東芝元社長の佐々木則夫(右)、田中久雄両氏=2013年2月(AFP時事) 2015年に発覚した東芝の不正会計を巡り、同社が旧経営陣に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が19日、東京高裁であった。中村也寸志裁判長(村田斉志裁判長代読)は元社長の佐々木則夫、田中久雄両氏と久保誠元副社長に賠償を命じた一審東京地裁判決を取り消し、同社の請求を退けた。
判決によると、東芝はインフラ事業で損失引当金を過少計上したり、パソコン事業で製造委託先に部品を高く売って完成品を買い取る「バイセル取引」を利用したりして、08〜14年度に計2248億円の利益を不正に水増しした。
一審はインフラ事業のうち地下鉄の機器納入▽高速道路のETC工事▽原子力プラント建設―で引当金を計上しなかったのは違法と判断していた。
これに対し中村裁判長は、原子力プラント建設に関する会計処理は違法ではないと判断。残る2分野では「引当金を計上すべきだ」としたが、東芝の企業規模や投資家の判断への影響という観点では、有価証券報告書などの重要事項を虚偽記載したとは言えないと結論付けた。
バイセル取引は「当時、一般的な会計基準はなかった」として、一審と同様に違法性を否定した。
一審では東芝の株主が提訴した別の元副社長2人にも賠償が命じられたが、その後、同社の上場廃止に伴う株式併合によって株主ではなくなったため、既に訴えが却下されている。
東芝の話 今後の対応は判決内容を精査し、訴訟代理人とも協議の上、決定する。