慶応大の岡野栄之教授 慶応大などの研究チームは、血液中の細胞に特定の遺伝子群を導入し、神経細胞に転換させる技術を開発したと発表した。皮膚細胞を使う従来の方法では切開や縫合が必要だったが、採血のみで済むため患者の負担が少なく、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を経由するよりも早く作れるという。論文は17日までに、米科学アカデミー紀要電子版に掲載された。
脳神経疾患の研究には、患者自身の神経細胞を利用するのが有効だが、iPS細胞から神経細胞を作るには半年近くかかる上、病気による遺伝子の変化が途中で消失するなどの課題があった。
慶大の岡野栄之教授、藤田医科大の石川充講師らは、皮膚線維芽細胞を神経細胞に誘導する4種の遺伝子を血液中のT細胞に導入。その際、T細胞からiPS細胞を作る時に使う4種の初期化遺伝子を加えたところ、神経細胞に転換させることに成功した。さらに、誘導遺伝子のうち1種に初期化遺伝子4種を加えるだけでできることも分かった。
転換した細胞は、グルタミン酸に反応するなど神経細胞としての機能を示した。また、iPS細胞と異なり、完全に初期化されていないため、病気などの影響による遺伝子の変化も一部残されていた。