『イップス』第7話 篠原涼子の“アレ”な演技を引き出してしまっている設定のねじれ

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2024年05月25日 14:01  日刊サイゾー

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日刊サイゾー

 フジテレビで『警部補・古畑任三郎』の全話再放送が始まりましたね。24日から、3シーズン+スペシャル版をすべて放送するそうです。まあこれは録画してあとでゆっくり見るとして、『古畑』と同じフジテレビの、『古畑』と同じように先に犯人を明かして謎解きを見せる“倒叙型ミステリー”である『イップス』第7話も同じ24日に放送されました。

 時代も違うし、比較するものじゃないですからね。振り返りましょう。

■今回はミステリー好きの人が書いたようです

 今回の犯人役はプロフィギュアスケーターの村上佳菜子さん。かつては“氷上のジャンヌ・ダルク”と呼ばれた優秀な選手で、現在は指導者として活動している皇真白という人物を演じています。

 事件は、皇が手塩にかけて育成してきた有望な男性選手がほかの女性コーチにそそのかされて皇のもとを離れることになり、その選手がダメになる姿を見たくないという理由で女性コーチを殺害したというもの。

 皇に利用されて目撃者に仕立て上げられた黒羽ミコ(篠原涼子)と捜査一課の森野(バカリズム)が冴えた推理で事件を解決するのはいつも通りです。

 まずトップアスリートの村上さんをツモってきた時点で楽しいですし、脚本における殺害の動機にもスケーターとしての美学が乗っていて納得感がありました。リンクの氷に証拠品を埋めるというトリックも「ならでは」だし、ミステリーのエピローグとして村上さんのホンモノのフィギュア演技をたっぷり見せるというサービスもいい。

 前回、作ってる側がミステリー好きじゃないんだろうなと書きましたが、今回はすごくミステリー好きな人が作った感じがしました。脚本は森ハヤシさん。第3話の議員秘書の回と同じですね。議員秘書の回も、情緒があって謎解きとしてはとってもよかったと書いてます。

『イップス』は事件の仕掛けの出来にけっこう個体差があるんですが、出来のいい回がメインのオークラさんじゃなくて森さんの回なんですよねえ。それがなんとも。

■やっぱり「イップス」という設定がしんどい

 ミコさんはイップスで小説が書けない、森野はイップスで事件現場に行けないというのがこのドラマの大前提なんですが、森野、行けるんですよね。途中からいなくなったりすることはあっても、誘拐でもされない限りは必ず現場に行けてる。で、途中からいなくなっても別の場所で捜査を進めたりしている。

 毎回「行けない」というフリが入って、必ず来て冴えた推理で事件を解決して、また次の回になったら「行けない」と言い出す。それを繰り返してるので、ドラマの設定そのものに説得力がなくなってしまってるんです。バカリズムの冷めた表情とか、第1話や今回見られた短い手足で全力疾走するシーンとかはすごくキャラクターが立ってて楽しいので、いっそめちゃくちゃ事件を解決したい刑事と言ってもらった方が見やすくなるだろうなと思っちゃう。

 設定として説得力がない上に、森野が「行けない」と毎回言うことが作劇としての弊害にもなってる状況があって、今回でいえばミコさんには「真犯人を突き止めたい」と思う動機がないんです。動機がないのに、森野が「行けない」と言っているせいで単独で捜査を開始しなければ物語が進まなくなってる。

 そういう無理が発生しているので、ただでさえちょっとアレだなという篠原涼子のお芝居が、さらにアレに見えてくるという悪循環が生まれている。

 とはいえ、終わりよければすべてよしですからね。最初からねじれてしまっている設定のドラマをどう気持ちよく治めるかというところで楽しみにしたいと思います。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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