鎌田大地とラツィオに何が起きたのか ガゼッタ紙記者が伝える「破談」の舞台裏

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2024年06月01日 17:00  webスポルティーバ

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 突然のUターン、それとも急旋回とでも言おうか。鎌田大地の代理人たちによる土壇場での要求に、ラツィオの幹部たちは思わず椅子を蹴り、こう言った。

「言っている意味がわかっているのか? こんなことは受け入れられない。もう好きにしたらいい」

 鎌田は契約が満了する6月30日にラツィオを去ることになるだろう。ここ数日、イタリアでは、「鎌田はラツィオに残留したいという鉄の意志を持っている」と報道され続けてきたが、実際にはそれとは真逆の方向に物事は進んだ。ラツィオのプレーとの相性を取り戻し、イゴール・トゥドール監督との関係もこれ以上ないほど良好であったにもかかわらず、鎌田はローマを去ることになった。

 鎌田の代理人であるロベルト佃とマヌエル・フェレールがラツィオの本部フォルメッロを訪れ、鎌田の契約更新について話し合ったのは、つい数日前の話だった。以前から言われていたとおり、3年契約の年俸300万ユーロ(約5億1000万円)、ただイタリアに限らず、契約期間中に移籍する場合には約2000万ユーロ(約34億円)、あるいはそれより多少、少ない金額の解除金が必要という内容で、両者は合意に至っていた。少なくともラツィオはそれですべては決着したと思っていた。

 しかしこの解除金の額が紛争の元となった。サインをする直前になって、鎌田の代理人たちはこの2000万ユーロという金額を、それよりかなり低い額(少なくともラツィオ側はそう感じた)に変更してほしいと言いだしたのだ。そして2日間、ほぼノンストップで交渉が行なわれ、ラツィオはかなり譲歩もしたというが、結局このドラマは関係断絶という形で幕を閉じた。

 鎌田はフリーでラツィオを去り、プレミアリーグに行くことになるだろう。クリスタルパレス。彼らが鎌田と契約を結ぶ日は近い。そこにはオリバー・グラスナーがいる。彼のことをよく知り、中盤のインサイドとしても、ファンタジスタとしても、彼を高く評価した最初の監督だ。ふたりは今年創設120周年を迎えるクラブのホームスタジアム、セルハースト・パークで再会するのだろう。

【トゥドールも今後を思案中】

 鎌田は今シーズン、ラツィオで38試合(チャンピオンズリーグ、コッパ・イタリアを含む)に出場し、2ゴール2アシストを記録している。前監督マウリツィオ・サッリのもとでは控えだったが、トゥドールが来てからスタメンに定着した。

 4月の終わり近くには、鎌田はラツィオ残留についてこのように語っていた。

「やっとチームの力になれるようになって、本当にうれしい。ドイツでもやはりこんなプレーをしていた。だから今はとても居心地がいい。監督が僕を信頼してくれて、僕のプレーをよく見てくれているのを感じている。幸せだ。チームにも慣れて、これからいろいろなことができるはずだ」

 彼の言葉すべてが、ラツィオに残ることを示していた。しかし、彼は最後にプロジェクトを変えたのだ。

 ラツィオのSDアンジェロ・ファビアーニはこの鎌田側のこの対応について、クラブの公式チャンネル『ラツィオ・スタイル・チャンネル』で激しい口調でこう述べている。

「更新の期限は昨日で切れたが、彼らは解約金についての主張を繰り返した。私は誰の脅しも受けない。恐喝には屈しない。だから私は彼らにこう言った。『出口はあそこです。ご不満なら自由に出て行ってください』とね。もし私が、彼らのたび重なる要求を呑んでいたら、結局、ラツィオは100ユーロで彼を他のクラブに渡すことになっていたろう。これは到底受け入れられない条件だ。ラツィオに来る者はラツィオのプロジェクトを尊重し、ラツィオを愛する者でなければならない。代理人も選手もそのことを理解すべきだ」

「恐喝」などという強い言葉を使うのは、かなり立腹している証拠だろう。

 一方、トゥドール監督はどうだろうか。サッリの下で干されていた鎌田をスタメンとして使い、自らの3−4−2−1のカギとなるポジションを与え、ゲームを創造するレジスタの役割を任せた。つまりトゥドールは鎌田を中心としてのチーム作りを考えていた。

 今、彼はそれらをすべて変えなければならない。寝耳に水、いやまさに恩を仇で返された感じだろう。新たなチームをまた一から作り上げるのは困難だ。それもあってか、フォルメッロから伝え聞くかぎりでは、トゥドール自身もラツィオに残るかどうか思案中だという。

"鎌田ショック"がチームに与える影響は大きく、チームの空気は今、かなりピリピリしている。ラツィオは7位でリーグを終え、ヨーロッパリーグの出場権を手に入れた。つい数日前まで、来季に対する期待度はとても高く、トゥドールのもと、ヨーロッパリーグ優勝、チャンピオンズリーグ出場、もしくは数年後のスクデットを目指して、新たなラツィオの時代が本格的に始動すると思われていた。

 しかし、鎌田の件がすべてをひっくり返してしまった。まだ事態のすべてを消化しきれておらず、今日のフォルメッロの天気は晴れない。

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