戦後80年の所感を発表する石破茂首相=10月10日、首相官邸 1940年の帝国議会で日中戦争を批判した斎藤隆夫衆院議員(当時)の「反軍演説」を巡り、議事録の復活に向けた与野党の検討作業が長期化する公算が大きくなってきた。石破茂前首相が在任中に調整を指示。立憲民主党などが早期復活を主張しているが、自民党は慎重姿勢を強めている。
「過去に復活させた例はない」。自民は4日の衆院議院運営委員会理事会で、議事録の復活についてこう指摘した。「議事録から削除された演説は反軍演説のみならず多数ある」として(1)復活させる発言とさせない発言の線引きの検討(2)削除された経緯の検証―が必要だと主張した。
浜田靖一委員長は今後のルール作りを含め「しっかり議論してほしい」と丁寧な検討を求めた。
反軍演説は「現実を無視し、聖戦の美名に隠れ、国民的犠牲を閑却」しているなどとして日中戦争の泥沼化を糾弾した演説だ。陸軍は軍部を侮辱していると猛反発。斎藤氏は除名され、当時の議事録は3分の2が削除されたままとなっている。
議事録の復活は石破氏が在任中に党幹部に指示。石破氏は退陣目前に発表した戦後80年の所感で、反軍演説は議員が役割を果たそうとした「稀有(けう)な例」だと評価し、退陣後も「戦後80年の今年にやる意義がある」と訴えている。
もっとも、石破氏の退陣後、機運は薄れつつあるのが実情。高市早苗首相が検討加速を指示した形跡はなく、自民の国対関係者は「すぐに結論は出ない」と漏らす。立民中堅議員は「自民はやる気を失っているように見える。石破氏の在任中に結論を出しておくべきだった」と語った。