ヤマハが失ったハンドリング。次のエンジンに期待されるものは/第10戦イギリスGP

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2024年08月07日 17:00  AUTOSPORT web

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ロードレース世界選手権75周年を記念したビンテージカラーで挑んだ決勝レース
 2024年シーズン後半戦の幕開けは、ヤマハにとって厳しいものとなった。ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGPチーム)は予選で18番手、土曜日のスプリントレースは11位、日曜日の決勝レースも11位だった。

 MotoGP第10戦イギリスGPの木曜日、クアルタラロはイギリスGPに持ち込まれた「新しいもの」について「バイクのハンドリングの改善」を期待している、と語っていた。ハンドリング、といえば、以前はヤマハの強みとして知られていた部分である。しかし、今はそうではない、とクアルタラロは述べている。

「僕たちは少しハンドリングに戻らなければならない。今はエンジンが速くなった。ただ、旋回しないし、止まらない。苦しんでいる部分がたくさんあるんだ」

 以前からヤマハの改善点はトップスピードだと言われ、クアルタラロもエンジンパワーの向上を求めていた。クアルタラロのコメントによると、今は向上したエンジンパワーによって、これまでの強みであったハンドリングが損なわれた、ということになる。そして、ヤマハは再び、ハンドリングを強みとするところに回帰しようとしているということだ。

 とはいえ、今回持ち込まれた「新しいアイテム」は、少なくともシルバーストンでは大きな改善を果たさなかった。金曜日を終えたクアルタラロは、「本当に遠い。このレースに持ち込んだ改善に大きな期待を寄せていたんだ。でも、残念ながら、期待したようなものではなかった」と肩を落としていた。

バイクがピットインするたびに変わる

 クアルタラロが苦戦した理由は、バイクのパフォーマンス以外にもあった。走行のたびに、ピットインのたびに様々なもの、ことを試した。試し過ぎた。このため、通常はレースに向けてマシンのセッティングを詰めていくものだが、クアルタラロはセッションを重ねても、そうした蓄積ができない状況にあった。

「スプリント前はいろいろなことを試し過ぎていた。1台のバイクからもう1台のバイクへ。あるバイクはその方向で走らせ、また別のバイクは別の方向で走らせる。すっかり混乱してしまったよ。僕たちはすでに、いつも以上にひどく苦戦しているけど、僕は本当にわけがわからなくなってしまった。何の基準もなく予選に挑むことになったんだ」と、クアルタラロは土曜日後の囲み取材で語った。

「スプリントでは、ほどほどに知っているベースが欲しいと言ったよ。というわけで、スプリントはすごくというわけじゃないけど、だいぶよくなった」

 クアルタラロは「少なくとも2日間連続で同じバイクを走らせない、という状況が長く続いているんだ」と言う。改善を目指して持ち込まれた新しいアイテムを試すため、レースウイークはまるでテストのようになっていた。変更が繰り返されれば、ライダーは走行のたびに探りながらの走り出しとなる。改善に向けたトライとはいえ、ライダーにとっては確かに難しい状況でもあるだろう。

「最近のレースでは、僕は“(フル参戦)ライダー”というよりも“テストライダー”という感じだった。だから、今は、できるだけ速く走ることに、もう少し集中したいと思っているんだ」

「(難しいのは)1回の走行の度にバイクが違いすぎるってことなんだ。4周走ってはバイクが変わったし、タイムアタックでも……。バイクがどうなっているのか、本当に複雑なんだ。基本的に、昨年のバイクと2年前は同じだった。シーズン終盤、僕たちはこのバイクがあまりよくないとわかっていたけど、ベースを維持していたし、極限の限界までバイクをもっていけた。今は、バイクの限界が全くわからないから、それができないんだ」

待たれる“もうひとつのエンジン”

 クアルタラロが語っていた現状を鑑みると、コンセッションの活用は確かに開発にとってメリットはあるかもしれないが、同時に、ライダーの負担は大きいことが窺える。では、現在のヤマハの改善はどのような状況なのか。

 イギリスGPでクアルタラロが希望を寄せていたのは、今後のエンジンだった。ヤマハはイタリアGP後にバレンシアでプライベートテストを実施し、オランダGPで新しいエンジンが投入されているが、クアルタラロはさらに新しいエンジンを待っているという。そして、そのエンジンによって、スピードを犠牲にしても本来の強みであったハンドリングを取り戻すことを期待している。

「2021年、2022年型マシンのようなハンドリングを見出している。僕たちが今、苦しんでいるのは自然にバイクに乗ることなんだ。ただ、そのエンジンはいいものだけど、今度は少しスピードを失うかもしれない」

「それがうまく機能するかもしれない。今、準備しているところなんだ。できるだけ早くほしいと頼んでいる。日本はまだ、とても遠い。だから、プッシュしたいし、今後の方向性をもう少し知りたいんだ」

 このエンジンが、ヤマハの光となるのか。投入が待たれる。

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