東京に次ぐ日本第二の大都市・大阪。旅行や仕事でこの地を訪れた日本人は多く、また大阪に足を踏み入れたことがなくても、大阪がどのような都市かは大体の日本人がイメージできるだろう。それほど有名な大阪だが、実はその裏側を知る一般人は少ない。
今回紹介する『大阪 裏の歩き方』(彩図社)は、大阪の知られざるディープな素顔に迫る1冊だ。著者は、25年以上にもわたって大阪を取材してきたベテラン記者・花田庚彦氏。週刊誌の大阪駐在記者としての活動経験もある彼は、生活者として街を歩き、培ったネットワークを駆使して大阪のさまざまな顔を見てきた。
そんな花田氏が、ガイドブックやインターネットには掲載されていない大阪の薬物事情や裏社会情報、ディープな飲食店案内などを紹介していく。具体的にどのような情報が紹介されているのか、その一部を紹介しよう。
例えば花田氏は、大阪の裏社会に君臨する三大勢力について書いている。三大勢力とは、暴力団・半グレ・環状族のことだ。
まずは暴力団。かつて、大阪の裏社会には大小さまざまな暴力団がいて縄張り争いを繰り広げていたが、今は六代目山口組一色だという。ガールズバーの経営やキャッチ、特殊詐欺などをシノギとする半グレも大阪に勢力を築いていたが、現在は警視庁の取り締まり強化が原因でほぼ壊滅したとのこと。完全にいなくなったわけではないが、完全に地下に潜っているようだ。
少し特殊なのが「環状族」のNO GOOD RACING(以下ノーグッド)だろう。環状族とは、1980年代半ばから90年代に阪神高速を駆け回った暴走族のこと。チームの多くは解散したが、ノーグッドは現在も活動しているそうだ。花田氏はノーグッドについて、以下のように説明している。
「ノーグッドは反社でも半グレでもない。そうした組織と一定の距離を保ちつつ、勢力を維持している。そのうえで、車に関する仕事やイベント企画、ボランティア活動などもする、会社組織となっているのだ」(同書より)
ノーグッドは裏社会のあらゆる組織から一目置かれており、ノーグッドから暴力団員や半グレになる人間も多いそうだ。ノーグッドが、裏社会と表社会の間でうまく立ち回っていることがわかる。
以上が大阪裏社会の三大勢力だが、一般人が大阪で彼らアウトローに遭遇する機会は、近年めっきり減ったという。
「少し前は、街頭に立つキャッチが半グレだったりしたものだが、暴力団排除条例が相次いで改正され、暴力団のみならず、半グレも居場所がなくなった。ルールを守って遊んでいれば、怖い目に遭うことはないだろう」(同書より)
次に紹介するのは、かつて不名誉な形で有名になった「泉の広場」の現在について。泉の広場は、梅田地下街ホワイティの外れにある場所。以前は噴水と、それを囲うように座れるスペースがあり、待ち合わせスポットとして重宝されていた。友だちグループやカップルの待ち合わせスポットだというなら何の問題もなかったが、同書には以下のように記されている。
「この泉の広場は、大阪では売春の温床としても知られていた。2019年から2020年にかけて立ちんぼの女性61人が検挙されたことで、全国的にも知られるようになる。
現在は、立ちんぼを寄せつけないためかわからないが、噴水は撤去されている」(同書より)
噴水が撤去された現在、泉の広場はどうなっているのだろうか。
花田氏が事情通に聞いたところ、立ちんぼは「まだいる」らしい。実際に花田氏がリニューアルされた泉の広場に向かってみると、そこにいるほとんどの人は普通の待ち合わせだったが、なかには明らかに立ちんぼだと思しき女性も数人いたそうだ。大勢が検挙されても、噴水が撤去されても、一度根付いた慣習はそう簡単には消えないらしい。
同書には他にも「西成で覚醒剤を売る外国人たち」「大阪人オススメの美味すぎるコナモン」「女医はなぜ西成で不審な死を遂げたのか?」など、気になるディープな情報が掲載されている。
「大阪アンダーグラウンド」「大阪 夜の歩き方」「大阪飲み食いディープスポット」「大阪ダークサイドスポット」という4つの章に分かれているため、自分が気になるところから読み進めるといいだろう。
「大阪本来の、良くも悪くも人を惹きつける魅力は、裏側にこそ宿っている」(同書より)
普通の大阪観光では物足りないと感じた人は、同書を読んで大阪の裏側を知り、他とは少し違う視点を持って大阪の街を歩いてみてはいかがだろうか。
『大阪 裏の歩き方』
著者:花田 庚彦
出版社:彩図社
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