拝啓・石川雅規様【山本萩子の6−4−3を待ちわびて】第117回

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2024年06月07日 09:20  週プレNEWS

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「石川雅規」について語った山本キャスター

先週の大ニュースといえば、ヤクルト石川雅規投手の今シーズン初勝利でしょう。

プロ野球史上初となる、新人から23年連続勝利という快挙。チームの連敗も(引き分けを挟んで)5で止めた、球界最年長の44歳左腕の勝利はチームに勇気を与えてくれました。

その6月2日の登板では、ストレートの球速は120キロ台が多かったものの、力ではなく技術を駆使したピッチングで5回を完封しました。5回までの雨天コールドでしたが、石川投手にとって9年ぶりの"完封勝利"でした。

年齢とともにパフォーマンスが衰えていくのはアスリートの宿命です。石川投手も、最盛期に140キロ近く出ていた球速は、今では120キロ台がほとんど。そのぶん、相手の打ち気をそぐような変化球で打者を翻弄して、凡打の山を築いていきます。

石川投手を見ていると、プロ野球は本当に面白いスポーツだな、と思うんです。大谷翔平選手のような、見るからに"身体能力の塊"のような選手と、身長167cmと決して恵まれた体格ではない石川投手のような選手が同じように活躍しているからです。

石川投手より球速が速い投手はたくさんいますが、その誰よりも長くプロの一軍で活躍している。大卒にもかかわらず、現役生活23年。それは並大抵のことではありません。

"小さな巨人"、いや、小さくても元気たっぷり、まるで飲み物のヤクルトのような石川投手のすごさはどこにあるのでしょう。私から見た強みのその1は、コントロールのよさです。

ストライクゾーンに投げるだけならできますが、細かくゾーンを分けて、狙ったところに投げ込むのはプロでも至難の業。石川投手はそんなコントロールの正確さを最大の武器にしてきました。

コントロールがいいと、得意な球種だけでなく、他の球種でもコースに投げ分けられるので打者はとても打ちづらいんだとか。石川投手は捕手陣から、「すべての球が勝負球になる」と評価されているそうです。

続いて石川投手の強みその2。それは人間性の素晴らしさです。

ヤクルトOBの館山昌平さんとお仕事でご一緒した際に、石川投手のすごさを聞いたところ、「常に話題の中心にいること」とおっしゃっていました。石川選手の周りには自然と人が集まるんですって。それは、石川投手自身がみんなとコミュニケーションを取ろうとしているからです。

インタビューなどでも、決して自分を大きく見せようとしません。誰に対しても謙虚で、常にフラットに接する。親子くらい歳が離れた若手にも、積極的に話しかけにいくなど気を配る方なんだそうです。

23年前に、ドラフトの自由獲得枠でヤクルト入りした石川投手。「巨人入りが内定していた」という噂もありますが、結果的にヤクルトに入団しました。当時の自由獲得枠は、経済的に余裕のある球団が有利とされていて、予算が厳しいヤクルトは熱意と誠意で石川投手を獲得したとも聞きます。

スカウトさんは当時も、石川投手が精神的に安定していることを評価していたそうです。うなりを上げるような速球や、視界から消えるような変化球はなくても、調子に波がなく、マウンドで落ち着いているからピンチでも動じない。そんな投手はなかなかいないですよね。当時のスカウトさんの慧眼には恐れ入ります。

6月2日の勝利で、通算勝ち星は186勝に。名球界入りの目安となる200勝まであと14勝となりました。近いようで遠い数字ではありますが、私たちヤクルトファンは「いけそう」と思ってしまう。それはやはり、石川投手だから。

体は小さくても努力して、誰よりも長く現役を続ける。もはや"現代版『イソップ童話』"として教科書に載せたいくらいです。そんな偉人、石川投手に少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ次回の投球を見て、その雄姿を眼に焼きつけていただきたいです。

ちなみに石川投手とは、五十嵐亮太さん夫妻とも一緒に3家族でお食事をご一緒させていただいたことがあるのですが、この連載もたまに読んでくださっているということ。今回の記事も届くといいなあ。

次の登板のときは球場に足を運んで、背番号19をつけた大きな背中を応援したいと思います。それでは、また来週。

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

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