『怪物』で注目の黒川想矢、挑戦を積み重ね「大きく羽ばたく日に備えたい」

　「第76回カンヌ国際映画祭」で脚本賞に輝いた是枝裕和監督の『怪物』（2023年）で物語の鍵を握る少年を演じた黒川想矢（14）が、アニメーション映画『F LY！／フライ！』（3月15日公開）の声優に初挑戦した。演じたのはカモ一家の兄ダックス。奇遇にも黒川は「来世では鳥になりたい」と思っていたそうで、ある意味、夢がかなってしまったようだ。

【動画】映画『FLY！／フライ！』本編映像

　『F LY！／フライ！』は、「ミニオンズ」「怪盗グルー」「SINGSING／シング」「ペット」シリーズを生み出し、昨年世界中で大ヒットした『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を手がけたアニメーション・スタジオ「イルミネーション」の完全オリジナルストーリーの新作。

　渡り鳥なのに一度も棲み処にしている池から出たことがないカモの一家が、思いがけない出会いから初めての渡りを決意。生まれて初めての大冒険へ向けて、カモ一家が大空へ羽ばたく。不安や恐怖を家族で乗り越え、新たな一歩を踏み出す素晴らしさを教えてくれる作品で、黒川は好奇心にあふれ、自立に憧れる兄・ダックスを演じた。

　「ダックスの魅力的なところは、怖いもの知らずで無鉄砲なところもあるけれど、いざというときには頼りになる勇敢な性格。僕にも弟がいるので、妹のグウェンのピンチを何が何でも助けるダックスのような兄でありたいと思いました」

　「いままでやったことがないことにチャレンジしてみたいと思って」、ダックス役のオーディションを受けた。「アニメーションの動きと声を合わせたり、感情を声で表現したりするのが難しくて、今回はダメだったかなぁと思っていたんですが、受かってうれしかったです」。

　本番の収録では「画面にダックスが映っていても、それは客観的な風景で、ダックスの目に映っている風景は別のものだったりする。それを意識しながら、想像しながらやりました」。

　声優初挑戦の黒川にとっては難しい部分もあったが、「鳥のように世界中を飛んでみたいという夢があって。来世は鳥になりたいと思っているので、気持ちよく空を飛びながら演じることができました」と、“来世”の話まで飛び出した。

　自分のこと以上に印象に残っているのは「妹のグウェン（吹替：池村碧彩）がめちゃくちゃかわいいんです。『離陸モード』を間違えて『鶏肉モード』という場面があるんです（笑）。僕の収録が最後だったので、皆さんの声が入ってる状態だったので、収録中からグウェン、かわいいなと思っていました」。

■共演した安藤サクラをリスペクト「憧れています」

　『怪物』で一躍注目を集めることなった黒川。彼自身、この作品の前と後では、大きな変化を自覚している。一つは、映画への興味。「出来上がった『怪物』を観て、視点が変わるとこんなにも違うのか、ということに気づいたり、登場人物に感情移入してしまったり、映画ってすごく面白いんだな、と思いました。それからいろんな映画、邦画も洋画も見るようになりました。事務所（俳優の舘ひろしが設立した舘プロ所属）に置いてあった『あぶない刑事』も観ました」。

　カンヌ国際映画祭に参加した経験も大きい。「海外に行くのも飛行機に乗るのも初めてでした。300人を超えるメディアの方たちに囲まれたレッドカーペットもすごかったですし、次の日に街を散策していたら、どこの国の方かもわからない見ず知らずの人たちに『Congratulations！』とか、『I love your film.』とか、声をかけられたことにも感動しました。海外の方にも届くんだ、映画ってすごいなって」

　そして、共演した安藤サクラとの出会いも。「『怪物』のお芝居ができたのも安藤さんの手助けがあったからだと思っています。いま、こうして取材を受けて話すことができているのも、安藤さんのおかげなんです。すごくわかってくれるというか、いろいろ学ばせていただきました。人として素晴らしい方。憧れています」

　『怪物』後、音楽劇『精霊の守り人』で初舞台、ドラマ『いちばんすきな花』（フジテレビ）にも出演。今年、ソフトバンクのCMキャラクターに起用され、4月2日スタートの新ドラマ『からかい上手の高木さん』（TBS）でいは“からかわれっぱなしの西片”役で月島琉衣とダブル主演を務める。

　今後の目標をたずねると「人として、優しい人でありたいですし、周りから信頼され頼られる存在になることが目標です。俳優としては、目の前のことに一つひとつ挑戦して、大きく羽ばたく日に備えたいと思ってます」。