石破茂首相(壇上)が訪米を報告した参院本会議=12日、国会内 先の日米首脳会談を受けた12日の参院本会議での質疑で、石破茂首相は「トランプ大統領との信頼関係構築に向けた一歩とすることができた」と成果を誇示した。野党は米側による鉄鋼・アルミニウムへの追加関税が会談直後に発表されたとして、首相の主張に疑問を呈した。
「日米同盟の揺るぎない結束を国際社会に力強く示すことができた」。首相は12日の参院本会議で、胸を張った。
日米首脳会談は米ワシントンで7日(日本時間8日)に行われた。10日にトランプ氏は鉄鋼・アルミニウムの輸入に25%の追加関税を課す大統領令に署名。貿易相手国と同水準の関税を課す「相互関税」を導入する考えも示した。
このため、首脳会談で首相が1兆ドル(約153兆円)の対米投資や米国産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大を打ち出し、トランプ氏の関税攻勢をかわしたとの訴えは説得力を失いつつある。
立憲民主党の福山哲郎元幹事長は「(投資拡大など)大きなお土産を持って行っても関税は課せられた」と指摘。日本政府が米国から追加関税の連絡をいつ受けたのかをただしたが、首相は「会談で議論はなかった」と述べるにとどめ、具体的な答弁を避けた。
米国によるパレスチナ自治区ガザの所有構想など「法の支配」を軽んじかねない言動をトランプ氏が重ねていることへの懸念も野党議員から相次いだ。日米首脳の共同声明に「法の支配」の記述はなく、中東和平に関しパレスチナとイスラエルが共存する「2国家解決」の実現が盛り込まれなかった。
共産党の山添拓政策委員長はトランプ氏の言動について「国際社会が積み重ねてきた協調と共存のための秩序を踏みにじる暴挙だ」と指弾。「首相は会談でひたすらトランプ氏におもねり、称賛の言葉を並べるばかりだったのではないか」と迫った。
これに対し、首相は「各国首脳と率直に意見を交わすには、まず信頼関係を構築し、諸課題への認識を一致させることが第一だ」と反論した。共同声明を巡っては「わが国として法の支配を重視する立場に全く変わりはない」「わが国として2国家解決を支持する立場には全く変わりはない」と、苦しい釈明に追われた。
立民ベテランは「首相はトランプ氏の機嫌を損ねないことで精いっぱいだった。関税の話を事前に知らなかったのならば政府全体の問題だ」と批判した。