出場停止勧告を受けたロシア陸上界の果てしない腐敗

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2015年11月10日 17:21  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

 世界のスポーツ界に衝撃が走った。ドーピング疑惑を調査していた委員会が、ロシアの陸上選手をオリンピックも含む国際競技会から出場停止処分にするよう勧告したのだ。世界反ドーピング機関(WADA)の独立委員会は昨日、最新の調査報告書を発表し、ロシアのアスリートと検査機関による国家ぐるみのドーピングと隠蔽の実態を告発した。


 報告書は、ドーピングを行っていた可能性があるロシアの選手たちが競技に参加したことで、2012年のロンドンオリンピックは「破壊された」とロシア陸上界を厳しく批判。また国際陸上競技連盟(IAAF)の「組織的な怠慢」もドーピング検査の正確性の妨げになったと指摘する。


 元WADA会長のディック・パウンドが率いる同委員会は、選手たちから採取した1417の検体を意図的に破壊したとして、モスクワのドーピング研究所からWADAの公認を取り消すよう勧告。さらにロンドンオリンピック女子800メートルの金メダリスト、マリヤ・ザビノワらロシアの陸上選手5人の永久資格停止処分を求めた。


ドーピングをさせて礼金を取っていた当局


 IAAFのセバスチャン・コー会長は電子メールによる声明のなかで、報告書の内容を「憂慮すべきもの」とし、全ロシア陸上競技連盟(ARAF)への制裁を検討するプロセスに着手したと述べた。


 ARAFとロシア・アンチ・ドーピング機構(RUSADA)からのコメントは得られなかった。


 英BBCニュースによると、委員会が調査に着手したきっかけは、ドイツの公共放送ARDがドーピングと賄賂の蔓延の実態を報じたこと。ARDは、ロシア人選手の最大99パーセントがドーピングを行なっていたこと、またロシア当局は禁止薬物を支給し、陽性の検査結果を隠蔽する引き換えに選手から金を受け取っていたことを暴露していた。


 陸上界は以前からたびたびドーピングの疑いをかけられており、批判が殺到していた。8月には、ARDと英サンデー・タイムズ紙が、2001〜2012年にかけての血液検査の結果から、ドーピング違反が疑われる選手が800人以上いるのではないかと報じたばかり。


 今回の告発は、IAAFから流出した大量の血液検査データに基づいている。そのIAAFは、「疑わしい血液検査結果を追求する義務を怠った」とするARDやサンデー・タイムズの批判を否定している。


FIFAの腐敗と比べても桁違いに大きい


 11月はじめには、8月にIAAF会長の座をセバスチャン・コーに譲ったラミーヌ・ディアックと幹部数名が、ロシアの陸上競技連盟から約100万ユーロ(110万ドル)を受け取り、陽性のドーピング検査結果を隠蔽した容疑で、フランス警察による取り調べを受けていた。


 ディアックは国際オリンピック委員会(IOC)の名誉会員であるため、IOCの倫理委員会は9日、ディアックを名誉会員から一時的に除名することを進言した。


 これとは別に、IAAFの倫理委員会は、IAAFの倫理規定に対して複数の違反を犯したとして、ディアックの息子ら4人の懲戒手続きを開始している。


 WADAの調査報告書に先立ち、共著者の1人はサンデー・タイムズ紙に対して、ロシア陸上界の腐敗ぶりは国際サッカー連盟(FIFA)のそれとは「桁違いだ」と語っていた。


 FIFAについて伝えられる腐敗は幹部の懐は肥やしても、試合の結果には影響しなかったとみられるのに対し、「今回のケースでは試合の結果も大きく左右していたかもしれない」と、スポーツ専門の弁護士リチャード・マクラレンは言う。


 コーは陸上界への信頼を取り戻すために努力するとロイター通信に語った。同時に、ディアックらに疑われている汚職については何も知らなかったと関係を否定した。




コナー・ギャフィー


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