眼を傷つけない緑内障・眼球癆の対処法が実現か!? 違和感も感じない「埋め込み式マイクロポンプ」

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2015年07月10日 18:20  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

緑内障のような、眼内圧の異常による疾患は、最悪の場合、失明につながるにもかかわらず、長期的に有効な治療法が存在しなかったという。しかし、ドイツの各地に研究機関を持つ『フラウンホーファー研究機構』が眼内圧を一定に保つための埋め込み式の超小型ポンプを発表した。

現在の治療法は患者の負担も大きい

緑内障や眼球癆は決定的な治療法がない進行性の目の病気だ。緑内障は眼内液の発散・放出がうまくいかなくなり、それによって眼内圧が上がってしまう。また眼球癆は目のガラス体液がうまく生成されなくなることによって、眼球が縮んでいってしまう。いずれの病気も視力への障害が起き、失明につながる恐れが生じる。

現在の対処法は、その進行を遅らせるものであって、限られた期間しか有効性を発揮しない。またそのほかにも問題がある。

たとえば緑内障の場合は、外科手術によって人工的に眼球内の液を放出させる方法をとるなどする。ただし、4人にひとりは眼内液の放出をさまたげる傷ができてしまい、狙った効果をあげられないという。いっぽう眼球癆のケースでは、定期的に眼球内に液体の薬剤を注射することになる。失明を避けるためとはいえ、患者には負担の大きい処置法だ。

ポンプを目に設置する

しかし、『フラウンフォーファー研究機構』の研究者たちは、それらの目の病気に対して、継続するストレスを与えず、それでいてより長い期間視力を保つことができ、うまくいけば失明を完全に避けることができ来る方法を開発した。

それが、埋め込み式のマイクロポンプシステムだ。それは眼球に直接設置されるが、「患者はそれを感じとることはないし、眼球の動きが制限されることもありません」と研究者のひとりジェンケ氏は話す。

使用するのは、1秒あたり30マイクロリットルを送り出す能力を持つ、生体に害のないシリコン製のマイクロポンプだ。病気の種類に応じて、そのポンプが眼球に液を供給したり、あるいは放出させたりするようにして使用する。その液の供給・排出のための通路は、目にもともと備わっているものを利用するので、傷を形成するようなことはない。

定期的に眼圧を検査してポンプを調整することで、その患者に最適な眼内液の供給/排出ができる。将来的に埋め込み式センサーと連動して作動するようにできれば、自動的に眼内液の供給/排出が調整できるようになるという。

この方法は、患者にとっても負担の少ない処置法であるだけでなく、従来の薬剤による治療や手術による治療よりも正確に眼内圧の調整ができる。これまで、眼球癆になると失明は避けられず、最終的には美容的な理由から眼球を取り除くことが行われてきた。しかし、この方法ならば病気の進行を止めることができ、視力を永続的に維持することが期待できるという。

現在研究者たちは、実験室レベルで実際に作動するデモモデルを製作中だ。さらなる信頼性や耐久性のテストはまだこれからになる。

近年の各種デバイスの小型化技術によって、少し前では考えられなかった埋め込み式の機器による病気の対処法が次々と考え出されている。現在はちょうどその基礎研究の時期なのだろう。もう何年かしたら、こういった新しい治療法、対処法が次々と出てくるのかもしれない。

これからの高齢化社会では、単純に長生きするだけでなく健康を維持していくことも必要になる。それでも病気になってしまったときは、こういった治療法が確立していると心強い。

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