
6月12日にみずほペイペイドームで行われた、福岡ソフトバンクホークと読売ジャイアンツのセ・パ交流戦。試合は延長12回で0-0のスコアレスドロー、巨人にとって勝ちに等しい引き分けだったが、“両者”の明暗はくっきりと分かれてーー。
5月12日に成立した、巨人の秋広優人選手(22)と大江竜聖投手(26)、ソフトバンクの砂川リチャード選手(25、登録名はリチャード)との2対1の電撃トレード。
松井秀喜さん(51)の背番号「55」を継承した期待の生え抜きと、2024年シーズンまでに約150試合を登板した中継ぎ左腕。そしてウェスタンリーグ5年連続の本塁打王に輝いた“ロマン砲”のトレードに、両軍ファンのみならず、多くのプロ野球ファンが驚いたものだ。
ところがトレードから1か月、SNS上で早くも聞こえてくるのは、
《こうなることは分かってた。マジであのトレードは失敗すぎる。 秋広出すとか意味わかんねえもん。普通に考えて》
《100%失敗トレードだったわ。くだらん目先のホームランだけに注目したばっかりに、将来のレギュラーを流出させたのだから、見る目なさすぎ》
《リチャード選手も悪いが 慎之介監督は、さらに悪い 落とす口実のように思える トレードの失敗 さらに打てないのに、落とせない 自分の采配ミスを隠蔽してる》
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「トレード失敗」の声と共に、阿部慎之助監督ら首脳陣、チーム編成に携わるフロントへの批判だった。
リチャードは試合後に2軍降格
というのも、12日にも「8番サード」でスタメン起用されたリチャードだが、6回ノーアウト一塁の場面でヒットエンドランのサインが出るも、これを見逃してランナーは二塁でアウトに。ベンチからのサインを見逃してチャンスを潰したのだ。
「自分が打つ、打たないじゃなくてボーンヘッドはやっぱり許されない」
阿部監督は試合後、リチャードに厳しい言葉を向けると2軍降格を言い渡す。怪我で離脱中の岡本和真選手(28)の代役を期待された右の大砲は、移籍後すぐに2本塁打を放つもその後は失速。サインミスで阿部監督も我慢の限界を迎えたのだろう、わずか1か月でイースタンリーグへ。
この日はもう一つ、「トレード失敗」を思わせる象徴的なシーンもあった。
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12回裏、すでに巨人の勝利が消滅した中で、せめて引き分けに持ち込みたい巨人がマウンドに送ったのは、守護神のライデル・マルティネス投手(28)。ツーアウト二塁の一打サヨナラの場面を迎え、ソフトバンクベンチが動く。代打で登場したのは秋広だ。
初球、2球目と低めに外れて2ボールになったところで巨人からタイムがかかり、杉内俊哉コーチ(44)がマウンドに向かう。秋広に対して投げにくそうにしていたマルティネスだけに、勝負を避けて「申告敬遠」になると思われた。
ところが、岸田行倫捕手(28)は再び腰を下ろして構えると勝負続行の様子。結局、3球4球とスプリットが低めに外れてストレートの四球を与えた守護神だが、続く嶺井博希捕手(34)には打って変わってストライク先行で攻め、空振り三振に切ってゲームセット。
秋広と“勝負”後の阿部監督の表情
結果、秋広との“勝負を避けた”ことが奏功して引き分けに持ち込んだ巨人。しかし、どこかギクシャクしたような采配に思えるが、在阪球団を中心に取材するスポーツライターの解説によると、
「この時、ソフトバンクベンチに残っていたのは捕手2人で、ともに嶺井選手に代わる打者とは考えにくい状況。一塁が空いていただけに、秋広選手の敬遠は首脳陣としても当初から選択肢にあったと思います。
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ただ初めから申告敬遠を申し出たら、“トレードに出した選手から逃げるのか”と。そして仮に秋広選手と勝負してサヨナラ打でお立ち台を演出しようものなら、あれこれと掻き立てられかねません。そこで四球やむなしで際どいコースに投げさせて、振ってくれたら儲け物との“勝負”と見ますね」
一方、同ライターが気になったというのが、秋広を歩かせた後でテレビカメラに抜かれた、阿部監督の明らかに不満げな憮然とした表情。
「阿部さんの性格上、“なんで秋広から逃げるんだよ”と、実は敬遠指示ではなく本当にバッテリーに勝負を命じたのかな、と思わせる表情でした(笑)」
試合前練習で阿部監督と秋広が
秋広の巨人入団時から二軍監督として導にあたり、時にプロとして辛辣な言葉もむけていた阿部監督。それゆえに“確執”も囁かれた間柄だが、このワンプレーにも“遺恨”が見えたということか。
「いえ、試合前練習でもバッティングゲージ後方で阿部さんと談笑する姿も見受けましたし、秋広選手とは“仲が悪い”なんてことはないんですよ。挨拶を交わした巨人ナインからも相変わらず、イジられていましたしね(笑)。
それに前日(11日)には、エラーはつきませんでしたが、秋広選手にも大きな守備のミスもありました。リチャード選手と同様、まだこれからの選手だけに1か月で“トレード失敗”と決めつけるのは時期尚早ですよ」(同・ライター)
ちなみに6月11日の試合でも1回を無失点、移籍後は4試合に登板して打者12人ながら防御率0.00と好調をキープしているのが大江。今のところ、ファンから「トレード成功」と思われているのは彼だろう。