ラグビー「エディージャパン第2章」開幕 「超速ラグビー」を掲げる名将の目に止まった気になる新顔は?

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2024年06月01日 10:10  webスポルティーバ

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 いよいよエディー・ジャパンの第2章が始まる。

 5月30日、ラグビー日本代表の指揮官に再び就任したエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)がイングランド代表戦(6月22日/国立競技場)に向けて宮崎合宿に参加する35名を発表。名将エディーが再任後に発表する最初の代表メンバーということで、メディアの注目も集まった。

 2023年ワールドカップの出場者15名が選ばれる一方、ノンキャップ12名を選出。ワールドカップ時は29歳ほどだった平均年齢が25歳へと若返った。

「2027年ワールドカップに向けて、あらためて日本代表チームを再構築しないといけない。そのプロセスが今日から始まった。日本代表らしく(ほかの国と)違うラグビーのスタイルを構築していくなかで『超速ラグビー』を掲げた。それを(宮崎合宿の)初日から導入していきたい」(ジョーンズHC)

 今回の発表で、個人的に最も注目していたポジションがある。それは、ジョーンズHCが掲げる「超速ラグビー」の一番の起点となるスクラムハーフだ。

 パスとランによるアタッキングラグビーを信条とするジョーンズHCは、2012年から2015年まで日本代表を率いていた4年間は、最初に選んだスクラムハーフとスタンドオフの選手をずっと固定し、最後まで起用し続けた経緯がある。

「スクラムハーフの選手は本当に層が厚く、3人を選ぶことは非常に難しかった」

 発表会見で、ジョーンズHCは正直に気持ちを吐露した。

 そのなかで名将のお眼鏡にかなったのが、2023年ワールドカップで中心メンバーのひとりだった26歳の齋藤直人(東京サンゴリアス)、そしてノンキャップで選ばれた小山大輝(埼玉ワイルドナイツ)と藤原忍(スピアーズ船橋・東京ベイ)の3人だ。

【名将エディーがノンキャップのSHを選んだ理由】

 ワールドカップに過去2大会出場した流大(東京サンゴリアス)が代表引退を表明したなか、実績十分の齋藤が選ばれることは容易に想像できた。小山と藤原が選ばれたのは、国際経験こそあまり多くないものの、年々レベルアップしているリーグワンのパフォーマンスで選出されたのだろう。

 就任後の半年間、リーグワンだけでなく高校、大学、U20日本代表合宿にも足しげく視察に訪れていたジョーンズHCは、小山と藤原を選んだ理由をこう語る。

「過去2年のリーグワンの試合を見て、小山は一貫性を持ってプレーしていた。パスの正確性も高いし、キックもでき、ディフェンスもアグレッシブ。彼にチャンスを与えるのがいいと思った。

 藤原は若くて、まだまだ学んでいるところですが、スピードがある。パスの一貫性がないところは改善してもらいたいが、私が求めているスパークするような(ひらめきのある)アタックに彼は適している」

 小山は北海道出身の29歳。ラグビーを始めたのは兄の影響で、中学の野球部を引退したあとに転向した。進学した芦別高校で才能はすぐに開花し、高校日本代表にも選出された。大東文化大学でも1年から活躍し、卒業後にワイルドナイツに入団した。

 入団したワイルドナイツには、今季で引退した日本代表SHがふたりいた。田中史朗と内田啓介だ。小山はふたりの背中を見ながら、社員選手でありながら時間を惜しんで努力を重ねた。2019年に田中が移籍したあとは出場する機会が増え、毎年優勝争いをする強豪チームの勝利に貢献。そして今季はクロスボーダーマッチを含む19試合に出場し、18試合で9番を背負った。

「試合に出れば出るほど経験を積めるし、いい感じになってくるので、すごく充実しています!」

 リーグワンでワイルドナイツは惜しくも準優勝に終わったが、小山はプレーオフ決勝でもトライを挙げるなど存在感を示し、初めて「ベスト15」にも選出された。

 ワイルドナイツは日本代表や世界の代表経験者が数多く在籍し、スタンドオフの松田力也も2023年ワールドカップで活躍した。小山が松田とのコンビでハーフ団を結成し、日本の勝利に貢献するシーンに期待したい。

【3人は超速ラグビーを体現することができるか】

 そして、もうひとりノンキャップで選ばれた藤原は大阪府出身の25歳。今回呼ばれたSHの3人のなかでは最年少だ。中学校から競技を始め、高校は親元を離れて石川・日本航空石川に入学して花園を経験。今回代表に選ばれたセンターのシオサイア・フィフィタ(トヨタヴェルブリッツ)とは高校、そして進学先の天理大学と7年間ずっとチームメイトだ。

 天理大学では1年から試合に出続けて、大学4年時は大学選手権・初優勝の立役者となった。3年連続でジュニアジャパンに選ばれるなど、将来を嘱望されていた逸材である。

 藤原の魅力は、テンポのいい球さばきと、相手の隙を突いたラン。2021年、スピアーズに入団すると、それらの武器を生かしていきなりトップリーグデビューを飾った。

 スピアーズがリーグワン初優勝を成し遂げた昨季は主に控えからの出場だったが、今季は同僚のケガもあってクロスボーダーマッチを含む17試合で9番を背負った。持ち味のランだけでなく、キック、そしてゲームコントロールでも成長の跡を見せて、初の代表入りを果たした。

 5月下旬、菅平での10日間のトレーニングキャンプに参加した藤原はこう語っていた。

「(ジョーンズHCに)日本代表の『超速ラグビー』は日本代表だけしかできない。体現するのは9番だ。9番としての役割をしっかり果たしてくれ、と言われました。システムを理解して、自分に求められていることは何かを考え、そのうえで自分の強みを出したい。超速ラグビーはオプションがたくさんあって、やっていて楽しい!」

 伝統的なスピードラグビーを体現する日本のスクラムハーフは、世界的にも評価の高いポジションである。2027年ワールドカップでトップ4を目指す新生エディージャパンの旅路に向けて、スクラムハーフの3人が切磋琢磨しながら日本ラグビーをさらなる高みへと導いていく。

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