二度のテストを重ね進化を続けるも「時間が必要」。今季デビューのGAINER TANAX Zの“現在地”

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2024年07月17日 11:50  AUTOSPORT web

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2024 GTEスポーツランドSUGOテスト GAINER TANAX Z
 2024年のスーパーGT GT300クラスで、大きな注目を浴びている一台が、長年タイトル争いを展開してきたGAINERが開発し投入したGAINER TANAX Z。ニッサン・フェアレディZのモノコックを使いVR38DETTエンジンを積むGTA-GT300規定車両だが、まだ完走を果たせていない。7月14〜15日にスポーツランドSUGOで行われていたGTエントラント協会主催のGT300テストでは、2日間に渡るテストメニューをこなし、さらなる熟成を進めたが、実戦デビューから2ヶ月ほどが経ったGAINER TANAX Zの“現在地”を聞いた。

 今季、富田竜一郎と石川京侍がドライブするGAINER TANAX Zは、フェアレディZのボディを使いGTA-GT300規定に基づいて作られたワンオフのレーシングカー。ただ、たび重なる仕様変更により4月の第1戦岡山には車両製作が間に合わず、第2戦富士を前にシェイクダウンを実施。第2戦富士、第3戦鈴鹿ともQ2アッパーグループ進出を果たすスピードをみせたが、第2戦、第3戦とも完走には至っていない。

 そんなGAINER TANAX Zは、第2戦富士の後に鈴鹿で行われたGTEテスト、そして今回SUGOで行われたテストで走り込みを積み、今回のSUGOでは2日目午前で初めて本格的なウエットでの走行も果たした。これまでの2戦、そして2回のGT300テストを経て、これまでレースを中心にドライブしてきた富田は「乗っているフィーリングはぜんぜん違います。『ここがもっと良くなれば』というところが良くなっていますし、セットアップもできるようになってきました。クルマとしても振り回せるようになっています」と、レースやテストを経たこれまでの進化を語った。

 ただ開発を担う福田洋介エンジニアによれば、これまでさまざまな箇所で改良が進められてきているものの、いずれもトラブルを解消するためのパーツで、スピードの向上に向けて「詰めるまで至っていない」のだという。

「基本的に、レースウイークにセットアップの時間がとれないので、こういうテストで本来いろんなことをやりたかったのですが、新造車でタイヤのメニューをこなさなければいけないことや雨もあって、セットアップを進められてないのが現状です。触れるところはあるものの、優先順位をどう絞ろうか、というところですね」

 今回のテストではウエットでの走行に加え「タイヤのメニューもこなし、京侍も初めてロングランができました」と多くのメニューをこなした。第2戦、第3戦とも石川がドライブする前にレースを終えていたことで、ロングランができていなかったのだ。

「ようやくふたりのコメントをちゃんと聞けたので、ここから『どうしましょう』という段階です。でも次はレースなので、『机上の空論』でエイヤでいくしかないです。第2戦富士と第3戦鈴鹿の予選はたまたまパフォーマンスが出ただけで、想定した段階には至っていないです。動的な部分や空力バランスなど、マッチングは実車でやっていかないといけないですから」

 福田エンジニアが語るこの状況については、富田も同意する。「タイヤをいかにこのクルマに合わせるかというところもありますし、エアロバランスがあまり詰め切れていなくて、GT-Rと比べるとアンダーステアが少し強いです。そのあたりをどう改善していくか。クルマに合わせたセットアップのやり方をいままだ探っている最中で、何をしたらどうなるか分かってくるようになるまで、もう少し時間が必要だと思います」という。

「そこが見つかれば実績もノウハウもあるので、良くなっていくと思います。思っているよりも戦えていますが、思っているよりも時間がない、というのが現在の状況です。他はもう何年も使っているクルマで戦っていますが、このフェアレディZはいろいろ初めての部分が多いですから」

「まだ机上の計算と実際のすり合わせもしている最中なので、そこが決まればもう少しいけるかな、と思っています。そこを目指しているけど、時間がないです(苦笑)。これがタイヤワンメイクならセットアップをやったり、エアロバランスも進められると思いますけど、タイヤも開発しなければいけませんからね」

 本来であれば、もっと時間をかけ作りテストを重ね、タイヤとのマッチングを進めながらシーズンに臨みたかったところだが、レースを重ねながら開発も続けなければならないのがGAINER TANAX Zの現在地だ。しかも今回のテストでは、「ちょっと暑いです。僕が人生で乗ったなかでいちばん暑いかもしれません(富田)」と室内のクーリングの問題も浮上してきた。これから夏場のレースだけに、解決は急務。確実に進化を遂げてはいるものの、優勝争いをするポテンシャルに至るには富田の言うとおり「時間が必要」ということだろう。

 福田エンジニアに、まずは第4戦富士に向けた目標を聞くと「完走したいですよね」と語った。

「オーナーからは『もう勝ってくれないと困るで』と言われていますが(苦笑)。やりたいこともいろいろあって、まずは空力をやり直したいですし、クーリングもやらないといけないですし……」

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