「自分だけは他人なのだ」「生活音も気を遣う」。男だってつらい、“義理の両親”との微妙な関係

1

2024年02月17日 22:11  All About

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

All About

妻の両親と暮らす夫というのは、なかなか肩身が狭い。妻にとっては両親が一番大切なのだと思い知るのだ。
夫の義両親との関係に悩む妻の声は大きく聞こえてくるが、夫が妻の両親との関係に言及するケースは多いとは言えない。妻の実家近くに住んだり、同居する男性も少なくないが、そこに問題はないのだろうか。

適当に「仕事」を言い訳にする

「妻の実家が都内の一軒家で、しかもけっこう敷地が広いんです。妻はひとりっ子なので、あちらの両親は、遠慮しながらも『できれば近くに住んでもらえたら』という感じでした。

僕は仕事で出張もあるし、子どもができてからも妻の両親が近くにいれば心強い。だから敷地内に家を建てることにしました。妻の両親は穏やかなタイプで、僕たちの生活に口を挟んでくるようなことはないだろうと思って」

ユウスケさん(43歳)は、そう10年前の結婚当初を振り返る。結婚してすぐ妻は妊娠、翌年に長女が、その3年後に長男が産まれた。ふたりの子が生まれた前後、彼は出張も多く、妻の実家敷地内での別居を心地よく思っていたという。

「ところが部署が変わってこの5年、コロナの影響もあって出張が激減、ついでに残業も激減しました。在宅ワーク推奨の時期も長かった。家にいることが増えて、日頃の妻と両親の関係がよく見えてきたんです」

在宅ワークで見えてきた、妻の日常

妻は起きるなり子どもを連れて実家である敷地内の母屋へ。そのままずっと夕飯まで戻ってこない。

「あなたは仕事でしょ。邪魔しちゃ悪いからあっちに行ってると最初は言っていたんです。でもそのうち休日でも同じ行動をとるようになった。以前は休日は家族4人で過ごしていたのに、いつからこんなことになったのかわからない。気づいたらそういうことになっていたんです」

休日、目覚めると妻子はいない。実家を覗くと両親と妻子が楽しそうに団らんしている。妻が彼を呼びに来ることはない。

一緒にあっちに行くかと聞かれれば、もちろん行く気はないとしてもそれをきっかけに話し合うこともできると彼は言う。

「僕らの生活をどう思ってるの、どうしたいのと聞いたら、『両親を安心させたい』と。答えとしてズレている気がするんですが、妻はそれが最優先だと。

じゃあ、オレは? オレの存在は? と言うと『あなたは私の夫だし、子どもたちの父親だもの』と言ってからしばらく考えて『何が言いたいの?』って。

家族の時間を過ごしたいんだと言うと、『じゃあ、向こうに来る?』と。でも、あくまでも来てほしくなさそうに言うんです。そのくらいは僕だって読めますから」

子どもたちが寝ちゃったから来てと言われて、迎えに行ったことはある。義母は彼を見て、「あら、いたの?」と言った。いないと思っていただけかもしれない。

だがその発言に、彼は両親から歓迎されていないこと、妻が彼を大事に思っていないことを読み取った。

「子どもが小さいから、いますぐ離婚とはならないだろうけど、だんだん帰宅する時間が遅くなってはいますね」

寂しそうな表情でユウスケさんはそう言った。

二世帯同居は「生活音」に気を遣う

二世帯住宅で妻の両親と同居しているサトシさん(48歳)は、「お互いに気を遣うから家にいてもくつろげない」とつぶやく。

結婚して14年、12歳になるひとり娘だけは気兼ねなく暮らしているが、1階が両親、2階が自分たちとなると生活音にも気を遣う。

「そもそも二世帯住宅といっても、完全な二世帯ではないんです。2階には小さなキッチンとトイレがあるだけで風呂は1階、両親の寝室の横を通らなくてはならない。

僕は朝、シャワーを浴びるんですが、出たあとタオルを巻いてふらふらするわけにもいかないので、いちいちバスローブを羽織って2階に上がってくる。ドライヤーを使うのもテーブルです。あとから髪の毛が落ちていると妻に怒られるんだけど、だったらどこで髪を乾かせばいいんだよと言いたくなります」

両親はいい人たちで、小言ひとつ言われたことがないが、それも逆にプレッシャーになる。

以前、酔って帰宅したとき、深夜に大きな声で歌って両親が目を覚ましたと妻に怒られたのだが、両親は「気にしないで」と言うだけ。いっそからかってくれればまだ気が楽なのだが、そういう砕けたユーモアはない。

半身後ろ向きの態勢をとるハメに

「妻がみんなで外食しようと言い出すことがあるんですが、僕は家にいるときは、いつでも伏線を張って半身後ろ向きの態勢をとっています。

つまり、休日、妻が突然、そう言いだしたときに『悪い、この仕事をどうしても今日中に上司に送らないといけないんだ』と言い訳できる態勢にしてある。休日でもPCの電源を入れて、いかにも仕事をしているふうを装っておく。実際に仕事をすることはほとんどないんですが……。

娘は『じゃあパパは留守番ね。もう、昼間に仕事をしておけばいいのに』と言ってくれますが、妻は僕が行かないと言うと、ちょっとホッとしたような顔をする」

両親と娘とその娘。その4人がいちばん落ち着くのだろうとサトシさんも察している。

両親も、たまには「水入らずで行ってらっしゃい」と言ってくれてもよさそうなものだが、遠慮がちに見えて、そういう配慮はしてくれない。自分だけは「他人」なのだろうとサトシさんは感じるという。

「妻の両親もそろそろ80代。この先、介護問題も出てくるんでしょうね。自分がどこまで協力できるか自信がありません。

いっそ、家を売ってそのお金で施設に入ってくれたほうがお互いにいいような気はします。もちろん、間違っても妻にはそんなこと言えませんけどね」

妻が親を大事にしているのは、もちろんいいことだ。それはわかっていながら、サトシさんはときどき、北日本の小さな町でひっそり暮らしている両親に思いを馳せている。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

    前日のランキングへ

    ニュース設定