遠藤航がELフル出場で見せた確固たる地位 ひと皮むけてリバプールの大勝に貢献

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2024年03月08日 17:41  webスポルティーバ

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 チャンピオンズリーグ(CL)に続き、ヨーロッパリーグ(EL)も決勝トーナメント1回戦がスタートした。CLでは勝ち残っているチームのなかに日本人選手はアーセナルの冨安健洋ただひとり。その冨安も故障中でベンチから外れているので、EL勢にかかる期待はおのずと高まる。リバプールの遠藤航、スポルティングの守田英正、フライブルクの堂安律、ブライトンの三笘薫と、ベスト8入りの可能性を残すのは4人。負傷のため今季絶望と報じられる三笘を除けば3人になる。

 初戦の結果は以下のとおりとなった。

○スポルティング1−1アタランタ
○スパルタスパルタ・プラハ1−5リバプール
 ローマ4−0ブライトン
 カラバフ2−2レバークーゼン
 マルセイユ4−0ビジャレアル
 ベンフィカ2−2レンジャーズ
○フライブルク1−01-0ウェストハム
 ミラン4−2スラビア・プラハ
(左側がホーム、○は日本人選手の出場試合)

 三笘を除く3選手はすべてスタメン出場を果たした。遠藤がフルタイム。守田が84分、堂安が82分の出場だった。

 遠藤所属のリバプールはアウェーでスパルタ・プラハと対戦。結果はリバプールの大勝に終わったが、内容的には2−3ぐらいでもおかしくない白熱した試合だった。CLのラウンド16でマンチェスター・シティと対戦したコペンハーゲンがそうだったように、周辺国のレベルが上昇していることがその理由として挙げられる。

 下馬評でリバプールに次ぐ優勝候補2番手に挙げられているレバークーゼンと対戦し、ホームで引き分けたカラバフ(アゼルバイジャン)しかり。神戸、浦和、横浜FMといったJリーグの上位クラブがそこまでやれるかといえば、難しいだろう。欧州のレベルアップを痛感させる事象と言える。

 リバプールがこの試合にメンバーを落として臨んだことも輪をかけた。今週末にプレミアの首位攻防戦、マンチェスター・シティ戦を控えているためだが、そんななかで遠藤は先発した。

 アジアカップ後、クラブに戻ってから調子を崩す日本代表選手が目立つが、遠藤は別だ。充実ぶりが目に留まる。先週末のプレミアリーグ、ノッティンガム・フォレスト戦こそ、先発をジョー・ゴメス(イングランド代表)に譲ったが、アジアカップ後、チームに復帰してからそこまでは全試合でスタメンフル出場を飾っていた。ローテーションが浸透している今日のビッグクラブにおいては珍しい話だ。

【ひと皮むけた印象の遠藤】

 12月中旬まで、遠藤は危うい立場にいた。ELのグループリーグ、ユニオン・サンジロワーズに1−2で敗れた一戦では、前半で交代の憂き目に遭っている。危険な場所でボールを奪われピンチを招くなど、不安定さを露呈させていた。この先、リバプールでやっていけるのか。アジアカップに出場している間に居場所はなくなっているのではないかと危惧された。それがまるで嘘だったかのように、今では確固たる立ち位置をチームで築いている。

 この間、選手として貴重な経験を積んだ遠藤。その結果、選手としてひと皮むけた印象だ。ステイタスを高めている。

 リバプールは現在プレミアの首位だ。欧州クラブランキングでは5位にランクされる。その中心選手を務めるとなれば、日本人選手として最高位に就いたことを意味する。日本代表キャプテンのステイタスを高めたことにもなる。

 スパルタ・プラハ戦では勝利が揺るぎないものとなった終盤、リバプールベンチは大事を取って遠藤を下げるかと思った。いちおう31歳のベテランである。マンチェスター・シティとの大一番に備え、休ませるという選択もあったはずだ。ところがユルゲン・クロップ監督は、遠藤を最後までピッチに立たせた。不動の選手としての自覚を求めるかのようだった。

 堂安は4−4−2の右サイドハーフとしてウェストハム戦に臨んだ。プレーオフでは5バックのウイングバックとしてプレーしたが、この日はそれより平均ポジションにして20メートルほど高い位置で構えた。

 攻撃に絡む機会はその分だけ多かった。フライブルクは現在ブンデスリーガで9位のチームだが、そのクラスの右ウイングとしては悪いプレーではなかった。6.5〜7と評価したいところだが、欧州で上位を狙うクラブという視点に立つと物足りなく映った。

 ほしいのは躍動感だ。後半19分、ハーフウェイラインを超えたあたりでMFマキシミリアン・エッゲシュタイン(元U−21ドイツ代表)から横パスを受けると、対峙する相手の左SBエメルソン・パルミエリ(イタリア代表)を細かなステップで巧みにかわしライン際に進出した。

【堂安は対戦相手から「ほしい」と思われるプレーを】

 縦勝負に行くには絶好のシチュエーションだった。前方に大きなスペースがあるにもかかわらず、堂安は格闘技で言う半身(はんみ)の体勢で制止。じっと内の様子をうかがった。自軍の攻撃の流れ、勢いを結果的に止める結果になった。172センチの小兵は、スケールの小さなアタッカーと化してしまった。

 ウェストハムの右ウイング、モハメド・クドゥス(ガーナ代表)と比較すると一目瞭然だった。来季プレーしたいのはブンデスリーガ9位のチームではなく、プレミアリーグ7位(ウェストハム)のチームだ。ライバルは相手方の同じポジションの選手なのである。

 相手方の監督から「ほしい」と思われる選手になれるか。CLを含む欧州のカップ戦で、対戦したチームから選手を引き抜くことは欧州では昔からよくある。まさに"あるある"なのである。出世を狙う選手はそこを意識したい。「来季ウェストハムでプレーしたい!」という気概が堂安のプレーから感じられたかといえば、残念ながら否だった。

 守田所属のスポルティングはアタランタをホームに迎え、1−1で引き分けた。ポルトガルリーグで2位ベンフィカに1ポイント差をつけて首位を行くスポルティング。中2日で迎えたこの試合ではエース、ビクトル・ギエケレシュ(スウェーデン代表)、中盤のモルテン・ヒュルマンド(デンマーク代表)らをスタートで使わなかった。アジアカップ後、絶対的なレギュラーでなくなっている守田が先発起用された理由かもしれない。

 セリエAで現在6位を行くアタランタと、試合内容的にはほぼ互角だった。守田は来週行なわれるアウェー戦に先発を飾ることができるか。遠藤に負けるわけにはいかない。

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