役割集中に「結構キツい」とトヨタ小林可夢偉。「絶望的ではない」と平川亮。ポルシェへの対抗策は?/ル・マン24時間

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2024年06月12日 06:40  AUTOSPORT web

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トヨタGAZOO Racing WECチーム代表兼7号車ドライバーの小林可夢偉
「間違いなく、甘くはないル・マン24時間になる。来る前からそれは予想していましたし、走っていても想定内の感じかなと思います」

 テストデーを終えての感触を、トヨタGAZOO Racingチーム代表兼7号車GR010ハイブリッドのドライバーである小林可夢偉は、そう語った。

 今季のWEC世界耐久選手権では、第1戦カタール、第3戦スパ・フランコルシャンをポルシェ963が制した。迎えた6月9日の第4戦ル・マン24時間テストデーでも、ワークスのポルシェ・ペンスキー・モータースポーツがワン・ツー・フォーを占めるなか、トヨタは8号車が3番手に食い込んだ。

 可夢偉の7号車は総合9番手。しかし、テストデーでは“戦える手応え”もつかんでいたようだ。

 11日、可夢偉は次のようにテストデーを振り返り、翌日に始まるレースウイークの走行を展望した。

「周りは燃料をどれだけ積んでいるか分かりませんし、タイヤも1セットを使い続けているチームもあるし、ニュータイヤを入れているチームもあるし、(勢力図は)見えてはいませんが、僕らはすごく悪くはないと思っているし、うまくピースを合わせれば戦えるんじゃないかという予想はしているものの、間違いなくポルシェは速く見える、というのが現状です。明日からですかね、本当に見えてくるのは」

 今回のル・マンからは、250km/hを超えた際に出力を調整する“2段階”BoP(性能調整)が導入されているが、可夢偉は「昨年はフェラーリのトップスピードが速く、それをACO(フランス西部自動車クラブ)が修正してくれたのでは。トップスピードをそろえ、直線でのバトルをしやすいようにしてくれたのではないかと思います」とポジティブに捉えている。

 現段階では、週末の決勝に向けては雨絡みの予報となっていることから、「雨になってもちゃんと機能するような目線でクルマを作っていこうと考えている段階」と説明する。

 なお、マイク・コンウェイの代役としてテストデーで急遽走行を開始したホセ・マリア・ロペスに関しては、「6カ月乗ってないような感じでがなかったですね。まぁ、6カ月なら忘れないものですよ」と可夢偉。

 7号車はこれまでほとんどのレースでコンウェイがスタートを担当してきたが、今回のル・マンでのスタートドライバーは「おそらく、僕かな」と可夢偉は言う。

「予選もおそらく僕、(決勝の)最後も僕の可能性があります。……今週、結構キッツいなぁと(苦笑)。別に予選アタックは僕がやらなくてもいいのですが、ニック(・デ・フリース)が『オレ、もうちょっと時間がいるわ』と言うので……」

 12日に行われる予選では、23台がエントリーするハイパーカークラスで上位8台に入らなければ、最終予選『ハイパーポール』には進出できない。

「それもシビれると思います。(予選では)トラフィックもあるし、正直運も左右すると思うのですが、それも含めての結果だと思うので、チームと出すタイミングであったりとか、そういう部分も含めてやり切れるようにしたいなと思っています」

■ハイパーカー3年目の平川に生まれた“余裕”

 一方、ブレンドン・ハートレーがテストデーで3番手タイムを記録した8号車の平川亮も、戦前の見通しよりはポジティブな見方を示している。

 テストデーの状況について平川は、「クルマの最適化でいいところを見つけるために、チームとしては結構いろいろなことを試して、いいところもうまくいかなかったところもありますが、僕らのなかでは順調に進んではいます」と説明する。

「全体的に見て、感想としては『ポルシェが速そう』というのはありますね。ショートランでも、ロングランでもいいタイムが出ていますし、ポルシェのどのクルマを見ても速いし、中速コーナーが一番速い。もちろん、僕らの方が劣る部分は多いですが、チーム力や個々の力でカバーして、前に行けるかなという感じではあるので、絶望的ではないですね」

 昨年から比べてマシンの面で大幅なアップデートのないなか、セットアップの最適化がカギを握るが、そのポイントについて平川は「やっぱり信頼性が一番大事です。結構縁石を使わなければいけないコーナーが多いので、セットアップ含めて攻めても壊れないようにししつつ、高速コーナーも速く走らなければいけないので、そこのバランスをうまくとれるようにしなければいけませんね」と説明する。

 LMP2での2回のル・マン参戦経験を経て、2022年からトヨタGR010ハイブリッドで最高峰クラスに参戦している平川は、「ル・マンって、やればやるほどいろいろなことが見えて、コースに慣れて、雰囲気に慣れて、どんどんうまくなる印象があるのですが、そのなかでも難しさがあります」とサルト・サーキットの特徴について語る。

「去年より走り出しから速くは走れますけど、そのなかで見えてくる景色は違います。このチームでの1年目のときはもう、右も左も分からないなかでガムシャラに走っていましたが、2年、3年とやることでいろいろなことが見えてきて、コースと仲良くなっている感じはします」

 テストデーからうまく走れていることは、レースウイークを前にして、心の余裕にもつながっているようだ。

「とくに一昨年のテストデーはあまりうまく走れなくて、FP1までモヤモヤする感じもあったのですが、今回のテストデーはよく走れたので、月曜・火曜は落ち着いていられます。ただ、(今年は)ライバルも多いですし、土日の天候が崩れそうなので、そこが一番の不安要素ではありますね」

 平川といえば、昨年は首位を追っていたレース終盤にクラッシュ。リベンジを期して臨む大会にもなる。

「もちろん自分のミスではあるのですが、昨年あそこで何が起きたかはちゃんと分析し、しっかり把握しているので、“トラウマ感”はありません。しかも、今年は幸いなことにミュルサンヌからポルシェコーナーの入口までが(再)舗装されてフラットになっているので、ものすごい走りやすかったですね。インディアナポリスに入るところも平らになっていて、ものすごくグリップします」

 ポルシェが速いであろうことはパドックの共通認識となりつつあるが、フェラーリやキャデラックについても、まだまだポテンシャルはあると見る向きは多い。12日14時からのフリープラクティス1、そして続いて行われる“トップ8”を争う予選のセッションで、まずは勢力図の一部が露わとなりそうだ。

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