【インタビュー】進化を続ける山下智久の“いま”「勝手に闘志を燃やしている」

0

2023年09月12日 07:51  cinemacafe.net

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

cinemacafe.net

山下智久「神の雫/Drops of God」/photo:You Ishii
2000年代にワインブームを日本で再燃させた伝説的漫画「神の雫」が、国際連続ドラマのHuluオリジナル「神の雫/Drops of God」として、9月15日(金)よりHuluで独占配信される。

原作の主人公・神咲雫をフランス人女性カミーユに置き換えるという大胆なアレンジがなされた本ドラマでは、もうひとりの主人公・一流ワイン評論家の遠峰一青との、カミーユの父の遺産をかけたワインバトルが華やかに展開される。フランス、日本、イタリアと国を横断して描かれる国際ドラマならではのスケール感が、独特な世界観に没入させてくれる。

そして、要となる遠峰一青を演じるのが山下智久だ。これまでいくつもの国内外の作品に携わった山下さんだが、海外ドラマでは初主演を飾ることになった。2021年8月にフランスでクランクインし、その後、各国へ渡りながら約10か月に及ぶ撮影を実施した山下さんは、充実の表情でインタビューに応えてくれた。

人気の高い原作の実写映像化へ臨むための高い意識からはじまり、役を深めるための手段、さらにガストロノミー(美食学)の世界を描いた本作にかけ、山下さんの最近の「美食」事情まで、多面的にいまの山下さんを見つめる。

国際色豊かな現場「本当にいいチーム」

――国内外で人気の高い「神の雫」を国際連続ドラマ化し、山下さんは海外ドラマ初主演となりました。オファーがきたときは、どのような気持ちになりましたか?

うれしかった部分もありますし、実写化するときは原作のファンの方がたくさんいらっしゃるので、そういう意味ではプレッシャーと緊張感もすごくありました。ただ、ドラマの脚本を読んだとき「これは漫画『神の雫』のDNAを持った別の作品だ」と理解したんです。そこからは原作へのリスペクトは忘れないようにしつつも、脚本の世界観に忠実に掘り下げていこう、と意識が向くようになりました。

――国際色豊かな現場は、多言語が飛び交うような感じでしたか?

現場はすごく和気あいあいとしていましたね。監督はイスラエルの方ですけど英語はほぼネイティブに近い感じなので、基本は英語でやりとりしていました。監督からは、演技についてがっつり指導をされる感じではなく、「今、一青はこういう状況でこういう感じだと思うんだけど、それでやってみてもらっていいかな?」という感じで進めていっていました。

脚本家の方も何人かいらっしゃって、本当に皆さん、毎日練りに練って考えに考えて真剣に取り組んでいる熱があるんです。それがどんどんこっちにも伝わってきて。だからこそ、ぎりぎりまでセリフが変わる現場でもありました。一青が生きていた感じがすごくありましたし、新鮮な環境だったので、僕もとにかく楽しもうと思ってやっていましたね。監督もすべての時間をここに費やしてくださっていたし、本当にいいチームでした。

――ワインがもうひとりの主人公とも言えるストーリーですが、山下さんは本作きっかけでお好きになったとか?

そうなんです。作品がきっかけで勉強して好きになりました。いろいろなワインをピンからキリまでちゃんと飲んでおかないと、と思ったので、もう…いくら使ったんだろう、って感じです(笑)。

――コストのかかる役作りでもあったんですね(笑)。飲んでみて発見はありましたか?

ありがたいことに、ものすごく高いワインも飲ませてもらったりしたんです。もともとは「高い=おいしくて当たり前」という気持ちがあったんですけど、作り手さんの気持ちや思いを感じながら飲むと、より深みが出るものだとわかりました。

一方で、安くてもめちゃくちゃおいしいワインもいっぱいあるんですよね。自分の好みは、飲んでいくうちにわかっていったので、その感覚はちょっとアートに近いかなと思いました。アートも見ていくうちに自分の好みが見えてくるじゃないですか。その背景も含めてロマンや哲学があったりするので、大人の趣味にはいいかもしれない、という発見もありましたね。



アクティングコーチは「自分ひとりで考えるよりも幅が広がる」

――ワインの知識を深めていくこと以外で、役作りでされたことはありましたか?

一青のライバルとなるカミーユは、人並み外れた味覚や嗅覚があるという特殊な能力を持っているんです。なので、監督と「一青は味覚、嗅覚を最大限研ぎ澄ますことをするべきだよ」という話になりました。痩せると飢餓状態になるから、味や香りにすごい敏感になるんですよね。だから、カロリーをほぼ摂らないようにして、めちゃくちゃ痩せました。何事もやるとなったらいろいろなものが見えなくなって、やりすぎてしまうタイプなので死にそうになりましたけど(笑)。命がけでした。

あとは今回、役を深めるために、アメリカ人のアクティングコーチの方に指導をお願いしました。

――アクティングコーチとは、どのような役割なんですか?

簡単に説明すると、役者に演技指導を行う専門家です。台本を送って、そのシーンをコーチに解析してもらう、という形なんです。コーチの視点で「この部分はこういった心情だから、ちょっとこんな雰囲気でやってみて」と提案をしてもらえるです。例えば、「“愛している”という言葉を“殺したい”という気持ちで言ってみて」とか。自分の演技の幅をすごく広げてくれる存在なんです。チューニングしていく過程は、やっていてすごく面白かったですね。

――アクティングコーチをつけるのは、今回が初めてで?

同じくHuluオリジナル「THE HEAD」をやったときに、現場にアクティングコーチが来てくれていました。それが初めての経験でした。自分ひとりで考えるよりも幅が広がるから、大事なことだなと思います。

――日本だと、まだあまり浸透していない文化でもありますよね。

そうかもしれません。日本にもおそらくアクティングコーチはいらっしゃるとは思うんですけど、まだあまり定着していない感じですよね。僕がまだ出会えていないだけかもしれないけど…。演技の広がり、深みが出てくると思うので、すごくいい文化だと思っています。



ライバルに年齢は関係なし「勝手に闘志を燃やしています」

――カミーユと遠峰はライバルに当たりますが、山下さんにとって“ライバル”に当たる存在はいますか?

ライバルは、その都度、その都度やっぱりいっぱいいます。ライバル的な存在がいると、自分がより強くなるとは思います。「負けないぞ」という気持ちはすごい大事だと思うんです。ライバルがいてくれるのは、ある意味すごく幸せなことだなと思いますね。

――どんなときに「ライバルかも」と相手を意識するんですか?

昔は年代が近い、同年代の人をライバルというふうに思うことが多かったかな。けど、今は年齢は関係ないです。自分がなりたいと思っている存在に近いようなことをしている人に対しては、まだまだ全然追いつけていないという気持ちで、勝手に闘志を燃やしています。

――ライバルに奮起することもそうですし、ほかにも山下さんがご自身でステップアップを実感するために意識していることは何でしょう?

自分を高めていくこと、自分の感覚をグローバルスタンダードに持っていくのは、すごく大事だと思っています。自分の知識や経験が増えたりすると、波長が合う人が変わってくるじゃないですか。そうやってどんどん高め合っていく作業が、たぶん一番近道なのかなと思います。日本の方でも、海外の方でも、一流の人たちの話を見たり、聞いたり、読んだりして、自分の感覚値を上げていく作業をしています。

やっぱり内を広げていかないといけないな、とすごく感じているんですよね。これまで外に外に意識が向いていたんだけど、今はどちらかと言うと自分の内の質量を、どんどん大きくしていきたいなと思っています。

――最後に、最近の山下さんについてもいくつか教えてください。カミーユは父との「ふたりだけの場所」を持っていましたが、山下さんにとっての特別な場所、落ち着けるような場所はどこになりますか?

僕は海が好きですね。海は定期的に見に行きたくなるんです。国内でも海外でも、どこというわけじゃないんですけど。やっぱり広がりとあの音を聴いたり感じたりすると、すごい心が楽になるから。ヒーリング効果があるのかなあと思いますね。直近だと、近いのでお台場近辺の海を見ました。

――ありがとうございます。本作の世界観・ガストロノミー(美食学)にかけて、最近、山下さんが感じた「美食」エピソードを知りたいです。

ええー、何だろうな? この間、コンサートで名古屋に行って、ひつまぶしを食べたらすごくおいしかった(笑)。

――食はツアーの楽しみでもありますよね。ちなみに、自作の美食レシピもありますか?

美食というほどでもないし、最近全然やっていないですけど好きなレシピはあります! 鶏ひき肉と玉ねぎを塩コショウで炒めて、それをご飯の上にのっけて、卵かけごはんにするというやつ。玉ねぎと一緒に炒めるとくさりにくいですし、冷蔵庫に入れておくと食べたいときに食べられるのでいいですよ。たんぱく質もしっかり摂れるし、安いし、簡単だし、お気に入りのレシピです。



(text:赤山恭子/photo:You Ishii)
    ニュース設定