで学べるよう配慮されている。この“日本式”を世界に広げ、世界中の子どもたちの基礎学力を伸ばすことに貢献していきたい」と話す。


 この学習アプリは現在、米国などで販売。米国のダウンロード数は7万2000件を超えたという。また米テキサス州が低所得世帯らを対象に無償提供する教育プログラムの一つにも選ばれ、提供が始まる今夏以降のアプリ利用者拡大を見込んでいる。

 米国の事業展開について広瀬さんは「テキサス州のプログラムは教育格差是正を目的にした事業です。アメリカでは経済格差と教育格差が拡大しています。マスマジは貧困家庭の子どもたちの基礎学力向上に役立つと考えています。一方、米国では今、学校に行かずに原則家で学習する“ホームスクール”の子どもたちが増加傾向にあります。ホームスクールには、一部教科は学校で学ぶが、特定の教科は家庭や少人数の任意の学習拠点で学ぶなどさまざまな形態があります。学校内で起きる銃撃事件なども影響して、地域の学校教育に納得しない保護者がホームスクールを選択する例は今後も増えると思いますので、各地のホームスクール協会と協力してマスマジの活用を呼び掛けています」と語る。

 マスマジは、細かく分けた各学習事項の一単元を5分で学ぶ構成。図表やアニメを用いた解説や計算力を高めるゲームなど、子どもたちが練習問題を繰り返し解いても飽きない構成になっているという。

 マスマジの学習構成を監修した米ウィリアム・ジュエル大学准教授で数学博士のマユミ・ダレンティンガーさんは「アメリカの教科書は必要のない公式や説明なしの解き方を暗記させてしまい、本来の算数の学習から遠のいている。大切なのは、いくつかの基本となる考え方をしっかりと身に付け、それを元に積み上げていくこと。マスマジは短い5分の集中レッスンを通じて、数学的に解くことを教えている」とコメントする。

 米国以外ではインドネシアでの事業展開に25年11月から力を入れている。廣瀬さんがインドネシアに着目するのは2億人を超える人口と経済成長に伴う中間層の増大だ。「中間層が育ち、子どもの教育にお金をかけられる世帯が増えている。インドネシアのプラボウォ大統領は、児童・生徒の理数系教育と英語教育に力を入れており、当社の英語の算数学習アプリ・マスマジは算数と英語を同時に学べるので、インドネシアでの普及が期待できる」と廣瀬さんはいう。すでにインドネシアの私立学校2校が学校単位でマスマジを授業で活用することが決まったという。

 廣瀬さんは「今後は米国だけでなく、インドネシアにもオフィス拠点を求めたい。マスマジの言語は英語だけだが、インドネシア側からマスマジのインドネシア語版を作りたいとの要望もあるので、今後マスマジの多言語化を検討していきたい」と語る。

 マスマジを日本の子どもたちが利用する場合は月額650円。英語での提供だが、日本のインターナショナルスクールの一部などですでに利用されているという。

 廣瀬さんは「英語が得意でない算数好きの日本人の子どもが、算数を通じて英語を学ぶために利用していると聞いています。日本の子どもたちが、マスマジで主に算数に関する英語を学ぶことも可能だと思います」と述べる。


 廣瀬さんはもともと外資系の大手金融機関に長年勤めたバンカー。畑違いの教育分野に進んだきっかけは、バンカー時代に鉱山事業の融資案件で訪れたインドネシアの貧しい村で見た光景だという。

 「小屋にパラボナアンテナを立て、裸足、裸の子どもたちがCNNなどの海外放送をスマホで見ていた。デジタル化の波は貧困地域にも押し寄せていることを知りました。デジタル技術をうまく活用すれば、貧困の悪循環から抜け出す際に大きな力となる教育を受ける機会を、貧困地域の子どもたちにも届けられるのではないかと考えました」

 ただ、いきなりデジタルのアプリ学習事業に着手したわけではなく、廣瀬さんが最初に立ち上げたのは、日本式算数に準拠した紙の教科書を制作し米国の自治体に販売する会社。廣瀬さんは「米国で成功したものは必ず、世界に広がっていくと考えたからです。またコロナウイルス流行前の当時は、オンライン教育はそれほど浸透していませんでした。ゼロからのスタートでしたが、サンフランシスコやシカゴで当社の紙の算数教科書を使ってもらい、サンフランシスコで地区内最低と評価されていた学力の学校を2年間でトップクラスに引き上げることに成功しました」と述べる。

 「日本式算数の紙の教科書事業で教育当局、教師、保護者の熱意と優れた教育教材があれば、子どもたちの学力は必ず向上する」と話す廣瀬さん。デジタル教材のマスマジでも同様の結果が得られると確信している。   

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ひろせ・やすのり 1965年、東京生まれ。シティバンクやフィデリティ投信、東京スター銀行、ドイチェ・アセット・マネジメントなどを経て、2017年米国で日本式算数の教科書会社を設立。海外の小学生向け算数学習アプリ販売のマスマジを21年創業。

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