中山秀征(56歳)“生ぬるい”と評されて30年「何も考えず遊んでいるだけに見えるなら、ある意味本望」

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2024年06月08日 09:31  日刊SPA!

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 稀代のコラムニストで、鋭いテレビ批評が人気だった故・ナンシー関氏に「なまぬるいバラエティ番組全盛の状況が産んだスター」と評された中山秀征さん(56)。彼女は何度も「私は中山秀征が嫌いである」といい、その理由としてこう分析している。
<テレビを見ている私には全く関係のない「(芸能界内の)しがらみ・関係性・その他諸事情」のみでスムーズに回っているブラウン管の中の和気あいあい。中山秀征はこれらの象徴的存在だと私はとらえている。>(ナンシー関/『聞いて極楽』朝日新聞社、1995)

<バラエティ番組の生ぬるさと、中山秀征の生ぬるさは寸分違わず合致している>(ナンシー関/『テレビ消灯時間』文藝春秋、1997)

 その後30年、“和気あいあい”番組は増殖の一途をたどり、中山の「生ぬる」力は引っ張りだこ。時代に乗ったのは偶然なのか必然なのか――自著『いばらない生き方 テレビタレントの仕事術』(新潮社)を発売した“ヒデちゃん”に立ち位置で意識していることを聞くと、 “生ぬるく”見える裏には緻密な戦略があった。

◆30年前、“生ぬるい”と評された

――ナンシー関さんから、「生ぬるい」バラエティの象徴的存在だと評されました。「生ぬるい」とはどういうことだと思いますか?

中山秀征(以下、中山):90年代、“生ぬるくない”のがダウンタウンで、“生ぬるい”のは僕が代表。ダウンタウンは番組を「作って」いる。一方で中山は、テレビの中で「遊んで」いるだけだと。

 象徴的な番組が『DAISUKI!』(日本テレビ系、1991年〜2000年)です。飯島直子ちゃんと松本明子さんとで、いろんなところに出かけたり、何かを体験したりする様子を映す番組で、深夜ながら視聴率15%を取るほど(の人気)だったんだけど、それまで大人たちのテレビ番組の常識といえば「作り込まれた」もの。“遊んでいるだけ”でテレビ番組を作るなんていうのは、ありえない考え方だったんです。

 本当は「遊んで」いるだけで番組は出来上がらないんだよ。寝ないで会議をして、企画を考えて、1時間の番組に6、7時間撮影していて。……でも、「何も考えずに遊んでいるだけ」に見えるなら、それはある意味本望でもあって。

 遊んでいるだけ、街歩きをしているだけ…… “だけ”を見せるテレビ番組というのは、彼女からすれば「生ぬるい」ということだったんでしょうね。

◆「中山秀征的才能」とは?

――ナンシー関さんは最終的にその“生ぬるさ”のなかで活躍する中山さんを「中山秀征的才能」と結論づけました。「中山秀征的才能」とは何だと思いますか?

中山:周囲の変化を受け入れつつ 、スタンスや立ち位置は変えないということかな。

◆僕はロープワークスタイル

――スタンスとは?

中山:僕はプロレスでいうロープワークスタイルなんだよね。自分からロープに向かって走っていって、当たって、そのバウンドを利用して戻ってきて、受け身を取る。

 その時「受け身の美学」があってね。時間をどう使って、どう強さや面白さを見せるか。そして終わった時に、どういう印象を残せるかということを常に考えてやってきたと思う。それは40年ブレていない。

◆テレビ界にいる「近所のお兄ちゃん」

――そういえば中山さんは肩書を「タレント」ではなく「テレビタレント」と名乗りますね。

中山:僕の解釈でテレビタレントは、テレビ出演をメインの商いとするタレント。

 テレビでは、僕は本当に共演する女の人に育てられたと思う。(兵藤)ゆき姐、山田邦子さん、飯島直子さん、松本明子さん、麻木久仁子さん、飯島愛さん……。しかも、世代関係なく全員「ヒデちゃん」って呼ぶんですよね。『THE夜もヒッパレ』のレギュラーだった安室(奈美恵)さんも最初から「ヒデちゃん」。なんか“近所のお兄ちゃん”ぐらいの感覚なんだよね、みんな。

――“近所のお兄さん”のようなお茶の間的な親しみやすさと安心感が、中山さんがテレビで求められる秘訣かなと思います。とはいえ、今テレビ離れが叫ばれるのも事実。テレビタレントに求められるものは?

中山:テレビを商いとしている人間が、「テレビがつまんない」って言っちゃってるからダメなんだよね。だってスキルだってポテンシャルだって、昔より今のほうがよっぽどいいんだよ。

「今はコンプライアンスが〜」って、何のこと言ってんの? 何のテレビと比べてんの? っていう話だよね。裸で走り回るようなことができないのはそもそも当たり前だろって。そうじゃなくて面白いことできるでしょ、できることを考えようよっていうことだよね。テレビの役割は絶対にある。だから僕は諦めない。考えることも、挑戦も。

◆どんな食材でも必ずおいしくして返します

――諦めたら終了ですもんね。では仕事をするうえで大切にしていることは何ですか?

中山:その時の全力で、絶対に手を抜かないこと。「このぐらいでいいだろう」はない。

 テレビに映っているところはもちろん、映っていないところでもそれは同じです。だって収録って、映っていない時間のほうが長いんだよ。だから、たとえばロケバスの中でもゲストには気持ちよく過ごしてほしい。一日楽しめたな、またあの番組出たいなって思って帰ってほしい。

 結局僕のスタンスは、その人がよく映ればいいというだけなんだよね。安心してください、どんな食材でも必ずおいしくして返します、僕はそういう料理人ですと(笑)。もうあの店入りたくないとは思われないようにしたい、という心がけはしてますね、ずっと。それがモットーといえばモットーかもしれません。

<取材・文/吉河未布 撮影/山川修一>

【中山 秀征(なかやま ひでゆき)】
テレビタレント。1967年群馬県生まれ。フジテレビ「ライオンのいただきます」で「ABブラザーズ」としてデビュー。コンビ解消後1992年より『DAISUKI!』(日本テレビ系)の2代目MCとなる。以後『ウチくる!?』(フジテレビ系)や『おもいっきりDON!』『シューイチ』(共に日本テレビ系)など、多くの番組のMCを務めるほか、俳優、ラジオパーソナリティなど多方面で活躍中。私生活では元宝塚の白城あやかとの間に4人の子どもを持つパパとしても知られる

【吉河未布】
大阪府出身。大学卒業後、会社員を経てライターに。エンタメ系での著名人インタビューをメインに、企業/人物の取材記事も執筆。トレンドや話題の“裏側”が気になる。『withnews』で“ネットのよこみち”執筆中。Twitter:@Yoshikawa_Miho_
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