サザンオールスターズ元チーフプロモーターらが語るJ-POPの未来 ストリーミングを避ける時期は脱し「世界進出の入口に立っている」

0

2024年03月19日 17:30  ORICON NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ORICON NEWS

『Believeミュージックビジネスカンファレンス』で対談した榎本幹朗氏、今井一成氏 (C)ORICON NewS inc.
 世界50ヶ国で各地域のインディペンデントアーティストとレーベルに、音楽のデジタル流通とデジタルマーケティングを提供するフランス・パリ発の音楽会社・Believe(ビリーブ)が19日、都内で『Believeミュージックビジネスカンファレンス』を開催。モデレーターとして作家の榎本幹朗氏、ゲストとしてサザンオールスターズのチーフプロモーターを務めた今井一成氏らが招かれ、デジタルマーケティングをテーマとしたトークセッションを行った。

【写真】サザンオールスターズのチーフプロモーターを務めた今井一成氏

 同社は2005年、世界初のデジタルミュージックストアとして誕生した「eMusic」や、世界初の音楽SNS「MP3.com」の立ち上げに貢献したデニス・ライガリー氏が設立した音楽ディストリビューション企業。Believeではそのノウハウを活かし、Spotify、YouTube、Apple、Amazon、Meta、TikTokといったデジタルサービスとパートナーシップを築き、インディペンデントアーティストとレーベルの活動を支援している。

 昨年10月には日本法人「Believe Japan合同会社」を発足。あらゆる音楽ジャンルのアーティストやレーベルのキャリアの各段階における発展支援として「Believe Label & Artist Solutions」(音楽配信や配信ストア特化型マーケティングおよびコンサルティングを提供するレーベルや次世代アーティスト向けサービス)、「Believe Artist Services」(マーケティング戦略・実行、データ分析や資金支援、音楽配信を提供する実績のあるインディペンデントアーティスト向けサービス)を開始した。

 Believe Japanの代表を務める小川エリカ氏は、はじめに「日本の音楽業界は世界の中でも長い歴史を持ち、数々の変革を遂げてきた。直近ではコロナを経て、デジタル強化や海外に意識を向ける時期になったと考えている」と分析。日本法人の立ち上げについて「私たちが世界に誇る日本の市場がデジタルシフトを迎えるタイミングにあたり、デジタル音楽の分野を強化したい方のベストパートナーになるべく設立させていただきました」と説明した。

 続けて「海外のアーティストはセルフプロデュース能力が高く、自ら自由にクリエーションできる環境を求めることが多い。その点で日本の市場は、慣習や周りのやり方を踏襲することも多いように感じる」と、自身がレーベルやアーティストと直接関わった際の経験を踏まえて指摘した。

 その上で「日本の音楽シーンは“眠れる巨人”。大きな可能性が眠っている状態」と期待を寄せ、「どのレーベルについても特別な努力をするというより、まずは自らの立っている地点を明確に理解し、そこから向かっていくべき地点(目標)をしっかりと定めていただくことが大切。我々はその目標に向かうための手段をともに考案していきたい」と伝えた。

 榎本氏と今井氏のトークでは、まず今井氏がレーベル移籍などを経ながらデジタル部門へと転身した経緯を語り、「ポニーキャニオンに移らせてもらって、松原美紀の『真夜中のドア』がグローバルでいきなりヒットした。そこで海外に売り出していこうと思ったんですけど、行き方がわからなかった」と告白。その段階でグローバルディストリビューターの存在を知ったと言い、Believeとの出会いも回顧した。

 続けて、話題はストリーミングサービスが与えた影響へ移行。「2012〜16年の間に日本にストリーミングサービスが上陸してきましたが、ストリーミングはそれまで“デジタルコンテンツ”と呼ばれてきたダウンロードとまったく違うサービスだった」とし、「まったく違うビジネスとして頭を切り替える必要があった」と振り返る。

 その後「テクノロジーが音楽業界に進出してきて、ゲームチェンジが起こった」と流れを分析。一方で、当時は「いろいろなアーティストにストリーミングの話を持ちかけると、すごく嫌がられた時期だった」とも明かすが、「もうそういった段階は脱した」と私見を伝えつつ、今後の課題として「音はストリーミングで全世界に届いているけど、全世界の人たちに邦楽、J-POPというものに興味を持たせるための術がまだまだ足りない」と語った。

 そしてBelieveのデジタルマーケティング、グローバルディストリビューションのノウハウを積極的に吸収したいと言い、「日本は本当に今いいポジションまで来ていて、世界進出の入口に立っているんだとヒシヒシと感じています。海外へ飛び出しているアーティストも多いですが、まだまだそんなもんじゃない、日本の音楽全体をグローバル化していきたい」と決意を伝えた。

 両氏のトークを受け、Believeのアジア太平洋地域マネージング・ディレクターであるシルヴァン・ドランジェ氏は、「日本においてデジタルはまだまだ黎明期に近く、まだまだ広がっていける」と太鼓判を押しつつ、「ディストリビューションというものは、コンテンツをプラットフォームに乗せるためのものだけではない。収益を上げる、コンテンツを見つけやすくさせる、国内外のファンを的確にターゲットしていくことが大変なんです」と力説。

 その上で「日本の音楽はもっと国際舞台で成長する潜在性を秘めている。デジタルはみなさんの敵ではないく、アーティストとエンゲージするためのもの。(CDなどの)対面的なものと、お互いに成長できるものだと思う」と添えた。

    ランキングエンタメ

    前日のランキングへ

    ニュース設定