【日本代表】福田×名波が激論する「ザックジャパン、メンバー固定の是非」

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2024年03月26日 08:50  webスポルティーバ

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福田正博×名波浩が分析する
史上最強・ザックジャパンの真価(3)

2012年、日本代表はW杯予選で素晴らしい戦いを見せた。一方で、メンバーを固定して戦っているためか、停滞感が漂い始めているのも確か。現状のままで、W杯本番は本当に大丈夫なのか。今回は、福田正博氏と名波浩氏に「新戦力の発掘」の必要性について検証してもらった。

――どこか停滞感が感じられるザックジャパン、チームを活性化するうえでも、新たな戦力の発掘を考えなくてもいいのでしょうか。

名波 2列目のアウトサイドとして、清武(弘嗣)の成長は感じられる。スタメンで出場しても(レギュラーと)遜色なくできる、という目処も立った。でも、それ以外の選手となると、まだまだレギュラー陣を脅かすほどの存在感はない。というか、例えば、宇佐美(貴史)にしろ、宮市(亮)にしろ、代表に招集したら、もう少しチャンスを与えてもいいような気がする。練習や紅白戦だけだと、その選手の生々しいプレイや、周りとの関係性はわからないからね。

福田 2012年は、W杯最終予選で結果を出すことが何より重要だった。そのための準備に重きを置いて、メンバーを固定する傾向が強かったね。その点、2013年は親善試合も多くなるだろうし、新たな戦力にチャンスを与える機会も増えるんじゃないかな。

名波 2011年のアジアカップのときは、スタメンとかバックアップとか関係なく、ザッケローニ監督がいろいろな選手にあれこれと話しかける姿が見受けられた。それが最近は、ほとんどバックアップメンバーと話をしていない。その辺も、少し気になるところ。単純に呼んだ選手は使ってほしいし、逆に使わないのなら、その理由を説明してあげてもいいんじゃないかな。「監督の考えはこうだから」と、コーチからひと言伝えるだけでも違うと思うんだよね。

福田(名波氏が)言わんとするところはわかるけど、自分はね、それもひとつ、監督のやり方なのかなと思う。いちばん大事なのは、チーム力を向上させることだし、結果を出すこと。そのための方法論はいろいろある。ザッケローニ監督はチーム内の序列をはっきりさせて、10何番目の選手にいきなりチャンスを与えるといった采配はしない。それがいいか、悪いか、別にして、ザッケローニ監督はそういうマネジメントをしているということ。

名波 チーム内の序列をはっきりさせて、秩序を保つことは重要だけど、欧州でプレイしている選手も多くなって、せっかく帰国しても起用してもらえないと「何だよ」という不満が少なからず膨らむもの。その辺のケアをしてあげる意味でも、(監督からの)声かけは必要なんじゃないかな。監督からどういう評価をされているのか、選手はすごく気になるからね。ちょっと前に、ザッケローニ監督は会見で「宇佐美には期待しているけれど、今ひとつ成長が感じられない」というようなコメントをしていたけれど、そんなひと言でもいい。選手にしてみれば「じゃあ、もっと頑張らないといけないのか」と思えるし、見ている側も胸のつかえがとれて、多少なりともすがすがしい気持ちになれる(笑)。

福田 例えば、Jリーグで得点王になったサンフレッチェ広島の(佐藤)寿人にチャンスを与えたら、という声があるけれども、ザッケローニ監督がFWに求めている役割は寿人のようなプレイスタイルではないのかもしれない。1トップの前田(遼一)を交代させるときは、控えのFWではなく、本田(圭佑)を前に上げたりする。選手起用とか、試合での采配とか、監督の頭の中で、日本代表の戦うイメージはある程度固まっているんだと思うな。

――ザッケローニ監督の考え方からすると、サプライズは期待できないのかもしれませんが、それは抜きにして、この選手を試してほしい、といった意見やアイデアはありませんか。

福田
 1トップに、サガン鳥栖の豊田(陽平)を起用してみるのは面白いかもしれない。泥臭くて、体を張れるし、「2列目のために働く」といった役割を十分にこなせそうな気がする。ザッケローニ監督の考える戦術にも合っているんじゃないかな。

名波 トップなら、ザッケローニ監督は森本(貴幸)に期待していると思う。イタリア(カターニア)で今、試合に出たり、出なかったり、伸び悩んでいる感じはするけれどね。

福田 ロンドン五輪世代がこれからチャンスをつかんでもおかしくない。清武や酒井宏樹、酒井高徳ら、少しずつ出場機会を増やしているけれど、例えば、名古屋グランパスの永井(謙佑)あたりも見てみたい。世界の強豪と戦ううえで、ああいうスピードタイプの選手はジョーカーになれるからね。

名波 単純にスピード勝負で縦にいくだけじゃなく、変化もつけられる。試してみる価値はあるよね。

――本田圭佑選手や香川真司選手、遠藤保仁選手や前田遼一選手など、今の日本代表は代えの利かない選手ばかりですが、アウェーのオマーン戦では改めて岡崎慎司選手の重要性を感じました。彼に代わるような選手もいないように思います。

福田 2列目に、香川、本田、清武、もしくは乾(貴士)とか、彼らのようなタイプが並ぶと、サッカーはきれいかもしれないけれど、攻撃がマイルドで、トゲがない感じがするね。岡崎のようにゴールに向かっていくランニングがあるからこそ、そこにボールも出せるし、相手が嫌がるわけだしさ。技術的にはそれほど高くはないけれど、彼の不器用さは攻撃の怖さやアクセントにつながっている。彼に代わる選手はそういないんじゃないかな。

名波 岡崎の、敵のDFラインの背後をとる動きは、相手に脅威を与えるし、深みを作れるので、バイタルエリアやミドルレンジにスペースが空いてくる。それによって、技術の高い選手が自分の好きなプレイを出しやすい状況が作れるわけで、岡崎や前田がいると、2列目の選手たちはすごくやりやすいはずなんだよ。ただ、彼みたいな奇抜な動きは教えてできるものではないし、真似しろといっても無理な話。岡崎も間違いなく代えの利かない選手だよね。だから彼の場合も、代役を探すような発想は持たないほうがいい。もし不在なら、まったく別の観点で考えたほうがいいだろうね。

――決定力があって、スペースを突く動きの優れた佐藤寿人選手を2列目のサイドに置くという選択はいかがですか?

名波 うーん、ちょっとタイプが違う気がするな。サイドではどうしても守備も要求されるし、寿人を使うならトップのほうがいいと思う。

福田 寿人は、動いて周りを生かすというより、周りに生かされるタイプ。広島でやっているようなパフォーマンスを見せるには、周りとの関係が命だからね。

――では、清水エスパルスからドイツ(デュッセルドルフ)に行くことが決まった大前元紀選手はいかがでしょう。

名波 それはありかも。サイドからラインの背後をとりにいく動きがわかっているし、得点力もある。技術的には岡崎より上で、あとはどれだけ"怖さ"を身につけられるか。向こうでのパフォーマンス次第では、チャンスを与えてもいいかもしれない。


福田
 ジュビロ磐田の山田大記はどう? 彼は、右足でも左足でもどちらでもいいシュートが打てるし、サイドから中に入ってのプレイが面白い。

名波
 年齢的にはもう代表に入ってもおかしくない。いや、遅いくらい。個人的には期待しているし、試してほしいひとりだけど......。

福田
 メンバーが固定されてしまうと、チームに刺激がなくなってしまうのは確か。新しい選手が入ることで、机の上では考えつかないような化学反応が起こり得るから、刺激を与えるという意味では新戦力を試すのは賛成だよ。ただ、ザッケローニ監督の、ここまでのやり方を見ていると、周りが驚くような選手起用をするタイプじゃない。そこははっきりしているね。

名波
 でも、ファンやメディアは、サプライズが見たいでしょ(笑)。「ここでこの選手を使うんだ」というような。そうすれば、燻(くす)ぶっている世間の不満を、少しは払拭できる気がするけどね。

福田正博(ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。言わずと知れた「ミスター・レッズ」。1995年Jリーグでは日本人初の得点王に。引退後、2008年から3年間、古巣・浦和レッズのコーチを務める。現在はサッカー解説者として『S☆1』(TBS)など各メディアで活躍。

名波 浩(ななみ・ひろし)
1972年11月28日生まれ。静岡県出身。ジュビロ磐田の司令塔として活躍し、日本代表では「10番」を背負って初のW杯出場に貢献した。引退後はジュビロのアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として奔走している。

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