『少女』は映画化もされた『告白』や、ドラマ化された『Nのために』『夜行観覧車』などの作品で知られる湊が2009年に発表した作品。心に闇を抱え、「人が死ぬ瞬間」を見たいという欲望を持つ親友同士の女子高生・桜井由紀と草野敦子の夏休みが、それぞれの視点で描かれる。
小児科病棟でボランティアをし、「死」の瞬間を目撃するために死期の迫る少年たちと仲良くなる由紀役を演じるのは本田翼。痴呆症の祖母から左手に一生消えない傷を負わされて憎しみを抱いているという役どころだ。陰湿ないじめを受け、人が死ぬ瞬間を見れば生きる勇気を持てるのではないかという想いを抱きながら老人ホームでボランティアをする敦子役を山本美月が演じる。
撮影現場を訪れた湊は、本田と山本について「『少女』を再読すると、本田さんと山本さん、2人の顔が浮かんでくる程ピッタリ!」と太鼓判を押している。メガホンを取るのは、『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』『繕い裁つ人』などの三島有紀子。
■本田翼のコメント
映画出演のお話をいただいてから原作を読んだのですが、凄く面白くて…!これまで私が演じてきた役は、明るいキャラクターが多かったので、由紀の様な役柄は正直少し不安だったのですが、「チャンスだ!」と思いました。湊先生が現場にいらした時に、「由紀にぴったり」と言ってくださって、凄く嬉しかったです。
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三島監督は、エネルギー溢れる監督でした。撮影中は毎日、監督から“挑戦状”を貰っている感覚(笑)。結構難しい“挑戦状”を受け取ることもあって、監督のおっしゃっていることを上手く飲み込めない時は、とても苦しくて「どうしたら監督と同じ方向を向けるんだろう」と悩ましく思っていました。1ヵ月弱の撮影期間でしたが、毎日が物凄く濃厚で…「あれ、これって今日の出来事だっけ…!?」と分からなくなる程でした。
■山本美月のコメント
私が演じさせていただいた敦子は、感情の起伏が大きい子だと台本を読んで感じました。これまで明るいキャラクターを演じさせていただくことが多かったので、色々な感情を表現することに、凄くプレッシャーを感じていました。
個人的に、ミステリー作品が大好きなのですが、この「少女」という作品は、ミステリー要素の中に、人間味を強く感じる作品。楽しみながら演じることが出来ました。
本田さんとは何度か共演させていただいているのですが、ここまでしっかりと一緒に演じるのは初めてでした。いい意味で「マイペース」というお話を聞いていたので、どんな感じなのかな?と思っていました(笑)が、現場では色々な話をしたり、待ち時間にゲームをしたりして楽しく過ごせました。
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■三島有紀子監督のコメント
湊かなえさんの描く“毒”が大好物です。それに女子の17歳を描きたいというのが始まりです。17歳というのは、非常に自分勝手な時期で、どこにぶつけて良いのか分からないエネルギーに溢れ、それでいて“死”と背中合わせで、当人達からしたら、世間で言われる“キラキラと輝いている時期”ではけっしてなく、大きな閉塞感の中で生きていると思います。原作には、自分勝手さと閉塞感がしっかりと描かれていて、登場人物のキャラクターも個性的で、何より全体を通しての疾走感がありました。その三つを私なりに解釈して作品作りを目指しました。
本田翼さん、山本美月さんという、今とても輝いている、未来有る女優のお二人の今を映像に残したいという欲求がありました。この作品では、彼女たちがこれまで開けたことのない扉をどれだけ開けてあげられるのか…ということが使命だと思っています。
本田さんは、これまで明るいキャラクターを演じられることが多かったようですが、じっくりみるとどこか「怒りの感情」を秘めた表情を感じられることがありました。そこをしっかり前面に押し出すことで、本人が映像をみて「怖い!」と言ってしまうくらい、三白眼ベースの知的で繊細な“由紀”が出来上がったと思います。
山本さんは、とても気を遣う、細かいところまで周囲を見ている方。であって、根の部分は明るくて男前なので、素で“敦子”を演じられるのではないかと思っていました。作品では、人間の脆さを表現しながら、かっこいい敦子が出来上がりました。 お二人に、丁寧に演じてもらうことを一番に心がけました。
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現場に伺った際、クライマックスのシーン撮影を拝見しました。そこからどんどん妄想が膨らんでいって、映画の完成がとても楽しみになりました。本田翼さんの演じた「由紀」というキャラクターは、誰よりも強くて、誰よりも弱い…無理をして強さを押し出している女の子です。最初に本田さんが演じると聞いた時から、「ぴったり!」だと思っていました。
山本美月さん演じる「敦子」は、「由紀」とは反対に本当は強いけれど、一見ふわふわした感じで…弱さの中に自分を隠している子。山本さんのイメージとも相まって、敦子に合っているなと感じました。「少女」を再読すると、お2人のイメージをあてはめながら読んでしまう程です。