ポーランドの巨匠「闘わないのであれば、芸術を作ることに意味はない」『人間の境界』本編映像解禁

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2024年05月03日 17:21  cinemacafe.net

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『人間の境界』
2023年ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門で上映され審査員特別賞を受賞、大きな喝采を浴びるとともに物議を醸した『人間の境界』。中心となるシリア人難民家族に加え、国境の森に関わる支援活動家、国境警備隊の青年など複数の視点から描き出していく本作から、地元住民の女性が“不条理”に直面する本編映像が解禁となった。

2021年、ベラルーシ政府の策略により大勢の難民がポーランド国境へと送り込まれるが、ポーランドの国境警備隊は非人道的な仕打ちのすえ彼らをベラルーシへと押し戻し、ベラルーシも再びポーランドへと戻す…と両国が難民を押しつけ合う事態となっていた。

今回の本編映像は、地元住民がある不条理を目の当たりにするシーン。森のすぐそばに暮らす精神科医のユリア(マヤ・オスタシェフスカ)は、難民支援グループのメンバーの車で病院に向かう。すると、病院で治療を受けていたアフガニスタンからの難民レイラ(ベヒ・ジャナティ・アタイ)がポーランド警察によって強制連行されようとしていた。

支援グループのメンバーはレイナのメガネやコートだけでも渡そうとするがそれすら叶わず、彼女はどこかに連れ去られてしまう。ユリアは警察の横暴と支援グループによる必死の抵抗を呆然と見つめることしかできない。

ユリアがこの場に居合わせることになったのは、前日、彼女が偶然森の中でレイラと余りに悲劇的な出会いを果たし、病院でその悲しみを分かち合ったことがきっかけだった。この一連の出来事をきっかけに、彼女はこの支援グループに参加することを決意するが…。



アグニエシュカ・ホランド監督は政府により立ち入りを禁じられた国境の森で、実際に難民たちと関わっていたアクティビストらを共同脚本家に迎え、情報源への入念な調査を重ね脚本を作り上げた。

そんな“不都合な真実”の告発を試みた本作に対して、当時のポーランド政府は映画を激しく非難。現役の大臣が非難声明を発表し、公開劇場に対して上映前に「この映画は事実と異なる」という政府作成のPR動画を流すよう命じるなど異例の攻撃を仕掛ける事態へと発展した。





ホランド監督は「私は裁判官や検察官のように他人を裁いたりすることがアーティストとしての使命だと感じたことはありません。私はストーリーを語り、様々な人々が直面する様々な選択肢と選択を描きます。私にとって最も重要なことは、私たちは誰もがコミュニティの一員であるというのを表現することなのです」と、自身の考える映画の役割について説明。こうした想いから、本作に複数の全く異なる視点を登場させたという。

その上で、「基本的には、恐れていません。以前も恐れていませんでしたから、今も恐れる理由はありません。物議をかもすようなテーマについて明確な立場を示したり発言したりすることは、大きなリスクを伴います。ですが私は、痛みを伴うような難しい選択が強いられる重要な問題や、時には解決不可能な問題に取り組むために闘わないのであれば、芸術を作ることに意味はないと感じるのです」と、一貫して変わらぬ制作スタイルを語っている。

『人間の境界』は5月3日(金・祝)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開。

©2023 Metro Lato Sp. z o.o., Blick Productions SAS, Marlene Film Production s.r.o., Beluga Tree SA, Canal+ Polska S.A., dFlights Sp. z o.o., Česká televize, Mazovia Institute of Culture





(シネマカフェ編集部)
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