暴力表現やジェンダー表現など、時にビデオゲーム作品が世の物議の対象になることも少なくない。先頃、多くの非難の声を浴びて修正を余儀なくされたゲームはなんと奴隷貿易をテーマにした作品だ。
■歴史教育ゲームに収録された“奴隷テトリス”
アメリカの大手ビデオゲーム会社・ValveのPCゲーム配信サービス「Steam」から16世紀〜18世紀の「奴隷貿易」を題材にしたゲームが2013年9月にリリースされている。そのものズバリのタイトルの『Playing History 2 - Salve Trade』だ。ちなみにシリーズの第一弾『Playing History: Vikings』は北欧のバイキングをテーマにした歴史シミュレーションゲームだ。子どもたちがゲームを通じて歴史を学ぶことがコンセプトのシリーズタイトルなのである。
シリーズ第二弾の本作は、プレイヤーはアフリカの黒人少年となって奴隷船の船長に従い、与えられた様々な任務をクリアしながらゲームが展開する内容だ。
ゲームの中で問題とされているのは、船に多くの奴隷を積み込むミッションのもとで行なわれる“奴隷テトリス”だ。船倉の断面図に、まさにテトリスのブロックのような奴隷が落ちてきて、回転させたりしながらなるべく隙間なく積み上げていくミニゲームである。
|
|
「人種差別的だ」、「子どもにやらせるものではない」など、このミニゲームに決して少なくない非難の声がネット上で巻き起こったこともあり、本作を手がけるデベロッパー、Serious Gamesは先頃、この“奴隷テトリス”を除いた修正版を改めて再リリースしたのだ。その際、同社代表のサイモン・ニールセン氏は長い釈明文を寄せており、ゲーム情報サイト「Games Industry」の記事ではその全文を掲載している。
■同社「我々はこれまで以上に閉鎖された社会に向かっている」
同社代表はこのミニゲームで気分を害した人々に謝罪すると共に、この“奴隷テトリス”が決してゲームの重要な部分ではないことを強調している。したがってこの部分が問題になるのであれば、削除した修正版を出すことにやぶさかではなかったということだ。
配慮が欠けていたことについては素直に謝罪しているものの、これほど長い文章を寄せたということは同社にもいくつかの主張があるからにほかならない。奴隷貿易は過去に実際にあった歴史上の出来事であり、このゲームによりそれがいかに非人間的なものであったのかが改めて理解できるはずだという。確かに、奴隷を“積荷”として扱い効率的に船倉に収納するノウハウを記した当時の史料などは残っていることから、この“奴隷テトリス”のミニゲームにも歴史教育の側面がまったくないわけではないだろう。
長い釈明文では、ゲームの内容に直接関係がないと思える社会的な広い観点からも、いくつかの指摘がなされていて興味深い。その中には今のネット社会の閉鎖性に警鐘を鳴らす主張も含まれているのかもしれない。
|
|
「我々はこれまで以上に閉鎖された社会に向かって進んでいます。そこでは気分を害するものや物議を醸すものは一切望まれていません。そういうものはメインのテーマよりも、人物攻撃などに焦点を当てた抗議を引き起こし、オープンに話し合うことができなくなるのです」(サイモン・ニールセン氏)
ゲームの話題から論点は大きく膨らみ社会批評にまで及んでしまった同社の釈明。論点をズラしていると受け止められかねなくもないが、少し考えさせられる部分もあると感じた次第だ。
(文/仲田しんじ)
【参考】
・Games Industry
http://www.gamesindustry.biz/articles/2015-09-03-serious-games-pulls-controversial-slave-content-from-steam
|
|
|
|
Copyright(C) 2024 株式会社サイゾー 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。
新たな寿司モルカーお披露目(写真:ORICON NEWS)10
逆に「PS5 Pro、欲しいかも」と思った人の思考回路 みんな高いというけれど……(写真:ITmedia NEWS)56