ビフィズス菌で結婚相手を選ぶ時代がくる? 学力アップサプリも? 最新研究からわかる、未来の可能性

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2025年06月24日 09:10  ORICON NEWS

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大阪・関西万博 大阪ヘルスケアパビリオン内の森永乳業ブース
 開催中の大阪・関西万博「大阪ヘルスケアパビリオン」内で、森永乳業のブースが連日多くの来場者で賑わっている。来場者が楽しみながら未来のビフィズス菌の可能性を感じられる体験を提供し「まるでゲームセンター」と話題に。現在も「認知機能改善」や「ダイエット・美容」など各ジャンルで研究が進められ、日々様々なことが分かってきているというが、今後の未来で起こりうる”ビフィズス菌の可能性”とはどういうものなのか。森永乳業の主任研究員・新井聡さんは「婚活アプリの項目にビフィズス菌の所持割合が必須項目として加わるかもしれないし、受験生の学力をアップさせるサプリもできるかも…」と話す。「あくまで妄想ベースですが…」と、未来の可能性を明かしてくれた。

【写真】ビフィズス菌の新技術が結集、原料に酢を使わない「発酵酢ドリンク」とは?

■チームプレーで働くビフィズス菌「控えめだけど”超実力派”なギャップがある」

 大阪・関西万博「大阪ヘルスケアパビリオン」内で、「ビフィズス菌でスーパーヒューマン」をテーマに展示を行っている森永乳業ブース。5つのコンテンツがあるが、その中でも、腸内に潜む悪玉菌と戦う未来型シューティングゲーム「VR腸内クエスト」が大きな話題に。万博開幕32日目(5月14日)で累計体験者数が1万人を突破し、ゲーム内で「ビフィズス菌!」と叫ばれた回数は20万回を超えるという大盛況ぶりである。

 「あれだけ『ビフィズス菌!』と叫ばれるのを見ると、研究者としては驚きとうれしさを感じます」と、森永乳業 主任研究員の新井聡さん。

「ビフィズス菌は単なる整腸作用だけではなく、いろんな免疫や脳機能にも関わることが分かってきています。万博では、そんなビフィズス菌の力を科学とエンタメを融合させた体験を通じて、楽しく知っていただきたいと思っています」(新井さん/以下同)

 長年ビフィズス菌の研究に携わってきた新井さんだが、ビフィズス菌への愛はひとしおで、「控えめだけど超実力派というギャップがある」と最新の研究で分かってきたことを話してくれた。

「大腸の中にはビフィズス菌以外にもいろんな腸内細菌が棲んでいますが、実はビフィズス菌は他の腸内細菌とのチームプレーも行っているんです。たとえばビフィズス菌が作った物質を他の腸内細菌が使うことで身体に良い働きをしたり、別の腸内細菌が作った悪い物質をビフィズス菌が良い物質に変換したり。最近の研究でそういったことが分かってきています。

 ビフィズス菌は酸素に弱いので、酸素がほとんどない大腸の奥に住んでいます。それでいて、腸内環境を良くするだけではなく、免疫細胞を活性化したり、脳の働きにまで影響したりと、全身の健康のために働いています。腸の奥深くに住んでいて控えめだけど、実は”超実力派”だというギャップがとても可愛いと思います」

■ストレスに対応し、退職代行もいらなくなる…? 「”心を整える”コンセプトの食品も」

 日々の研究を通してビフィズス菌の様々なことが明らかになってきたが、「まだまだ未知の機能があると思います」と新井さん。そんなビフィズス菌の可能性を信じた時、将来どんなことが可能になるのかを聞いてみると、新井さんは「あくまで”妄想ベース”としてお話しますが……」と答えてくれた。

「ビフィズス菌は腸内だけでなく、免疫や脳機能、さらにメンタルなど、全身の健康に関わっていることが分かってきています。こうした機能がもっと進めば、”心を整える”というコンセプトのビフィズス菌ヨーグルトもできますよね。それを朝食べるとストレスに強くなり、ポジティブな気分で一日を過ごせるという…。

 また脳機能に注目すると、集中力や記憶力を高める作用がある菌が見つかって、受験生の学力をアップさせるような商品ができたり。また、同じ食事を取っているから夫婦や家族の腸内細菌は似てくる…という研究結果もあり、もともと腸内細菌の割合が近しい人と結婚すれば家庭が上手く行きやすいという仮説も立てられる。婚活アプリや結婚相談所で、ビフィズス菌をはじめとした腸内細菌の割合を書く欄が出てくる。相性を見る指標の一つにビフィズス菌がなりうる…そういった可能性もあるかなと思います」

 「実は、一番多くビフィズス菌を持っているのは、赤ちゃんの時なんです」と新井さん。実際、母乳を飲んでいる健康な赤ちゃんのおなかを調べてみると、たくさんのビフィズス菌が確認できるという。ここにビフィズス菌の”神秘性”を感じると新井さんは言う。

「ビフィズス菌が赤ちゃんの中に多いのは、母乳が影響しているからだと言われています。母乳の中にはヒトミルクオリゴ糖と言われる特殊なオリゴ糖が入っているんです。これは赤ちゃんが吸収するためのオリゴ糖ではないんです。赤ちゃんはオリゴ糖を吸収できないので。実はこのヒトミルクオリゴ糖は、ビフィズス菌を赤ちゃんのおなかの中で増やすためにあるんじゃないかと…。腸内環境がまっさらだと、いろんな菌が入ってきてしまうので、ビフィズス菌を増やすことで有害な菌が増えるのを防いだり、免疫を成熟発達させたりします。そのビフィズス菌を増やすために、母乳の中にオリゴ糖が入っている。そんな神秘的な共生関係のようなものも、研究によって明らかになっています」

■「腸内環境は後天的に変えられるスペック」日々のヘルスケアに活かすことができる

 万博の森永乳業ブースのコンテンツの一つとして、「腸内細菌抗体検査」を活用して最大4万人の腸内細菌の菌の割合を検査するサービス「ワタシの腸内チェック」も行われている。事前に検査キットを使って検体(便)を送付しておき、パビリオンの森永乳業ブースに行くと、自身の腸内細菌に関するプログラム(詳細な特徴やアドバイス)を受けることができるのだ。

「腸内細菌の測定サービスは、普通のクリニックでも受けられますが、通常数万円の費用がかかります。今回の企画では株式会社ヘルスケアシステムズ様の協力により最大4万人の方が無償で検査を受けることができて、検査の結果を私たちのブースでフィードバックさせていただいています。

 ご自身の腸内細菌の特徴を知って、『私にはこの菌が少ない』と分かったら、『では、こういう食材を摂ると増やすことができますよ』といった提案もさせていただいています。ご自身の腸内細菌の特徴を知った上で、より強みを出したり、少ない菌に関してはそれをサポートするような食材を日々の食生活に取り入れたり……腸内環境は後天的に変えられるスペックであるとも言えます」

 こうした腸内環境を知るサービスが、今後もっと安価に受けられる状況になれば、サービスがもっと広く普及し、人々の生活も変わるだろうと新井さんは言う。

「検査のハードルが下がれば、腸内細菌を知る機会がどんどん増えて、日常の健康管理に活かすことができます。例えば1週間くらいで検査結果が分かると、食材を買う時にも『最近腸内環境が変わってきたから、今日はこの食材を摂ってみよう』と参考にすることができます。毎日血圧を計るように、ヘルスケアの指標として腸内環境がもっと一般化されるといいなと思います。

 腸内細菌叢は一人ひとり違っているものですが、ビッグデータとして腸内細菌のデータがたくさん集まれば、パーソナライズド医療や予防医療にも活用できる。そんな可能性も考えられています。全国のデータが集まってくれば、地域ごとの腸内環境の違いや特徴に基づいた健康政策を各自治体の中で行うことも考えられます。また年齢や性別に基づいた最適な食生活の提案であるとか、病気のリスクを予測するとか。データが集まることで 腸内環境を基点にしたヘルスケアの政策や戦略が、個人や社会で考えられるような未来もあり得るのかなと思います」

 長年ビフィズス菌に関わってきた新井さんは、「ヘルスケアの中で、ビフィズス菌がもっと身近な存在になってほしい」と主張する。

「誰もが自然に食事の中でビフィズス菌を摂るような社会が実現することで、究極的には健康寿命が伸びることにもつながればいいなと。もっとビフィズス菌を身近に摂っていただけるような商品の開発とともに、ビフィズス菌の価値をもっと一般の方に知っていただけるように、正確な情報を発信していきたいと考えています」

PROFILE/新井聡
森永乳業 主任研究員。学生時代は植物を用いた分子生物学や遺伝子工学を専攻。これまで「プロバイオティクス」と呼ばれるビフィズス菌や乳酸菌の保健機能について研究。7年間の研究、開発期間をかけて「シールド乳酸菌(R)」の製品化を実現。万博推進局を兼務し、大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオン内で披露されるコンテンツの企画開発に携わる。

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  • 匂い(臭い)?フェロモン?でパートナーとの身体の相性を判断するという説もあるけどね…
    • イイネ!1
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