“推し疲れ”しないコツってあるの?『腐女子のつづ井さん』から学ぶ、人生を愉しく生きるコツ

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2024年05月15日 07:10  リアルサウンド

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(左から)『老犬とつづ井』『とびだせ!つづ井さん』(文藝春秋)
■BLが好きなオタクとしての愉快な日々

  好きなものに熱中し、時に友と語らい、時に愛を表現する――そんな”推し活”が人生を楽しくするのだ、ということを体現しているコミックエッセイストがいる。デビュー作『腐女子のつづ井さん』(KADOKAWA)が「第20回文化庁メディア芸術祭」推薦作品にも選ばれ、以降も人気シリーズを描き続けているつづ井さんだ。


  先日、新刊となる『老犬とつづ井』『とびだせ! つづ井さん』(‎ともに文藝春秋)が発売され、続いて『つづ井さん』シリーズの実写ドラマ化が発表された。“腐女子”という少々マニアックな特徴を持つ作者が、なぜこんなにも支持されるのか?


  アニメや漫画を愛し、男性同士のロマンスにときめきを見出すBL(ボーイズ・ラブ)が好きなオタクとしての愉快な日々を綴った『腐女子のつづ井さん』での具体的なエピソードを例に、人気の理由を探る。   


■オタク、こう在るべし 価値観を否定しない柔軟さ

  まず注目したいのは、『腐女子のつづ井さん』で描かれているつづ井さんのオタクとしてのスタンスが”他人の価値観を否定せず、新しい概念や考えに触れることをためらわない”という点だ。


  本作に収録されている「腐女子と異文化交流」で、アイドル好きの友人に「…あのさ 純粋な疑問なんやけど …推しが3次元ってどんな感じ?」と訊いたつづ井さん。自分が今まで持っていなかった斬新な考えを告げられた彼女は、「すごい勉強になる アイドルってすごいね…!!」と感心する。


  筆者はここにオタクたる者こう在るべし、という姿を見た。例え自分にはない価値観だったとしても、肯定し受け入れる――それこそが人間関係構築において最も平和的な、相手に歩み寄る第一歩なのである。


  つづ井さんはコミュニケーションによって相手を理解することに長けており、決して独りよがりな態度を取らない。気の置けない友人を相手にしても、恋愛や結婚など、大事なテーマを語り合うときは真剣に言葉を選び、ディベートする真摯さがある。


  旧来の友人であるオカザキさんとの会話で展開される「腐女子と恋愛」では、”男同士の友情を熱く描いた小説が実写映画化したので観てみたが、内容が改変され主人公とヒロインの恋愛映画になっていた”という話から、巷にあふれる恋愛ものの受け止め方について語る2人が描かれる。


  女性が社会から強いられがちな規範や既成概念に対し、時に誰よりも深く真面目に考え、「私たちは私たちのままでいよう」「楽しく生きよう」と思える心の広さと柔軟さ。誰かや何かを”推す”ことは人生を豊かにする、という言葉にますます信憑性を持たせてくれるエピソードだ。


■誰かと比べない姿から人生の愉しさを知る

  まじめな話ができる友人がいること。型に囚われず、自分は自分、と思えること。こうした歩み寄りや相互理解の過程を経て構築されるフレンドシップは、何よりも尊く強い絆で結ばれる。


 『つづ井さんシリーズ』ではおなじみ、友人たちとくだらない遊びを超真剣に行うエピソード(筋トレを斜め上のオタク思想で楽しい遊びに変えてしまう「腐女子と筋トレ」、架空のキャラを応援するお守りをハンドメイドする「腐女子とお守り」etc)は、読者を抱腹絶倒させる人気エピソードだ。


  SNSの爆発的普及により、「映え」や「どれだけ推しのことを好きかをマウンティングする」などの”他者からの見え方”を意識するようになった昨今。そんな中でも燦然と輝く、つづ井さんと友人たちの楽しそうな姿からは、「楽しい」を生み出すポテンシャル、「好き」を表現するのに制限はないという多様性と自由性を感じざるをえない。


  きっとつづ井さんはこの世界で最も人生を愉しんでいるオタクだ。だからといって勝ち組、などというわけはなく――おそらくこの言葉は彼女自身も使わないだろう――優劣もない。誰かと比べたりしない。ただただ楽しいと思うことをして、「好き」に全力でいる。


  そんな彼女のように、私もなりたい。つづ井さんの飾らない天真爛漫な姿は、いつでも私たちに人生の愉しみを教えてくれるのだ。


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  • 知らないわ。今度読んでみよっと。
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