日本代表メンバー発表で見えた課題 構造的に不足しているふたつのポジションとは

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2023年12月08日 06:31  webスポルティーバ

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 2024年元日、国立競技場で開催されるタイ代表戦の日本代表メンバー23人が以下の通り発表された。

GK
前川黛也(ヴィッセル神戸)、鈴木彩艶(シント・トロイデン)、野澤大志ブランドン(FC東京)

DF
谷口彰悟(アル・ラーヤン)、板倉滉(ボルシアMG)、森下龍矢(名古屋グランパス)、町田浩樹(ユニオン・サン・ジロワーズ)、毎熊晟矢(セレッソ大阪)、伊藤洋輝(シュツットガルト)、菅原由勢(AZ)、藤井陽也(名古屋グランパス)

MF/FW
伊東純也(スタッド・ランス)、浅野拓磨(ボーフム)、南野拓実(モナコ)、伊藤涼太郎(シント・トロイデン)、堂安律(フライブルク)、上田綺世(フェイエノールト)、田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)、奥抜侃志(ニュルンベルク)、川村拓夢(サンフレッチェ広島)、中村敬斗(スタッド・ランス)、佐野海舟(鹿島アントラーズ)、細谷真大(柏レイソル)

 11月のミャンマー戦、シリア戦に招集された選手で今回の23人から外れたのは大迫敬介、中山雄太、冨安健洋、渡辺剛、遠藤航、古橋亨梧、守田英正、川辺駿、伊藤敦樹、鎌田大地、相馬勇紀、三笘薫、前田大然、久保建英。

 1月12日からカタールで開催されるアジアカップのメンバー発表はタイ戦の後とされるが、ほぼ、今回選んだメンバーで行くのではないだろうか。そうでないと、タイ戦にこのメンバーを選んだ理由は薄れる。

 だが一方で、今回外れた選手は、正月に休みを設けていないリーグ(イングランド、スコットランド、スペイン、イタリア、ポルトガルなど)に所属する選手たちであることも事実だ。ヨーロッパリーグで勝ち上がる可能性を残しているベルギーリーグの町田、ドイツブンデスリーガの堂安は選ばれている。アジアカップに欧州のカップ戦出場組という主力級をどこまで選ぶかは見えてこない。

 欧州カップ戦の決勝トーナメントを戦う選手が、アジアカップでベスト4に残れば日程的にタイトになる。この兼ね合いをどうするか。前回は、三笘を招集したものの、日本代表に合流するやケガでイギリスに戻るという失態とも言うべき事件が起きた。三笘はベストな状態に戻るまで少なからぬ時間を費やすことになった。大一番となったヨーロッパリーグのAEKアテネ戦でも、いいパフォーマンスを発揮することができなかった。

【アジアカップをどう位置づけるか】

 アジアカップは、各大陸選手権のなかでも、上位と下位との間に最も開きある大会だ。日本のレベルアップに貢献しそうな試合は限られている。今回メンバー発表があったタイ戦も1点差の勝利ならば負けに等しい、2ランクほど差がある相手だ。欧州組がふだん、国内リーグや欧州カップ戦で対戦している相手のほうがレベルは断然高い。こうした現実と日本はどう折り合いをつけていくか。岐路に立たされているといっても言い過ぎではない。

 ここは底上げの機会と捉えるべきだろう。タイ戦と同等のメンバーでアジアカップを戦ったほうが、2024年6月から逆算すれば有効だとは筆者の意見である。

 今回、新たに加わった選手、復帰した選手は野澤、伊藤涼(初代表)、板倉、森下、藤井、奥抜、川村、中村だ。

 板倉、藤井はセンターバックで森下はサイドバック。奥抜、中村は左ウイングで、川村はセンターハーフ系だ。

 従来の日本代表を眺めたとき、必ずしも不足している箇所ではない。日本代表最大の問題は1トップと、最適解が鎌田しか見当たらない1トップ下だろう。

 まず1トップ。今回のメンバーでは上田、細谷、浅野の3人がその候補になる。古橋が不在となると、先のミャンマー戦、シリア戦で計5得点と気を吐いた上田が有力な先発候補になる。

 だが、所属のフェイエノールトでは出番に恵まれていない。出場時間はオランダリーグ207分、チャンピオンズリーグ125分の計332分間だ。計19試合消化して得点わずか1。スタメンを張るサンティアゴ・ヒメネス(メキシコ代表、計19ゴール)に大きな差をつけられている。日本代表のスタメン候補としては頼りない成績だ。確かに浮力のあるジャンプは魅力だが、ポストプレーヤーと言うわけではない。ボールを収める力はない。パスワークに絡むと言うより裏を狙うタイプだ。

 今季のJリーグで目をひく活躍をした細谷しかり。上背がなく、上田のような高さのあるヘディングもないので、1トップ下には必然的に鎌田的なポストプレーヤータイプが必要になる。将来的には浅野のように兼ウイングとしてプレーしたほうが大成するのではないかとは、筆者の見立てだ。

 浅野はポストプレーを細谷以上に不得手とする。「鎌田」なくして1トップは務まらない。そのスピードはウイングのほうが生きると見るが、ウイングは人材の宝庫だ。三笘、久保の両エースを呼ばなくても、大きな問題にはならない。9月の欧州遠征では、今回復帰した中村も戦力になることを証明している。

 今や日本サッカー界最大のストロングポイントとなったウイングと比較すると、1トップの人材難は厳しく映る。ポストプレーの得意な選手が鎌田しかいない1トップ下とのバランスも悪い。

 1トップ下の候補は、今回のメンバーでは南野、初代表の伊藤涼あたりになるが、両者とも前を向いてプレーしたいゲームメーカータイプだ。ゴールを背にしたプレーは得意とは言えない。川村は、アタッカーと言うよりMF的だ。

 ポストプレーができるセンタープレーヤーがいない。半分ほどメンバーを入れ替えてもこの傾向に変わりはない。日本サッカーが抱える構造的な問題が今回のメンバー発表を通してあらためて露呈した恰好だ。

 真ん中の高い位置にボールが収まらないとパスワークは円滑にならない。左、真ん中、右という3つある攻撃ルートのうち、2つしか機能しなければ、攻撃はバラエティに富まない。安定感も生まれない。王道を行くサッカーはできないのだ。この課題とどう向き合うか。日本代表浮沈のカギだと筆者は見る。大迫勇也の穴は埋まっていないのである。

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