2024年は特例なし。ル・マン24時間でタイヤウォーマー禁止も、ハイパーカードライバーはリスクを軽視

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2024年06月08日 15:00  AUTOSPORT web

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キャデラック・レーシングの2号車キャデラックVシリーズ.R
 WEC世界耐久選手権のトップカテゴリーでハイパーカーをドライブする、ポルシェとキャデラック、さらにプジョーのドライバーたちは、今季2024年のル・マン24時間レースでタイヤウォーマーが禁止されたことがアウトラップをチャレンジングにするものの、安全上の大きなリスクにはならないと考えている。

 WECでは昨シーズンよりタイヤウォーマーの使用が禁止されているが、2023年のル・マンでは“前哨戦”のスパ・フランコルシャン6時間レースでタイヤが冷えてる状態で複数のマシンがコースオフを喫したことを受けてこのルールに批判が集まったため“一回限り”の例外措置が取られた。

 しかし、今年はこの特例を認めないことが早々に決定された。WECのスポーティングレギュレーション6.5.5には「タイヤの温度(周囲温度と比較して)を変更する直接的または間接的な試みを伴うプロセスを禁止する」と記されている。

 キャデラック・レーシングでアール・バンバー、アレックス・パロウとともに2号車キャデラックVシリーズ.Rをドライブするアレックス・リンは、この変更がもたらす結果は「誰にとっても同じ」だと考えているが、ルール変更にうまく対応できるメーカーもあると指摘する。

「究極的には、コールドタイヤでの走りが非常に優れているクルマが存在する」とリン。

「それは間違いなく多くの人にとってメリットになると思う」

 このイギリス人ドライバーは、トヨタ、フェラーリ、プジョーのようなル・マン・ハイパーカー(LMH)メーカーが、それぞれのクルマの全輪駆動レイアウトのおかげで有利になる可能性があると考えている。

「どちらかというと(トラクション側よりも)ブレーキ能力のほうが優れている」とリンは語った。

「彼らは事実上、四輪の制動能力を持つことができる。ある意味、MGUを使えばフロントモーターでいろいろなトリックを行うことができるんだ」

 彼は続けてLMDhメーカーの中でポルシェを優位に立てる可能性のあるメーカーのひとつに挙げ、ドイツのブランドがコールドタイヤに「非常に強い」ことを指摘した。

 これに対してポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの5号車ポルシェ963を駆るミカエル・クリステンセンは、リンのコメントを一蹴し「彼が何を根拠にそんなことを言うのかわからない」と述べた。

「もちろん、僕たちはどんな状況にも対応できるできるように取り組んでいるが、ウォームアップを検討する以前に、まずは完璧なパフォーマンスを出したいと考えている」

「物事がうまくいくこともある。(冷えたタイヤで強く見えたとしたら)そういうことのひとつだと思う」

■要注意ポイントはストレート前のテルトル・ルージュ

 クリステンセンは、タイヤの発熱不足がドライバーのミスのリスクを高める可能性があるとしながらも、それが大きな危険を伴うとは考えていない。

「ミュルサンヌ・ストレートの最初のシケインを抜ければ、大丈夫だと思う」と彼はSportscar365に語った。

「ピットを出てからその地点まではストレートでもタイヤにかなり熱が入るし、グリップの感触をつかみ始めるから、ある程度のことは予想できると思う」

「でも、とくに僕たちのマシンは冷えたタイヤがあまり好きではないと思う。そこではミスをするリスクがある。他の人がミスをして、それに巻き込まれるリスクだってあるんだ」

「(ル・マンでは)何度もスティントをこなさなければならない。まったく新しいタイヤでフラットスポットを作ってしまうリスクもある。これは大きな問題になるかもしれない」

「(タイヤが冷えた状態のドライブは)ミスを犯す可能性が大きくなるだけだ。危険だとか、そういうことではないと思う。ただ難しくなるだけ。大丈夫だと思うよ。レース中に問題に直面する人もいるかもしれないけどね」

 クリステンセンと同じデンマーク出身のミケル・イェンセンも、ポルシェのファクトリードライバーと同様に、アウトラップのオープニングセクターがドライバーにとって最大の難関になると考えているが、ソフトコンパウンド・タイヤが使用可能になることでドライバーは楽になると付け加えた。

 ジャン-エリック・ベルニュ、ニコ・ミューラーとともにプジョー・トタルエナジーズが走らせる93号車プジョー9X8のコクピットをシェアするイェンセンは、「ピットレーンを出て、S字からストレートに入るとき(テルトル・ルージュ)が一番難しいと思う」と語った。

「ストレートに出れば、スピードとともにタイヤの温度も上がってくる。どの程度難しいかを言うのはとても難しい。コールドタイヤを履いているのは僕だけじゃない。それが現実だ」

「ル・マンがタフなレースであることは間違いない。そのなかで夜間にソフトタイヤが使えるのは助かる」

「実際には昼間のミディアムのほうが難しいだろう。ソフトタイヤのほうが温まりやすいからね。もちろん、気温やトラックの温度に左右されるのは明らかだ。でもそれは誰にとっても同じ。ハードな道だよ」

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