【週末映画コラム】まさに体感する映画『マッドマックス フュリオサ』/ワンシチュエーションの二人芝居『告白 コンフェッション』

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2024年05月31日 08:10  エンタメOVO

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『マッドマックス フュリオサ』(5月31日公開)




 世界の崩壊から45年。石油も水も尽きかけた未来世界。暴君ディメンタス将軍(クリス・ヘムズワース)率いるバイカー軍団の手に落ち、母の命を奪われたフュリオサ(アニヤ・テイラー=ジョイ)は、ディメンタスとイモータン・ジョーが土地の覇権を争う、狂気に満ちた世界に身を置くことになる。狂った強者だけが生き残れる過酷な世界で、フュリオサは復讐(ふくしゅう)のため、そして故郷に帰るため、修羅の道を歩む。

 前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)でシャーリーズ・セロンが演じ、強烈な存在感とカリスマ性を発揮した女戦士フュリオサの若き日の物語を描く。監督・脚本は『マッドマックス』(79)からメガホンを取り続けているジョージ・ミラー。

 荒涼とした砂漠や巨岩地帯を背景に、オープニングからいきなり目まぐるしいアクションが繰り広げられ、一気に異世界へと引きずり込まれる。そして馬に始まり、二輪、四輪入り乱れての激しいカーバトルを軸に、すさまじいばかりのバイオレンスシーンが展開し、CGではない生身を使ったリアルなアクションとミラー独特の乾いた世界観に目を奪われる。

 以前、年配の知り合いが「最近のアクション映画は、アクションが激し過ぎて見ていて眠くなる」と話していたのを聞いて、その時は「そんなことがあるのか…」と疑問に思ったのだが、この映画を見ながら自分にもうとうとする瞬間があって驚いた。

 それは矢継ぎ早に繰り出される激しいアクションに疲れを覚えたからなのか、それともテンポが単調だったせいなのか、あるいは自分が年を取ったからなのか、単なる寝不足なのかは分からない。ただ“映画体験”という言葉があるが、まさに体感する映画だったことは確かだ。

 テイラー=ジョイとヘムズワースが怪演を見せる。特にヘムズワースはキャリア最高の演技ではないかと思った。

 オーストラリア出身のミラー監督は、医学部を卒業し、救急救命医として働いたこともあるという、異色の経歴を持つ映画監督。自国で撮った『マッドマックス』と『マッドマックス2』(81)の世界的なヒットを経て、スティーブン・スピルバーグに招かれてハリウッドに渡り『トワイライトゾーン/超次元の体験』(83)を共同監督した。

 以後、息子のために難病の治療法を探る両親の姿を描いた『ロレンツォのオイル/命の詩』(92)、子豚を主人公にしたファミリー映画『ベイブ』(95)、ペンギン一家を描いたアニメーション『ハッピー フィート』(06)などを監督し、「マッドマックス」シリーズのバイオレンス世界からはすっかり離れた印象があった。

 ところが、70歳を迎えて前作『〜怒りのデス・ロード』で本卦還りをして驚かせたが、今回はさらにパワーアップしていた。ミラー監督いわく「パワーの源は好奇心」だそうだ。

 またミラー監督は「マッドマックスは一種の寓話(ぐうわ)であり、神話的な物語の原型」だと語っているが、確かに、荒涼とした風景、馬の使い方なども含めて西部劇的なものを感じさせるところもある。そのハードな主人公が女性というところに、最初の『マッドマックス』から45年という月日の流れや時代の変化を感じさせられる。

 さて、この壮絶な”前日譚”を見せられたら、さかのぼって『〜怒りのデス・ロード』が見たくなるのは必定だ。

『告白 コンフェッション』(5月31日公開)




 大学山岳部のOBで親友同士の浅井(生田斗真)とジヨン(ヤン・イクチュン)は、16年前の大学卒業登山中に行方不明となり事故死とされた西田さゆり(奈緒)の17回忌の慰霊登山に出かけるが、猛吹雪に遭い遭難してしまう。

 脚に大けがを負ったジヨンは死を覚悟し、16年前に自分がさゆりを殺害したと告白する。だが、吹雪の中、奇跡的に山小屋が見つかり、2人は一命を取り留める。

 殺人を告白してしまった男とそれを聞いてしまった男。山小屋で救助隊の到着を待つ中、2人の間には気まずく不穏な空気が流れ始める。

 福本伸行原作、かわぐちかいじが作画の同名漫画を、山下敦弘監督が実写映画化。密室である山小屋で繰り広げられるワンシチュエーションの二人芝居なので舞台劇のようでもある。

 心理劇、葛藤劇かと思いきや、途中からホラーの様相を呈する。74分の“中編映画”だが、グロテスクな描写も多く、見ていて疲れを覚えた。

 ただ、そもそもが”勘違い”から始まったことなので、両者の食い違いから生じるユーモラスなシーンもある。またホラー描写も極まるとどこかおかしさを感じるので、改めて、ホラーとコメディーは紙一重、表裏一体だと思わされた。生田とイクチュンのすさまじい演技も見どころだ。

(田中雄二)

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