Netflixシリーズ『喧嘩独学』(独占配信中)メイキング写真 『電車男』から20年――「2ちゃんねる」から「ライブ配信」へ。SNS時代の“熱狂”をどう映像化するのか。Netflixシリーズ『喧嘩独学』(全6話)を手がけた武内英樹監督が、舞台裏を語った。
【画像】Netflixシリーズ『喧嘩独学』キャラクター相関図 『翔んで埼玉』『はたらく細胞』など数々のヒット作を生み出してきた武内監督が、Netflix作品に初参加。原作はLINEマンガ発の人気ウェブトゥーンで、国内累計閲覧数5.4億回、世界累計22.8億回を超える(※2026年1月時点)話題作。アニメ化もされている。
暴力や貧困、あらゆる“理不尽”にその拳で逆襲を仕掛ける新たなヒーロー・志村光太を演じるのは、俳優の鈴鹿央士。自身も“理不尽”に涙し、志村の逆襲に心震わせ新たな一歩を踏み出す“秘密”を抱える後輩女子・八潮秋役に見上愛。スクールカースト上層部から突然の都落ち、志村へ「喧嘩配信」という“悪魔の囁き”を行う張本人・カネゴン役に菅生新樹。志村のアルバイト仲間であり、憧れの存在・朝宮夏帆役で生見愛瑠。
注目の若手俳優たちが出演する本作は、ライブ配信を武器に理不尽な世界へ立ち向かう高校生たちの青春群像劇となっている。
武内監督のオフィシャルロングインタビューが到着した。
──「喧嘩独学」の企画を聞かれた際に、どんなところに魅力や興味を感じられましたか?
【武内】まずタイトルに惹(ひ)かれました。 それと、今どきの若者のテーマでもあるライブ配信という要素と、それでお金を稼ぐという点。あと、その中で、光太、カネゴン、秋の3人の友情が深まってくるという部分ですよね。そのシンプルさがすごく新しいなと思えたのが最初に魅力を感じたところでした。
昔、もう20年前になるのかな、『電車男』(フジテレビ/2006年)というドラマをやりましたが、当時ネットで流行していた“2ちゃんねる”が題材になっていて、大変でもあり、すごく楽しかったんですよね。そこから時代を経て、また同じような体験ができるのかなというのも大きかったです。
──そういう意味では、監督にお話が来た納得感みたいなものはありましたか?
【武内】どうなんでしょう。最近、コメディが続いていましたが、今回はコメディの話ではないじゃないですか。コメディしかできないと思われても嫌だから(笑)、違うジャンルをやりたいと思っていた中で、こういう話が来たのはうれしかったです。
『喧嘩独学』はわりと友情もので、青春ものでもあるんですよね。それで言うと、僕はおじさんの話が多いので(笑)、10代の若者の話というのも覚えている限りではないんですよ。小学生の話はやったことがあって(『みにくいアヒルの子』フジテレビ/1996年)、高校生の話はデビュー作くらいかもしれないですね。
■「友情と熱量を伝えたかった」
──そのデビュー作『剣道少女』(フジテレビ/1995年)は、地方で閉塞感を感じている高校生と武道の話でしたよね。今回と通じるものもあるなと思いました。『喧嘩独学』に取り掛かるにあたって、まず何を考えられましたか?
【武内】SNSの表現をどう見せていくかというのはまずありましたね。『電車男』でも“2ちゃんねる”のスレッドの表現をいろいろと考えて見せ方を編み出していきましたが、そこから20年経って、今のライブ配信のチャットってもう全然別物じゃないですか。それをリアルにやりつつ、表現もアップデートしたいと思いましたが、なかなか大変でした。
画面にバーッと出てくる膨大な文言を全部オリジナルで考えて、それをちゃんと読んでもらえるようにするというのはなかなか至難の業。文字のサイズ感や文字が出る速さも重要なんですよね。20年前も大変だなと感じましたが、たった一言を読ませるために前後の多くのコメントを考えなければいけない助監督たちも本当に地獄だったと思います(笑)。
ただ、そこでリアルとずれていて共感できないと、作品に入り込めなくなってしまうんですよね。撮影当時はまだなかったんですが、リキッドグラスのちょっと立体的な透明感のある表示がこれから出るという話を聞いたので、それを先取りして取り入れてみたりして、いろいろ挑戦もできました。
あと作品性で考えたこととしては、やっぱり3人の友情の高まりですね。それぞれの熱量を大事にしながら、その熱い思いをお客さんにどれだけ伝えられるか。ちょっと熱苦しいぐらいでもいいなと思ったんです。見ているうちにその熱量にお客さんが引き込まれていくようにしたいということは考えました。
■「先生は一切出さない」独自ルールも明かす
──基本的に原作に沿った実写化となっていますが、その中で監督が特に重要視された点や意識された点はどんなところでしたか?
【武内】一番やりたかったのは友情のところですが、そこは原作からしてそうなっていたので、実写化で特に何か意識するということはなかったですね。最初、原作は韓国の漫画ということで、文化の違いが出てくるかなと思っていたんです。でも、原作でもそれはまったく感じなかったですね。今どき、日本でこんなに喧嘩をしないかなとも思いますが、韓国だってきっと現実にはしないはずですからね。だからこそ読んでいて、見ていての気持ち良さみたいなものもこの作品にはあるのかなと思います。
これだけコンプライアンスにうるさい時代で、街中に防犯カメラが設置されている中で、喧嘩なんかできないじゃないですか。でも、人間にはやっぱり闘争本能が眠っている。この作品を通して本能を高ぶらせる疑似体験をしてもらって、スッキリできる部分はあるかもしれないですね。
喧嘩って前時代的なものでもありますが、その一方でライブ配信という新しさもあって、不思議な混ざり方をしている。そこが原作を読んでいて面白いと思ったところでもあるんです。懐かしさもあるけれど今っぽくて、昭和と令和が混ざった感じ。そこは実写化するうえで大事にしたところでもあります。
──世界観としてどこか無国籍な雰囲気もありますよね。
【武内】そこも意識したところですね。まさに無国籍にしたかったんです。韓国の原作だったからというのもありますが、リアルにすればするほど重たい話になってしまうので、ファンタジーの中にいるような世界観にしたいと思ったんですよ。だから2話の(カツアゲするヤンキー役の関口)メンディーと喧嘩する店も、とにかく無国籍な雰囲気にしてほしいとお願いしました。あと、学校に関しても大人は一切出すなと。先生ありきだと、あれだけ喧嘩があった場合、先生は何してるんだってなってしまうじゃないですか。一切出さなければ、お客さんもまったく気にならなくなる。そういうルール作りみたいなことはしていました。
──あらためて、これから作品をご覧になる方、またリピートされる方に監督から注目ポイントを教えていただけますか?
【武内】今、みんな喧嘩なんてしない中で、自分の心の奥底に潜む闘争本能をぜひこの作品で呼び起こして、入り込んでいただきたいです。その上で、友情、母親との家族愛、それからサスペンス、アクション、いろいろ混ざり合いながらすべての要素が入っているので、どの角度から見ても楽しめると思いますね。
友情だけじゃなくてミステリーの側面もあって、スポコンもあって、青春ものでもあるっていう。ジャンルが多岐にわたっているので飽きがなくて、作っていても楽しめました。人が生きる熱量というものを軸に、いろいろなトッピングを味わっていただければと思っております。
リピートされるという方は、ぜひひよこのキーホルダーをひたすら追いかけながら見ていただけたらと(笑)。その意味を考えながら見てもらえると、2回目はより深く楽しめると思います。あと、秋はなぜ黄色い衣装なのか、チキンが嫌いなのか。ポイントはひよことニワトリですね(笑)。
――Netflixシリーズ『喧嘩独学』(全6話)は、動画配信サービス「Netflix」で独占配信中。