「子供に野球をやらせたくない」親のホンネ。少年野球にはびこる“オレ流指導”の問題点とは

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2024年06月09日 09:21  日刊SPA!

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 ここ数年、野球人気は高まっているが、野球人口は減少傾向にある。このもどかしい状況は2048年には衝撃の事態を迎えるという。3月11日付けの日本経済新聞「1億人の未来図」では、スポーツ庁が公表した統計調査と人口の推移から、2048年には高校の硬式野球部員は今よりも7割減るという衝撃のデータを掲載した。
◆野球を“始めること”の抵抗感

 野球は好きであっても、野球を“始めること”に抵抗感を覚える子供や親は予想以上に多い。筆者のパパ友のFさんは元高校球児で、時間があれば小学校6年生の息子とキャッチボールを楽しむのだが、親子揃って地元の少年野球チームには入らないという決断をした。

「いくつかのチームにも練習参加しましたが、息子も交えて家族で話し合い、野球チームに入るのはやめました。一番大きな理由は週末だけでなく祝日も含めて休みがほぼなくなってしまうことでした。妻とも話したんですが、私は子供にはいろんな選択肢というか経験をしてもらいたいんです。一緒にキャンプに行ったり、水族館に行ったり、野球だけでなくサッカーをしてみたり、観戦したり……。それがほとんどできなくなるのは正直、親としてもストレスだなと」

 最近では、練習の参加は自由、親の手伝いも強制はしないというチームも増えているというが……。

「それは建前で、試合や大会が近くなったら練習は休めないですよ。お茶当番も強制はないって言いますけど、やっぱり一部の親御さんたちがせっせと準備を手伝っているのを見たら、素通りはできませんからね」

◆今もなお続く「根性野球論」

 今回取材でいろいろな親御さんに話を聞いたのだが、休みが潰れるという声は想像以上に多く、筆者のパパ友のように指導者に対して疑念を抱く人も少なくなかった。小学3年生から地元の野球チームに息子を入会させたAさんは当時を振り返る。

「未だに根性論みたいなのがまかり通ってるチームはありますし、そういうコーチもいますよ。息子が入ってたチームもそういう雰囲気があって、捕球やバッティングの教え方とかすごく雑だった(笑)。ひたすら素振りして、ひたすらノックすればいいみたいな。サッカースクールの体験入会に行ったこともあるんですけど、教え方の違いに愕然としたことを覚えてますね。たしかにひたすらノック受けて素振りしたら上手くなるかもしれませんが、もっと理論的に教えてくれる人がコーチにいないと、親としてはちょっと不安ですね」

 Aさんの息子さんは結局、5年生の秋、中学受験を機に野球を辞め、現在はもっぱら観戦する派だとか。

◆理想は野球チームではなく野球スクール

 こうした状況を踏まえて、先述のFさんは少年野球の理想型について話してくれた。

「週末に練習を集約するんじゃなくて、平日の夕方、習い事みたいにやるのがいいと思うんですよ。それだと休みの日もある程度は確保できますしね。スポーツジムとかが運営するスクールだと、スクールがちゃんとお世話もしてくれるし、お金で雇われたちゃんとしたコーチに教わることができるじゃないですか。少年野球って、未だに近所の野球好きオヤジが独自理論で教えてたりしますからね。もう、そういう時代じゃないと思うんです」

 実際、野球の技術を教える野球塾、野球スクールも近年では増えているという。だが、こうした存在を快く思わない野球チーム関係者もいるようだ。スポーツ紙記者に話を聞いた。

「野球の技術を教えるスクールは近年増えており、元プロ野球選手が指導者として打撃理論や守備を教えることを売りにするところもあります。こうしたスクールはチームではなく、どちらかというと個別指導の塾みたいなものです。しかし、少年野球チームの指導者のなかには『オレが育ててるんだから、余計なことするな』という考えの人は少なくないようでして……。

ある元プロ野球選手の方がこうしたスクールを開いたところ、最初は子供たちが集まったのですが、地元にあるいくつかの少年野球チームからは『あのスクールに行くならチームを辞めてもらう』という通達が出たそうなんです。これにはさすがに元選手も頭を抱えていましたね。別に引き抜いてチームを作ろうとしたワケでもないですし、完全に逆恨みですよ」

 それにより、この元選手は野球スクールを廃業することとなったという。

◆少年野球の改革は急務だが…

 働き方改革が推進されているように、スポーツの世界も指導者や練習方法を含めて常にアップデートしていく必要はあるだろう。旧態依然のままなら、そっぽを向かれることは火を見るよりも明らかだ。

 だが、改革をしようにも新しい理論や方法を持ち込む人がいなくてはどうにもならないし、それを受け入れる土壌がなければ一向に改革は進まないだろう。

 野球人口が減ることは日本の野球のレベルが沈下していくことにもつながる。今こそプロ、アマ、少年といった垣根を越えた議論をするときなのかもしれない。

取材・文/谷本ススム

【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター

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  • 落合氏も語っていたが、「俺等の子供の頃は、野球しかする事が無いので、遊びの中で野球に必要な動きを自然と憶えていった。今は、遊びも色々あるからな」みたいな事。
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