オークスは「1強」ステレンボッシュで本当にテッパン? 逆襲を目論む素質馬2頭が不気味

0

2024年05月15日 07:40  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

 2歳女王決定戦のGI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月10日/阪神・芝1600m)と、3歳牝馬クラシック第1弾のGI桜花賞(4月7日/阪神・芝1600m)で1、2着を分けあって、この世代の牝馬「2トップ」とされたアスコリピチェーノ(牝3歳)とステレンボッシュ(牝3歳)。

 その後、アスコリピチェーノがマイルGIのNHKマイルC(5月5日/東京・芝1600m)へ駒を進めたため、クラシック第2弾のGIオークス(5月19日/東京・芝2400m)は、ステレンボッシュの断然ムードとなっている。

 実際、オークスは出走馬のほとんどが未経験の2400m戦。ゆえに、「距離適性よりもポテンシャルがモノを言う」と言われている。そして今年は、出走予定メンバーのすべてが、その未知の距離に挑む。となれば、桜花賞で強い競馬で勝利したステレンボッシュの「1強」と見られるのは、当然のことかもしれない。

 だが、本当にそうか?

 振り返ってみれば、阪神JFでのステレンボッシュは、単勝8.7倍の5番人気。名手クリストフ・ルメール騎手を鞍上に配して、この程度の人気にとどまったことを思えば、伏兵の域を出ない存在だったことは明らかだ。

 おかげで、わずかクビ差の2着と奮闘しながら、続く桜花賞でも1番人気アスコリピチェーノの単勝3.5倍とはやや差がある単勝4.3倍の2番人気に甘んじた。再度、ジョアン・モレイラ騎手という名手が手綱を取ったにもかかわらず、だ。

 無論、人気はファンが決めるものゆえ、必ずしも実力を反映しているとは限らない。ただ、ステレンボッシュの「1強」と、2歳時から突出した人気だった昨年の「1強」リバティアイランドとは、その意味合いは大きく異なる。ステレンボッシュの「1強」は、かなり心許ないものがある。

 さらに言えば、それだけ"突っ込みどころ"がある、ということだ。

 現に関西の競馬専門紙記者からは、こんな情報が伝わってきた。

「厩舎関係者は皆、ステレンボッシュの能力が高いことは認めていますけど、"抜けている"とまでは思っていません。ましてや、今回はどの馬にとっても初めて走る2400m戦。『つけ入るスキはある』と見ている陣営は少なくないですよ」

 ステレンボッシュの弱点とされる点を具体的に挙げれば、そのひとつにスタートがある。同馬はスタートを含めて、決して出脚がいいわけではない。桜花賞でもスタート直後は最後方だった。そのため、道中ではすんなり位置が取れず、どうしても末脚勝負になる。

 仮に、その末脚が封じられる展開になったら、あるいは、内で包まれて出るに出られない状況になったら......など、弱点から生じる不安はいくつも考えられる。

 では、そうした状況にあって「打倒ステレンボッシュ」を成すのは、どの馬か。

 桜花賞のあと、オークスへ向けての重要なステップレースがふたつ行なわれたが、いずれもメンバーレベルは高くなかった。だとすれば、これら別路線組が下剋上を果たす可能性は低い。

 ということは、やはり目を向けるべきは、桜花賞で苦杯をなめた面々の逆襲である。

 その筆頭候補は、素質馬クイーンズウォーク(牝3歳)だ。

 桜花賞では、3番人気に推されながら8着。やや負けすぎ、という印象もあるが、それにはこんな理由があるという。先の専門紙記者が説明する。

「桜花賞は1枠2番からのスタートで、道中はずっとごちゃついていた馬群のなかでの競馬を強いられました。あれでは、力を出せないし、8着というのも納得の結果。むしろ、よく走ったほうです。もし、外枠発走からスムーズな競馬ができていれば、3着はあったと思います」

 もともと同馬の最大目標はオークスと言われ、桜花賞前にはその布石として、GIIIクイーンC(1着。2月10日/東京・芝1600m)を使ったとされる。そして、迎えるオークスでは、コース経験も、関西からの輸送経験もあり、父キズナという血統から、距離延長さえ望むところ。ポジティブな材料は多い。

 そのうえ、桜花賞で苦しい競馬をしたことが、オークスにつながるいい経験になった、というプラス要素もある。また、500kgを超える大型馬だが、一戦ごとに大型馬特有の緩さも抜け、完成形に近づきつつあるという。

 つけ加えておくと、同馬を管理するのは中内田充正厩舎で、鞍上は川田将雅騎手。昨年の「1強」リバティアイランドと同じコンビで、オークスの勝ち方を知っているという点でも心強い限りだ。

 もう1頭、「打倒ステレンボッシュ」の候補として気になる素質馬がいる。チェルヴィニア(牝3歳)である。

 同馬も桜花賞では4番人気という支持を得ながら、13着と馬群に沈んだ。だが、敗因ははっきりしている。厩舎関係者によれば、「乗り込み不足で仕上がっていなかった」とのこと。この中間で、どこまで上積みできるかはわからないが、全体的にパンとすれば、大舞台で通用する能力は秘めている。先述の専門紙記者が言う。

「この馬は2歳夏の未勝利戦(8月12日/新潟・芝1800m)を、ほぼ馬なりで1分46秒9という破格の時計で勝っています。その時計自体、2歳馬が夏の段階で出せる時計ではないし、それを馬なりでマークしたというのがすごい。あのとき、とんでもない馬が出てきたと思いました」

 さらに、続く出世レースのGIIIアルテミスS(10月28日/東京・芝1600m)も難なく勝利。牝馬クラシックの最有力候補に躍り出た。

 しかしその後、阪神JFを前にして脚部不安で戦線離脱。前走の桜花賞でやっと復帰を果たし、しかも惨敗を喫したことを思えば、なかなか手を出しづらいかもしれないが、もとはこの世代を代表する逸材だ。専門紙記者が続ける。

「ルメールさんが、この馬を手放さないんですよ。他の有力馬に乗る選択肢もあったはずなのに、(オークスでも)迷うことなく、この馬を選択しました。それはなぜか? その理由に頭を巡らせば、なんとも不気味です」

 チェルヴィニアの母は、2016年のオークス2着馬チェッキーノ。その血統背景からして、東京・芝2400mの舞台は合う。なおかつ、管理するのは木村哲也厩舎。同厩舎とルメール騎手とのコンビと言えば、世界一になったイクイノックスがすぐに思い浮かぶ。こうしたプロフィールを鑑みれば、ますます不気味な存在だ。

 はたして、「1強」ステレンボッシュがオークスでも再び強さを見せるのか。あるいは、桜花賞では能力を出しきれなかった素質馬が巻き返しを図るのか。過酷な舞台で繰り広げられる、若き乙女たちの"死闘"に注目したい。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定