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「いわゆる2馬力選挙は本来、公職選挙法の趣旨として想定していない。多くの有権者にとっても違和感のあることだと思う」
2月12日、記者団の取材に対してこう述べたのは、3月13日投開票の千葉県知事選に出馬する現職の熊谷俊人氏(46)だ。知事選には、政治団体「NHKから国民を守る党」の代表・立花孝志氏(57)も出馬を表明しているが、当選を目的とせず他の候補者を応援する「2馬力選挙」で熊谷氏をプッシュする意向を示している。
きっかけは、熊谷氏が昨年12月の会見で、選挙におけるSNS発信について、「表現をできる限り規制するべきではない」としつつ、第三者の虚偽発信には一定程度規制を設けるべきと主張したことだ。これについて、立花氏は2月7日の会見で賛意を示し、2馬力選挙で“熊谷知事を応援する”と表明した。
ただ、当の熊谷氏はというと、冒頭の発言に加えて、立花氏の名前は出さなかったものの、応援について、「迷惑で、困惑している」と明言し、真っ向から“拒否”した。こうした姿勢を受け、14日の会見で立花氏は、「何よりも明確に熊谷知事が『迷惑だ』と言っていることに逆らってやることは、よろしくない」と語り、「2馬力選挙」の撤回を宣言した。
熊谷氏が毅然とした態度を取るいっぽう、2馬力選挙について“沈黙”を貫いたのが、兵庫県知事の斎藤元彦氏(47)だ。
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斎藤氏は、県政をめぐる内部告発文書問題に端を発する県議会の不信任決議案の可決を受け、昨年9月30日付で失職。同年11月の出直し選挙では、立花氏が斎藤氏の応援を目的に出馬し、選挙期間中は斎藤氏の遊説ルートに合わせて“援護射撃”を続けた。
さらに、立花氏はSNSやYouTubeも駆使し、発端となった内部告発は不当だとする主張を繰り返した。序盤は劣勢と見られていた斎藤氏だが、SNSを中心に支持を拡大し、最終的に約111万票を獲得し、当初は後塵を拝していた稲村和美氏(52)に約13万票の大差をつけて再選。
大逆転劇を演じた斎藤知事だが、当選から一夜明けた11月18日に出演したテレビ番組で、アナウンサーから立花氏との“提携”を問われた斎藤氏は、こう語っていた。
「全くないですね。立花さん自体も全く存じ上げてなくて、討論会で一度ご挨拶をさせていただいただけでした。自分は自分のまさにやるべき街頭活動とか、駅立ちをさせていただいたというだけです」
さらに、SNSで立花氏や彼の支持者が斎藤氏を応援する内容を投稿していたことについても、「正直、私は自分の選挙で毎日必死でしたので、そういった投稿を見る余裕はなかったですね」と主張。2馬力選挙の是非について言及することもなかったのだ。
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「いわゆる『2馬力選挙』を規制する法律は整っておらず、兵庫県選挙管理委員会は今年1月に『適正な選挙を行うという公職選挙法の趣旨を損ないかねない事案が発生した』と知事選について述べ、総務省に公選法の見直しを求めると発表しています。
石破茂首相も2月4日の衆院予算委員会で2馬力選挙を『どう考えても、おかしい』と指摘しており、有権者が納得できる選挙運動の在り方を確立することは“喫緊の課題”という見解を述べていました」(社会部記者)
そんななか、2月5日の定例会見で、2馬力選挙の“当事者”であると指摘を受けた斉藤氏は、「自分が当事者である選挙戦を精一杯自分として、斎藤元彦としてやらせていただいた」と返答。“立花氏が百条委員会の県議に誹謗中傷のような情報発信を行っていた”という事案に関する見解を問われると、「私は立花さんを直接知る立場でもないですし、個人の行動をコメントする立場ではない」と述べるなど、従来の主張に終始した。
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