自民党役員会に臨む菅義偉副総裁=4日、国会内 自民党の菅義偉副総裁(76)が秋に予定される臨時国会に向け、思案を重ねている。衆参両院で少数与党に陥った石破政権が継続する場合、日本維新の会を連立政権に加える「パイプ役」になると期待が集まる。一方、自民総裁選が前倒しされれば、小泉進次郎農林水産相の支援に回るとみられる。影響力の発揮を目指し、「秋の政局」に臨む構えだ。
「党を立て直さなければいけない」。菅氏は7月23日、首相経験者の麻生太郎、岸田文雄両氏と共に石破茂首相(党総裁)と会談した際、こう強調した。麻生氏が「首相では選挙に勝てない」と辞任を迫ったのに対し、菅氏は首相の続投意欲に明確な反対姿勢を示さなかった。
菅氏の発言の背景にあるのは、党内情勢と世論の乖離(かいり)だ。党内は参院選惨敗を受け、旧安倍派など「派閥」勢力を中心に首相退陣へ圧力を強める。一方、報道各社の世論調査では首相続投を容認する声も根強い。「脱派閥」が持論の菅氏は派閥主体の権力闘争に否定的で、「世の中の雰囲気を見ないといけない」と周辺に語った。
石破政権が当面続く場合、国会で予算案や法案を成立させるため、野党を引き込む多数派形成が必要となる。維新では「大阪組」を中心に、「副首都構想」を掲げて連立入りを求める声が上がり、菅氏は「最高のチャンスだ」とみる。菅氏は維新創業メンバーの松井一郎元代表(前大阪府知事)と緊密な関係を保っており、自民関係者は「2人の間でどれだけ話を詰められるかだ」と話す。
8月1日夜には森山裕幹事長が維新のキーマンである遠藤敬氏と東京都内で会食した。この直前、菅氏は森山氏と約30分面会しており、政権運営や国会対策について助言したとみられている。遠藤氏はその後、国対委員長再登板が決まった。
自民は総裁選前倒しを検討する。仮に総裁選になれば首相の出馬は困難な情勢で、菅氏は昨年9月の総裁選に続き、小泉氏を支援するとみられる。小泉氏は前回総裁選で党員票が伸び悩み、1回目の投票で3位にとどまったものの、菅氏のてこ入れにより国会議員票は首位だった。
副総裁として首相を支える立場の菅氏は表立った行動は控え、情勢を慎重に見極めている。小泉氏に対しては現職閣僚であることを踏まえ「今の段階で動くべきではない」と自制を促す。党は総裁選前倒しの賛否を47都道府県連に確認する方針。小泉氏が会長を務め、菅氏も所属する神奈川県連の対応も焦点となる。