
「田作り」にチーズとこしょう、「紅白なます」にレモネード−。おせち料理離れが進む中、日本古来の食文化を次代につなげようと、京都市の食品会社と学生らが、若者の感性を取り入れた「ネオおせち」を考案した。おせち料理のいわれや食材は残しつつも、意外な調味料を駆使した斬新な味付けが特徴で、同社が商品化に向けて試行錯誤を重ねている。
京都府が、食に関わる多様な事業者の連携拠点として立ち上げた「京都食ビジネスプラットフォーム」のプロジェクトの一環。京都の伝統食を生産・販売する「ノムラフーズ」(伏見区)と、京都文教短期大(宇治市)と京都文教大(同)で栄養について学ぶ学生らが参画した。
昨年11月には同短大で、同社の長嶋茂社長が学生らに、おせち料理の歴史や食材のいわれなどを説明。その後、学生らは従来のおせち料理を試食したが、普段食べ慣れていないためか、「冷たい。温かいおせちの方が…」「黒豆は甘すぎて、にちゃっとした食感が苦手」「すっぱい」など否定的な声も。長嶋さんは「代表的なメニューを次々に否定されて、衝撃を受けました」と苦笑する。
若者に受け入れられるおせち料理とは−。学生らは、従来のおせちが苦手な理由を洗い出した上で、「現代風」にアレンジしたメニューを考案。揚げた黒豆に赤シソのふりかけをまぶし、スナックのような食感にした「ぽりっと黒豆」、田作りにチーズを合わせてこしょうをかけた「チー作り」、オリーブオイルやはちみつで紅白なますの酸味を和らげた「レモネードなます」など、斬新な発想が次々と飛び出した。
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提案を基に、同社は「ネオおせち」の商品化に向けた検討を進めている。賞味期限や冷凍時に味や食感が損なわれないかといった課題をクリアする必要があるという。
長嶋さんは商品化できた場合、今秋にも自社サイトなどで販売し、来年の正月の食卓に届けたいと考えている。どこまで商品化できるかは未知数というが、「家族でおせち料理を囲みながら過ごす文化を次世代につなぎたい。伝統と先端の融合で『進化』したおせちが、30年後にはスタンダードになる可能性もあると思う」と期待を寄せる。
(まいどなニュース/京都新聞)
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