遠藤航、日本サッカー史上最高位へ リバプールの中心となりELベスト8進出

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2024年03月15日 18:01  webスポルティーバ

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 ヨーロッパリーグ(EL)の決勝トーナメント1回戦に進出した16チームのなかに日本人選手は4人いた。三笘薫(ブライトン)、堂安律(フライブルク)、守田英正(スポルティング)、遠藤航(リバプール)。

 チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦出場チームでは、久保建英(レアル・ソシエダ)、冨安健洋(アーセナル)、鎌田大地(ラツィオ)の3人で、EL、CL合わせて日本人選手は7人となる。

 ELに先駆けて行なわれたCLではレアル・ソシエダとラツィオが敗退。日本人選手が所属するクラブのなかで勝ち抜けを決めたのは、ポルトにからくもPK勝ちしたアーセナルのみとなった。とはいえ冨安は故障でその試合に出場していない。この先、出場するチャンスがあるのか、なんとも言えない情勢だ。

 ELの決勝トーナメント1回戦第2戦、8試合は以下のような結果となった。

スラビア・プラハ1−3ミラン(合計スコア3−7でミランの勝ち)
ウェストハム5−0フライブルク〇(合計スコア5−1でウェストハムの勝ち)
ビジャレアル3−1マルセイユ(合計スコア3−5でマルセイユの勝ち)
レンジャーズ0−1ベンフィカ(合計スコア2−3でベンフィカの勝ち)
レバークーゼン3−2カラバフ(合計スコア5−4でレバークーゼンの勝ち)
アタランタ2−1スポルティング〇(合計スコア3−2でアタランタの勝ち)
○ブライトン1−0ローマ(合計スコア1−4でローマの勝ち)
○リバプール6−1スパルタ・プラハ(合計スコア11−2でリバプールの勝ち)
(○は日本人選手が所属するチーム)

 フライブルク、スポルティング、ブライトンは敗退。日本人選手で残っているのはCL、ELで各ひとりとなった。冨安と遠藤の2人だが、前者はアジアカップ後、筋肉系のトラブルで戦列を離れた状態にある。チームのベスト8入りに貢献した選手は遠藤ひとりになる。

 日本人選手が出場したのは2試合だけだった。出場できなかったのは腰のケガで今季絶望と伝えられているブライトンの三笘だけではなかった。12時間前に発表された日本代表招集メンバーのなかにしっかり名前が載っていた守田もメンバー外だった。日本サッカー協会とスポルティングとは十分な意思疎通が図られているのか。疑念が深まる案件でもあった。

【スタメン回避と思われた遠藤だが...】

 スポルティングはアウェーで行なわれた第2戦で、いったん合計スコアを2−1としたが、そこから2ゴールを奪われて逆転負け。守田はベンチ外で地団駄を踏むことになった。

 伊東純也が招集外となり、北朝鮮戦でスタメン出場の可能性が高まっている堂安は、ウェストハム戦に先発フル出場を果たした。だが相手が強すぎた。第1戦(1−0)のアドバンテージは開始早々に失われ、前半を終了した時点で0−3と一方的な展開となった。プレミアリーグの7位チームとブンデスリーガの8位チームの対戦は、合計スコア5−1という大差がついた。それぞれのリーグのレベル差を痛感させられる一戦だった。

 選手の質にもそれは見て取れた。残念ながら堂安は、相手の両ウイング、モハメド・クドゥズ(ガーナ代表)、ジャロッド・ボーエン(イングランド代表)と比較すると見劣りした。縦への推進力、躍動感、突破力等々、アタッカーとしてのスケール感で遅れを取った。内へ誘い込まれていく方向性の悪いドリブルをするか、可能性の低いクロスボールを上げるか。プレーの選択肢は概ねこのふたつに限られた。

 ウイングが驚きのあるプレーを見せると、自軍は活気づき、相手は慌てる。そのドリブル&フェイントには、チームに精神的なノリをもたらす起爆剤としての力がある。クドゥス、ボーエンにあって堂安に欠けるものだった。採点するならば最大でも10段階で5.5となる。

 リバプールの遠藤は初戦に続き先発を飾った。相手は第1戦のアウェー戦に5−1で勝利したスパルタ・プラハだ。3日後に行なわれるマンチェスター・ユナイテッド戦(FAカップ)に備え、休ませるのではないか。少なくともスタメンは回避するのではないかと思われた。

 5−1で勝利したスパルタ・プラハとの初戦もそうだった。3日後にはマンチェスター・シティとの首位攻防戦が控えていた。選手をローテーションで回すことがビッグクラブの常識になっているいま、出場時間が嵩んでいた遠藤はその対象になる選手だと思われた。

【中田英寿、香川真司を越えて】

 ところがELの第1戦、第2戦とも遠藤はスタメンを飾った。第1戦、マンチェスター・シティ戦はともにフルタイム出場を果たしている。さすがに第2戦は、前半を4−1で折り返した時点でベンチに下がったが、出場過多が目立つ。遠藤はケガをするまでの三笘のような、チームにとって絶対に外せない選手になっている。ユルゲン・クロップ監督からの評価は、12月中旬まで信頼を得られず青息吐息だった選手とは思えない爆上がりぶりである。

 1)マンチェスター・シティ、2)バイエルン、3)レアル・マドリード、4)パリ・サンジェルマン、5)リバプール......とは、現在の欧州クラブランキングだが、リバプールが、日本人が所属するクラブのなかでナンバーワンであることは言わずもがなだ。以下、アーセナル(21位/冨安所属)、フェイエノールト(28位/上田綺世所属)、スポルティング(31位/守田所属)、ラツィオ(32位/鎌田所属)、レアル・ソシエダ(38位/久保所属)、AZ(41位/菅原由勢所属)......と続くが、リバプールの断トツぶりは目立つ。

 歴代では、2012−13、2013−14シーズンに香川真司が在籍したマンチェスター・ユナイテッドの当時のランクが5位ないし6位だった。2011−12シーズンに宇佐美貴史が在籍したバイエルンの当時のランクは4位だった。リバプールの5位はそれに劣るが、香川の場合は出場時間が少なかった。宇佐美に至ってはわずか数試合の出場にとどまった。

 その他では、2000−01シーズンに中田英寿が在籍したローマでさえ19位だったので、遠藤にクラブランキングではライバルはいないことになる。

 リバプール対マンチェスター・シティ戦は、言ってみればクラシコのレベルだ。レアル・マドリード対バルセロナの一戦に、日本人選手がチームの中心となるヘソの部分で出場したのと同じことだ。現在の欧州ランクに落とし込めば、むしろリバプール対マンチェスター・シティのほうが格上になるほどだ。

 そうした意味で遠藤は、日本サッカー史上最高位の座に就いたことになる。競争の激しいリバプールでいつまでスタメンを張れるか定かではないが、31歳になって、プレーが上達している印象だ。巧さが増している。日本人選手として過去最高の経験を積んでいる状態にあることは間違いない。日本のサッカーファンは遠藤に拍手喝采を送らなければならないだろう。

 リバプールの不動のスタメンとなれば、顔は世界の津々浦々まで知れ渡る。W杯本大会でキャプテンとして相手とペナントを交換するとき、顔で負けない可能性が高い。これは重要なことだ。相手の選手、ファンは少なからず萎縮する。

 リバプールはブックメーカー各社にELの大本命に推されている。以下、レバークーゼン、ミラン、ウェストハム、アタランタ、ローマ、マルセイユ、ベンフィカの順で続くが、遠藤が残る3試合でどんな活躍を見せるか。プレミアでの戦いぶりともども目を凝らしたい。

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