雑誌『VERY』が良妻賢母プレイをやめた……!?

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2019年12月20日 13:02  MAMApicks

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光文社の30代ママに人気の雑誌『VERY』が2020年1月号から新しくなった。2016年10月号から表紙を飾った「タキマキ」こと滝沢眞規子に代わり、「みっこ」こと矢野未希子が登場。誌面で「VERY新世代ママ」や「30歳の記念」と書かれているところを見ると、2020年に平成元年生まれはみな30歳になる、その節目に刷新をはかったのだろう。


VERYはカバーモデルが井川遥だった頃から、チラチラと立ち読みをしていた気になる存在だった。だが、新生VERYは……私のワーママ友も言っていたが……なんか、物足りないのだ。

昭和54年(1979年)に生まれ、ファッションはUNIQLOメインの私はターゲット外なのかもしれない。しかしな、鼻につくほどの自己顕示欲と、良き妻・良き母・良き女を諦めきれないしぶとさと、キラキラファッションのウラに垣間見える泥臭い「社会への反骨精神」が、私は嫌いじゃなかった。

例えば2018年7月号の「気持ちも、体調も、オシャレも、誰もがギリギリのところで頑張ってる働くお母さんはもっとハッピーになっていい!」を書店で見かけて涙腺が決壊したし、2018年10月号「VERY世代は結局“着やせ力”にお金を払う!」の身もフタもなさに笑い、2019年9月号「子育てに疲れて見えない“カジュアル”の作り方」は即読みした。

また、2019年1月号の企画である「『きちんと家のことをやるなら働いてもいいよ』と将来息子がパートナーに言わないために今からできること」は、家における母親の立場を白日にさらすことで見直しを問い、母親たちをザワつかせたのだ。専業主婦・ワーママ関係なく共感を得て、近年のファッション誌にはない、女性の人生応援誌である地位を確固たるものにしたと思っている。

旧VERYは、見た目に金をかけまくっているけれど、話してみたら意外と分かり合える骨太系ママ友って感じだったのだ。

■過剰なまでの良妻賢母ブランディングに徹したタキマキ
女性から支持を得るには何事も「共感」と、手が届きそうで届かない距離の「憧れ」が必要だ。雑誌のアイコンとなるカバーモデルには、それらのよき塩梅が求められる。

旧VERYで約3年間カバーモデルを務めたタキマキは、11歳年上の夫と3人の子どもと豪邸で暮らすセレブ妻で、家族と歩いているところを同誌のライターからスカウトされたのだという。

タキマキのInstagramを見れば、花(いや、木!)を生けたり、手料理をセッティングするリア充妻な様子、子どもとの仲睦まじさが匂うリア充母の様子が充満している。誌面からも家族円満感が漂い、膨満感をえた人もいるだろう。

でもなぜ、ここまで良妻賢母を強調せねばならないのか。
それは2010年当時、メイン購読者であった専業主婦層から「セレブ」という憧れと、「典型の主婦の生き方」で共感を集めるためだと思う。

年上の男性と結婚し、主婦となり、子を生み、子育てがひと段落したらパートを始める。このタキマキがなぞってきたライフステージは、昭和後期から平成をぶちぬく専業主婦像そのものだ。必然的に、武器にするなら良妻賢母だ。

そしてセレブといっても選ばれる側にある「不自由さ」――半歩下がって夫を立て、子の援護にまわる縁の下の力持ち的役割――を私たちと同じく背負っていると錯覚させてくれた(詰めているお弁当のおかずはローストビーフだが)。

だから、タキマキは夫のことを「主人」と呼び、自分はあくまで控えの「奥さん」というスタンスを崩さなかった。

だが、購買層はじわじわワーキングマザーが増えていく。2013年で約4割が、2018年では約6割が有職者になり、年収600万円以上の読者が25%を超えている。
※同誌「VERY的 ワーママ白書2018」より
https://veryweb.jp/life/22952/

とくれば、読者は夫の金で買ってもらう女から、自分で買える女へと移る。読者の憧れは飼われているセレブ専業主婦から、経済力と家族という両方の「基盤」を持ち、自らの足で歩いていく女性へと移ったのではないか。

タキマキ、ついに古い女性像になったか……と思いきや、彼女はとっくに素人奥さんモデルを卒業し、プロ意識のある「バリバリ稼ぐワーママ」というキラキラロールモデルを体現していたのである。タキマキ……こわい人! ちなみに2019年のインスタでは「主人」から「夫」へと表記が変わっている。

ほほう、次は稼ぐ女の実業家プレイなどを見せていただけるのかな……と思っていたら、2019年10月号でタキマキ卒業が発表された。誌面の卒業メッセージでは夫を指す言葉は「主人」に戻っている……え、回想が入ったメッセージだったから?いやまさか、タキマキは古い価値観を持つ女のアイコンとして引退することで、VERYから古さを抜き取っていったのか……? 深読みは止まらない。

■新生VERYは、何プレイ?
良妻賢母を脱ぎ捨てた新生VERYは次に何を持ってくるのか。カバーモデル「みっこ」はいわゆるDINKsで子どもはいない(DINKsという言葉をひさしぶりに見た)。

しかし、モデル勢はおおかた子ありといったところを見ると、ターゲットは「子あり女性」から「家庭アリ女性」へと拡大した模様。人口ボリューム減のわりに嗜好が多様化するムズカしい若年層を確保しようとする気概がうかがえる。

初の特集は、「ママこそもっとポジティブに!ロジカルに!新年、めざしたいのはオシャレの効率化」……うーむ、昭和生まれの私にはスマートすぎるかも。私は効率化より、「オシャレに見える最低ラインを超える5つのルール!」なんかが知りたいぞ。

それに女性ファッション誌オハコの日記的着回し特集「12月20日は旦那さんとランチデート♪(というシチュエーションを想定したコーデ+ロケのやつ)」が登場している。この手の企画、意図的に避けていた気がしてたのだが……。

次は「ある日突然爆発!なんてことにならないために『30代突発的離婚クライシス」のやりすごしかた」……いい! でも妻側がやりすごすのか……2014年にも似た企画があったけど、まだまだモラ夫は蔓延している。

というわけで、無理やりプレイ名をつけるとすれば、「初心者プレイ(さび抜き)」か。少なくとも私にはアドレナリンを伴う共感が足りない……やはりターゲットとされていない。

雑誌づくりが難しいといわれる現在、私たちは突き抜けたファインプレイを見たがっているのではないか。妻であり、母であり、女であり、時に仕事人である私たちは、その両立(四立)をのぞみつつ、けっこう諦めているフシがある。

そんなリアルをよそに、いつなんどきも過剰にビジュアルを気にする同誌の文化をフィクションとして楽しむ。たまに出現する泥臭い母親のホンネには手ばなしで共感し、その雑誌を読む・買うことで「属する」欲求(マズローでいう帰属欲求)を満たしていたのではないか。

新生VERYは引き続き今尾朝子氏が編集長を務めているので、祝賀ムードが落ち着けば、これから深度を増していく可能性はある。そしてタキマキは来春『VERY NAVY』という媒体に戻ってくるらしいから、新しいプレイが見られるかもしれない。私はターゲット外から、続きをそっと見守ろう。

斎藤貴美子
コピーライター。得意分野は美容・ファッション。日本酒にハマり、Instagramの#SAKEISAWESOMEkimikoで日本酒の新しい切り口とコピーを思案中(日本語&つたない英語)。これからの家族旅行は酒蔵見学。二児の母。

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  • STORYの一般人主婦モデルが旦那の稼ぎで着飾ってても、この程度と。鼻で笑うのが楽しかったなとある美容院で。表紙がまだ清原の元嫁だった頃の話。
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