「お前なんか産むんじゃなかった」同居介護している息子につらく当たる母…いつまで我慢したらいいの?

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2025年06月23日 22:20  All About

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1年前、母が病に倒れた。母と同居しながら介護を続けているが、つらく当たってくる母。いつまで我慢したらいいのか……。母親の介護に悩む50代男性に、介護アドバイザーの横井孝治が寄り添います。※画像:PIXTA
多くの人が直面するであろう「介護」。そこには介護離職、きょうだい間のトラブル、相続などさまざまな問題が横たわっているようです。本稿では介護に悩む人のエピソードを紹介しながら、介護アドバイザーの横井孝治が対応策や注意点などを解説します。

同居して介護をする私につらく当たる母

「同居して介護をしている私につらく当たってくる母。いつまで我慢しなければいけないのでしょうか」

今回、介護の悩みを打ち明けてくれたのはカズキさん(仮名/50代男性)。1年前に脳梗塞で倒れた母の介護を1人で行っています。

カズキさんは都内の大企業で部長を勤めています。会社の経営方針を考えたり、部下の指導、育成を行ったりするなど多忙を極め、プライベートの時間はほぼないと言います。

「数年前に実家で暮らしていた父が亡くなり、そこから母と私の2人暮らしが始まりました。当初は久しぶりの共同生活にドキドキしていましたが、それにもだんだん慣れてきて。この暮らしがずっと続けばいいと思っていた矢先、母が病に倒れました」

カズキさんの母は退院後、介護が必要な状態に。同居しながらの介護が始まりました。ただでさえ少ない自分の時間をさらに削りながら母の世話をする日々。しかし、母からはつらく当たられることが多いと言います。

「先日、『こんな目に遭うくらいならお前なんか産むんじゃなかった』と言われて……。ひどく落ち込んでいい年して泣いてしまいました。こんな生活、いつまで続ければいいのでしょうか」

在宅介護が長引くと親子仲は悪化しやすい

まず、カズキさんに伝えたいのは、在宅介護が長く続くと親子仲は悪くなりやすいということです。稀にとても仲良くなるケースもありますが、高い確率で親子仲が悪くなりやすいのです。その理由は後述しますが、この前提を押さえておいてください。

その上で、解決策としては「レスパイト」に尽きるのではないでしょうか。積極的なレスパイトを心掛けてほしいです。

レスパイトとは介護を介護のプロなどに任せることです。訪問介護のヘルパーさんや通所介護、デイサービスのスタッフに親を預けて、自分はその間仕事をしたり、友達と遊びに行ってリフレッシュしたり、旅行に行ったりして気分転換をした上で、また気を取り直して介護を頑張る。これがレスパイトというものです。

レスパイトはもともと介護保険制度ができたときの大きな狙いの1つでもあります。2000年に介護保険制度が作られたのですが、制定以前から国はいろいろなことを考えていました。

今後高齢者がどんどん増えていく。この環境のまま国民を放ったらかしにしたら、みんなが介護を頑張らなくてはいけなくなってしまう。そうすると、子どもを育てることや、仕事を継続することがままならなくなってしまい、日本という国はどんどん弱ってしまう。

だから社会全体で介護を担っていく、介護保険という制度を作ろう。家族から介護を預かって、支援する体制を構築して、家族の時間を少しでも取ってあげよう。レスパイトをさせてあげよう。これが大きな狙いだったのです。

だからこそ、レスパイトという解決策を取るのは悪いことではありません。ただ、介護を誰かに預けるというと、介護放棄する“ネグレクト”と勘違いする人もいるのですが、決してそういうわけではありません。介護を「すべて放棄」するのではなく、誰かに任せてやる気を取り戻してまた戻ってくる、これがレスパイトなのです。

親子仲が悪化しやすい理由

先ほど親子仲は介護が長引くと悪くなりやすいとお伝えしました。その理由は、ストレスがたまるからです。介護は楽しいことばかりではありません。年中ずっと、嫌なことやつらいことが起きやすい。そんな状況下で関わっているとギクシャクしやすくなって当たり前です。

しかもその原因はなにも大きな出来事ばかりではなく、その多くが些細なトラブルの積み重ねによるものです。

カズキさんのように多くの子どもは介護するのが初めてです。一方で、親も介護されるのは初めて。初心者と初心者がぶつかり合って、ハッピーな結果になることはめったにありません。失敗もあるし、苛立ちもあるし、いろいろな不安があって当たり前なわけです。

親の主治医や親戚に相談すると、たいていは「年寄りの言うことなんだから気にするな」「もっと賢く受け流したら」といった適当なアドバイスをされるケースが多いのですが、本当にそうやって受け流すと親はもっと怒りがちです。

「私の話をちゃんと聞かないから嫌いだ」などと言って、けんかになり、また親子仲が悪くなっていく。なかなかつらいものです。

どう考えるべきなのか

では、いったいどうすればいいのか。答えは「子どもは親の奴隷ではない」という当たり前のことに気が付くべきということです。

親の気持ちは分かっていても、一方的に嫌なこと言われたり、暴言を吐かれたり、暴力を振るわれたりしていてばかりでは子どもがめげてしまいます。なので筆者は、必要に応じて言い返すのは1つの手だと思います。

ただ、暴力はいけません。ひどいことを言われたら「その言い方はないよね」ぐらいの反論はしてもいいのではないでしょうか。

もしもそれで事態が収束すれば及第点。うまくいかなければ次は物理的に距離を取るのです。デイサービスやショートステイを使いましょう。例えば1カ月のうち1週間でも親が自宅にいない、施設に入っているというタイミングを作ることで、自分の中でも気持ちが変わりますし、親もある程度落ち着きます。

親が施設から自宅に戻ってきたときに、旅行に行った後と同じセリフが出ることが多いのです。「ああ、やっぱりわが家が一番だ。お前の顔を見てホッとした」と。きっとそこで若干親子の距離感が近づくはずです。

そして、また仲が悪くなったぐらいのタイミングでショートステイとデイサービスが入ってくる。これを繰り返しながらなんとかうまく釣り合いを取っていくのが、現実的なレスパイトの使い方ではないかと筆者は考えます。

親の介護によって子どもの心が壊れるのは「親不孝」

親の介護を通して、一方的に親から好き放題言われたり、暴力を振るわれてしまったりした結果、子どもの心が壊れてしまうのは、何よりも「親不孝」だと思います。

多くの親は子どもの幸せを願って育ててきたはずです。だからこそ子どももなんとか恩返ししようと思って介護という重労働をしているにもかかわらず、親からの要望はエスカレートするし、暴言は増えるという傾向がある。

特にそこに認知症や高齢者うつといった精神状態の変化が入ると、なお悪化しやすいです。そのような状態でずっと耐え続けるというのはしなくていいのではないでしょうか。

横井 孝治プロフィール

両親の介護をする中で得た有益な介護情報を自ら発信・共有するため、2006年に株式会社コミュニケーターを設立。翌年には介護情報サイト「親ケア.com」をオープン。介護のスペシャリストとして執筆、講演活動多数。また、広告代理店や大手家電メーカーなどでの経験を生かし、販促プロデュース事業も行う。All About 介護・販促プロモーションガイド。
(文:横井 孝治(介護アドバイザー))

このニュースに関するつぶやき

  • そっくり同じことを言われてましたが更年期障害やボケのせいにしてると気にならなくなりました。^^深刻に受け止めても、しんどくなるだけです。この母にしてこのσ(゚∀゚ )オレあり!
    • イイネ!1
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