発症から数時間で失明の危機も!小柄なシニア、急な頭痛は要注意「危険な緑内障」

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2023年11月11日 11:00  週刊女性PRIME

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 激しい頭痛と吐き気に襲われ救急車で病院に運ばれ、脳卒中を疑われて検査するも、どこも異常なし。やまない吐き気に苦しんでいると、気づいたら目が見えなくなっていた―。そんな「危険な緑内障」があるという。特に、小柄で遠視の高齢女性は要注意。とっさの判断を間違えると失明することも……。

急な頭痛に要注意! 50代女性のケース

 50代女性のAさんはある日の夕方、自宅で突然、激しい頭痛や吐き気に見舞われた。脳梗塞を疑った同居家族に付き添われて救急外来を受診。

 すぐに頭部のCT検査を受けた。ところが、検査結果は異常なし。脳の問題ではないことがわかり、目が見えにくいという異常もAさんが訴えていたことから眼科を受診することになった。

 眼科医がAさんの目を調べると、Aさんの左目の眼圧がきわめて高く、目の表面に存在する角膜はパンパンにむくんでいた。そこで医師はすぐに眼圧を下げる点滴をし、レーザーによる治療が行われた。幸い、Aさんの眼圧は低下し、頭痛や吐き気の症状はおさまった。

 このときAさんの目に起こっていたのは「急性緑内障」という発作だ。

 急性緑内障は一気に眼圧が上がり、目の血流を止めてしまう危険な病気。Aさんは早期に治療を開始できたため大事に至らなかったが、脳の病気が疑われ、目の検査にたどり着かず、失明する人もいるという。

急性緑内障を起こす人は、アジア人が8割以上を占めます。これはアジア人の目の構造が急性緑内障を起こしやすいためです

 そう教えてくれたのは、アメリカの大学施設で眼科医として活躍している和田伊織先生だ。日本人にも起こりやすい急性緑内障。よく聞く緑内障とはどう違うのか。

急性緑内障は、目の中の隅角という部分が閉じることで目に栄養を運ぶ房水という水が外に排出されずにたまってしまい、目に非常に強い圧力がかかっている状態です。普通の緑内障は徐々に流れが悪くなるのに比べて、急性緑内障は出口が突然閉まってしまうので一気に眼圧が上昇します。

 血流が止まり、目の神経もどんどん傷ついていく非常に危険な状態になるのです。目の血管は脳にもつながっているので、脳の神経や血管が圧迫されることで頭痛や耐え難い吐き気が起こります

 よくある一般的な緑内障は進行がゆるやかで、数年かけて違和感に気づき眼科を受診することができるが、急性緑内障は突然眼圧が上がり、眼球周囲の神経や血管が圧迫される。

 それらにダメージが加わり続けると元に戻らないため、すぐに減圧することが必要になる。速やかに眼圧を下げる目薬や点滴を開始し、閉じてしまった水の出口を切開する。

 万が一そのような治療が間に合わなければ失明し、眼圧が高すぎて耐え難い痛みが続く場合には、最悪、眼球そのものを取り出さなければならない事態となるのだ。急性緑内障はどのような人がなりやすいのだろうか。

閉経した女性で身体が小柄で遠視の人は要注意

一般的な緑内障と急性緑内障は起こり方が違うので、一般的な緑内障の人がなりやすいというわけではありません。急性緑内障になりやすいのは隅角が閉じやすい人で、それは主に目の形に原因があるといわれています。

 例えば、視力は悪くないけれど近くの物を見るのは疲れてしまうという遠視の人は、もともと眼球の長さが短いので、眼球の中の組織が近視の人と比べてぎゅっと詰まった状態になっています。そのため隅角も閉じやすくなるのです。

 また、高齢になると白内障になりやすく、白内障になると水晶体が分厚くなります。隅角は水晶体の近くにあるので水晶体によって隅角が押されて狭くなり、閉じやすくなります

 また、女性は閉経を迎えて女性ホルモンが減少することで眼圧が上がりやすくなるといわれている。

 さらに、小柄な人は眼球も小さいので(よくいう「目の大きさ」ではなく、あくまで眼球の大きさが小さいので)、リスクがあるという。つまり、閉経した女性で、身体が小柄で遠視の人は、要注意なのだ。

 急性緑内障は、動物を用いた実験によると発症6時間後には上昇した眼圧により視神経が圧迫、障害されてダメージが残り、失明の危機に陥るといわれている。発症したらとにかく一刻も早く処置するのが大事なのだ。

急性緑内障がよく起こるのは夕方や夜です。暗い場所は瞳孔が開くことで隅角のスペースが狭くなります。また、映画館などの暗い場所で長時間、映像を見ることも引き金になることがあります。ほかにもヨガなどで頭を下げる姿勢が続く状況や、ストレスや寝不足で交感神経が優位になり、眼圧が上昇する場面でも起こりやすくなります

急性緑内障の症状としては、一般的には片目の視界のくもりや充血、鼻の根元の痛みなどのほかに、頭痛や吐き気も起こる。頭痛や吐き気は脳の異常があるときの症状とよく似ているため、脳卒中による症状と間違われやすい。

ただの疲れ目だと放置しない

 もし突然の頭痛や吐き気に襲われたときにそれが脳卒中であれば、顔や手足の動かしにくさ、言葉の出しづらさを感じることが多い。そのような症状がなく、片目の視力低下や目の周囲に激しい痛みがある場合には、急性緑内障の可能性がある。救急隊員や医師には頭痛や吐き気だけでなく、目の症状も忘れずに伝えたい。

急性緑内障は前兆として、目に違和感が出ることがあります。ほとんど片目だけに起こるので、違和感があるときは片目ずつ見え方を確認してみてください。夜にライトのまわりに光の輪が広がって見えるハロー現象や道路を歩いているときにピントが合わず車線が見えなくなるような症状は前兆の可能性があるので、ただの疲れ目だと放置しないことが大切です

【こんな人は注意!】

1・女性

閉経に伴い、女性ホルモンのエストロゲンが減ると、房水がより多く作られることで眼圧が上がりやすいといわれている。

2・シニア

高齢になると白内障になりやすくなり、白内障になると水晶体がにごって分厚くなる。すると、虹彩という目の中にあるひだが前に押し出されて隅角が狭くなりやすい。

3・遠視

遠視の人は眼球の長さが短くなるため、虹彩と角膜の間が狭くなり、隅角が閉じやすくなる。

4・小柄

小柄な人は眼球が小さく、水晶体、虹彩、角膜などの組織間が近いため、もともと隅角が狭いことが多い。

取材・文/難波安衣子 

和田伊織先生 九州大学大学院医学研究員博士課程卒。現在はアメリカのUCLA, Doheny Eye Institute, Visiting Research Fellowに所属。

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