上川隆也×甲本雅裕インタビュー『遺留捜査』SPが「ジョーカーを切ってきました」

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2023年09月21日 07:01  TVerプラス

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上川隆也さん主演の人気ドラマシリーズ『遺留捜査』(テレビ朝日系)の新作スペシャルが、9月21日(木)20時から放送、及び民放公式テレビ配信サービス「TVer」にて無料リアルタイム配信される。

2011年よりスタートし、現在第7シーズンまで放送されている大人気ドラマ。空気を読まない風変わりな刑事・糸村聡(上川)は、事件現場に残された遺留品を元に謎を解き明かします。事件解決後は、関係者に向けて「3分だけ時間を下さい」と、遺留品から汲み取った被害者の思いや容疑者の細かな動機に触れていく……。

本スペシャルで目玉となっているのが、警視庁科学捜査研究所係官・村木繁役の甲本雅裕さんが、一人二役に挑戦していることです。甲本さんは、村木と事件に関係するガラス職人・相良克典を演じます。

今回、上川さんと甲本さんにインタビューを行いました。仲睦まじい2人のかけあいにも注目しつつご覧ください。

甲本の一人二役挑戦で弊害が!?

――昨夏のレギュラー放送以来の復活です。まずその思いを聞かせてください。

上川:2022年夏で僕らは一度ピリオドを打ったんですが、今回、再びスペシャルというかたちで糸村聡とまた会えるのは「嬉しい」以外の何ものでもありませんでした。

甲本:全く右(上川)と同じです。

上川:ちゃんと自分の言葉で喋りなさいよ!

――(笑)。

甲本:それ以外ないんだよ!(笑)。純粋に嬉しいです。もちろんそれぞれが何かを持ってくることはあるんですが、いつも現場でしか生まれないものを感じつつ(物語を)作っているので、“何ができるのかな”とワクワクしていました。

――今回、甲本さんが一人二役に挑戦されましたね。

上川:(甲本が)村木さんではなく、相良さんとして糸村と相対したとき、珍しく甲本が笑いを止めることができなくなってしまったんです。この作品で12年、糸村と村木さんとして顔を合わせて芝居をしてきたのにも関わらず、今回に限っては何回テストをやっても、何回本番を重ねてもOKの後で笑うんです。

甲本:ちょっと待って! 思い出しただけでも笑っちゃう(笑)。12年間、村木を通して糸村さんを見てきたので慣れてはいたんですが、初めて村木ではない役で糸村という男と出会ったとき、“こんなに変人だったんだ”と思って! 

――(笑)。

甲本:もうありえないぐらいおかしな人だったんですよ。だから、台詞を言うにも笑えてきちゃって。改めて“糸村さんって、こんなにおかしな人だったんだな!”と感じた新鮮なスペシャルでした。

上川:(笑いが止まらないのは)失礼ですよね?

甲本:(笑)。いやいやいや、アンタおかしいよ! でも、その男が12年この番組を率いて作品を紡いできていることが、スゴいなと思いました。

――上川さんは、二役を演じる甲本さんを見て、どんなことを思いましたか?

上川:『遺留捜査』よりも前からの長い付き合いで、いわゆる甲本の“演じられる幅の広さ”は、その時ごとに、感心や驚きを伴いながら拝見していました。例えば、(甲本は)村木さんのような、どこか愛らしくて憎めないけれども、人のことは言えない変人であるとか(笑)、一方で、とんでもない毒をはらんだ人間も闇深く演じることができる……。今回の役柄に関しても、彼なりにきっちりと構築して、僕が今まで出会ったことのない人物と相まみえることになるんだろうな、とは思っていました。実際、それは、その通りになりました。

――今作では、岡山県・鹿久居島(かくいじま)でロケを実施されました。甲本さんは、地元・岡山でお芝居することに関して、どういうお気持ちで臨まれたのでしょうか?

甲本:役者として立てる場があるのは、どこに行っても気持ちが変わらないんですが、やっぱり自分が生まれた県ではありますし、安心感や逆に“恥ずかしいことできないぞ”という思いが少しありますね。

――本作を演じていての印象的なシーンを教えてください。

上川:決して大きなシーンではないんですが、4月から、自転車に乗るにあたってヘルメットの着用が努力義務になったじゃないですか。糸村さんは警察官なので、それに則ってヘルメットを着用しているのですが、そうしたときに、この作品が、時局の流れに乗った「オンタイムのドラマである」と実感しました。今後も、彼が自らのスタイルを貫きながらも変化を受け入れていく姿を、物語が続く限りお届けできるのではないか、と思っています。

甲本:不思議なんですが、ヘルメットをかぶっても糸村さんは糸村さんなんだよな〜。上川くんの言う通り、彼の人間性的に、ヘルメットをかぶるのは分かるんですが、撮影前は、“違和感があるんじゃないだろうか”と思ったんですよ。でも、いざ見たときに“なんでこんなに馴染んでいるんだろう”という感覚になりましたね。似合ってたよ!

上川:あ、ありがとうございます。照れますね。

――(笑)。お二人のアドリブ合戦も魅力のひとつです。今回、アドリブはあったのでしょうか?

甲本:アドリブが基本ではないので、効果的に必要ならば、ということでやっているんですが、今回、二役やるので、どこかで違いを表現したいと思っちゃって……。僕で言うと、村木(の演技やアドリブ)がより過剰になってしまいました。

そもそも、いつも崩壊に向かっているのが村木なので、“どう崩壊するか”を、今回より過剰にやったような感じでして。そういうところは抑えなきゃと思うんですが、村木を与えられた瞬間から、足かせも全部取っ払われちゃって、もう壊れまくっています。

上川:(村木との)科捜研のシーンは、多くの場合、一発で撮るんです。スタッフさんの動きの確認や軽い確認事項だけを決めて、すぐに回してしまうので、2人の中で生まれる“誰も知らないリアクション”がその場で発生するんです。だから、アドリブというよりは、ライブ感が強いシーンだと受け止めていただく方が、より正しいのかなと思っています。

甲本:笑いそうになるのを我慢する姿を、みなさんに見ていただく感じですね。たまに “ちょっと待って。上川くん、ヤバいから!”と思うことがあります。

時代が変わっても“変わらない”糸村

――本作の主人公・糸村の魅力は、どんなところにあると思いますか?

甲本:本人はどう思っているか分からないですが、上川くんは、糸村さんの中にいろいろなものをたくさん入れ込んで、現場で爆発させているんだな、と触れるごとに感じています。村木を演じる僕も「あ、負けられないな」という気持ちになれるし、相乗効果として上がっていけているなと。

あと、人間ってどこかほころびがありますが、ある種、ほころびの固まりのような糸村さんを、上川くんが“1人の人間”として作り上げる姿が、すごく魅力的だなと思っていますね。

上川:2011年から始まったこの物語をイチから見直していくと、(糸村も)全く変わっていないわけではないと思うんですね。彼は彼なりに環境や経験をその身に積み重ねながら生きているとは思うんですが、ただ、根ざしているものは、変わっていないと思うんです。

「遺留品にこだわる」という点もそうかもしれませんが、何をモチベーションにして、何を行動原理としているのかが間違いなくあるからこそ、もしかしたら視聴者の方にも安心してご覧いただける物語・キャラクターになっているのかもしれません。

毎回引き合いに出すたびに恐縮するのですが、世俗から離れているけれど憎めない『男はつらいよ』の寅さんが時間を経ても愛され続けたように、(糸村も)“変わらないキャラクター”として受け入れられているのではないか、と思います。

――放送開始から12年。ここまで『遺留捜査』が愛された理由は、どこにあると思いますか?

甲本:ここにいる2人を含め、関わってる人たちが見てくださる方以上に「待っていたから」じゃないかなという気がします。喜びを感じながらやっていることが、少なからず、視聴者の方に伝わって、 長く見ていただけているのかなと。だから僕らはいつも、(作品を通して)“ドキドキしたり、ソワソワしたり、ワクワクしていいんだよね?”“慣れる必要もないんだよね?”と思っています。

上川:的を射ているかは分からないですが、今の時代、迷子に声をかけることがはばかられる、という話を聞いたことがあるんですね。声をかける側も不審者扱いになるのを危ぶむし、親御さんも、そうしたことすらも排除しないとお子さんを守れない。

それはこの現状においては正しい対応なのですが、どこかで人と人との距離が乾燥している感じがすると言いますか……。でも、糸村にとっては、そんなことお構いなしなんです。自分が興味を持った遺留品から、人間関係やその背景を紡いで、いかに残された人たちにその思いを届けるかのみに専念している。しがらみすら打ち壊しながら進んでいくこともあると思うんですね。

甲本:(小声で)あれは困ってるんだよ。

上川:(笑)。だからこそたどり着ける、温もりや触れ合いがそこにはあって。今、そうしたことがやりづらい世の中だからこそ、こういう言い方が適切か分かりませんが、みなさんにとってある種の人間関係におけるファンタジーというか。“こうであってほしい”ことや、現実には得難い何かがそこに描かれることへの「渇望」なのかなと、どこかで感じていました。

(主題歌を歌う)小田和正さんの歌の中で毎回「こうであったら良かった過去」が描かれていますが、みなさんもどこかで憧憬(どうけい)の思いを抱いているのかなと思っています。

――最後に本作の見どころを教えてください。

上川:まずは、(本作の舞台である)京都とはまた違う岡山の島々の風景ですね。あとは、今回『遺留捜査』が甲本雅裕を二役に据えるジョーカーを切ってきました。ひとつの物語に、全く違った役柄として登場させて、どう物語に絡んでいくのか。それは何よりの見どころだと思います。

甲本:うん。プレッシャーですね!

上川:(笑)。

甲本:上川くんの言う通り、一人二役など、いろいろなことがありますが、今までと変わらない『遺留捜査』をみなさんにお届けできたらいいな、という思いはすごくあります。

取材・文:浜瀬将樹
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